悶々としてる間に、あっという間に1週間は過ぎて行った。
ラナはいっそのこと何か言い訳でも使って検査を逃れようかと思ったが、適当な言い訳は思い浮かばなかった。
そうして検査の日を迎えたのだ。
S病院の前で初音がラナを待っていた。
「今井さん、さぁ、さっそく診察してもらいましょうか」
「あの・・やっぱり見逃してもらえませんか・・?」
「ダメよ。ここまで来て何を今さら・・。業務命令。この言葉の意味、貴女ならわかるわよね?」
業務命令という言葉を持ち出されたらラナには逃げる術はなかった。
しぶしぶラナは初音とともに病院の内科診察室へと向かった。
病院ってどうしてこんなに待ち時間が長いんだろう。
この待ち時間ってもっと有効に使えないかしら?
ああ、いやだいやだ。
こんなことをずっと考えていたが、ようやく診察室から「今井さん、今井ラナさん、どうぞ」
という声がしたのでラナは診察室に入った。
医師は尋ねた。
「・・で、どうされました?」
ラナが適当にごまかした症状を言おうとした時、後ろにいた初音が口をはさんだ。
「お医者さん、私、この人の上司なんですが、彼女、ここ3カ月ほどで急に痩せたんです。
食事もあまり量をとっていないようですし・・そこで何かないか心配になってお伺いしたんですの」
「・・なるほど、で、今井さん、なにか痛いとか思い当たる症状はありますか?」
「べ、別にないですよ。ホホホ・・」
初音が口をはさむ。
「今井さん、見苦しいですわよ。お医者さんには正直にお話しなさい。」
「正直に・・って・・何をですか?」
初音はふぅとため息をついて言った。
「貴女は多分気が付いていないと思うけど貴女は嘘をつくとき、口元がすこし引きつったような感じ
になるの。それで一目瞭然なの。もういい加減諦めてお医者さんに全てをお話しなさい」
知らなかった。自分は嘘をつくのは上手だと思っていたのだが、そんな顔に出るほどの特徴があったなんて・・
ラナはうなだれた。
少しの沈黙の後、ラナは口を開いた。
「お腹が、痛いんです・・」
「お腹?どのあたりですか?」
ラナはヘソの上あたりを指差して「多分胃のあたりだと思うんですが・・」
「どんな感じの痛みですか?」
「じわじわと染み入るような・・ずきずき痛んで食欲もないんです・・胃薬飲んでるんですけど、効きません・・」
医師は少し考えて「胃カメラをやりましょう。朝、なにか食べましたか?」
「いえ、薬を飲んだだけです・・」
「なら結構。おーい、胃カメラ用意して」
とそばの看護師に指示を出した。
初音はそのやり取りをじっと見ていた。これから起こるすべてを見逃すまいというくらいの眼光で・・