「今井ラナの代理人」。
手紙の差出人を見た瑠奈はふぅとため息をついた。
全く、あの方はどうして、こうまでわたくしの邪魔をするのかしら・・
もちろん、本物の今井ラナは死んでこの世にはいない。
しかし今井ラナの周辺人物の誰かが自分に今井ラナの名をかたって手紙を寄こしたのだ。
奇しくも和彦と瑠奈が実際に会う前、手紙でしかやり取りが許されていなかったのをこの代理人さんは
知る由もないことだが、それを逆用されたようでなんだか不思議な気分だった。
無視することも考えたが、多分この「今井ラナ」関係は完全に封殺しておかないと和彦がまた余計な気を
起こしかねない。現に和彦の心は自分から遠ざかっている。
完全にわたくしたちの障害は取り除かなくてはならない。
手紙は市内のはずれにある小高い丘に建つ神社を指定していた。
黒服同伴も考えたが、この手合いは多分そうだと姿を現さないだろう。
そして手紙攻撃、いやもっとそれ以上の攻撃を続けるに違いない。
偏執的な匂いを直感的に感じた瑠奈は一人で「今井ラナの代理人」と、対峙することにした。
「お嬢様、どちらへ?」
黒服が尋ねた。
「ちょっと外の空気が吸いたいんですの。貴方方はついてこなくて結構ですよ。街中を歩くのに
こんなのがぞろぞろされたら市民の方々に迷惑でしょう?」
瑠奈がほほ笑んで言う。
「しかしそれでも一人や二人は護衛を・・」
「結構!」
瑠奈の強い口調に黒服軍団は固まってしまった。
そうして瑠奈は出かけた。
「今井ラナ」と決着をつけるために・・