姶良はラナの隣町に住んでいたが、中々会う機会はなかった。
そういえば同じ町内に住んでる同級生でも社会人になったら全く会わないという話を人づてに聞いた姶良は
ラナに会うのは難しいと思っていた。
いっそ富士出版の近くに引っ越そうかしら?
いや、わざとらしい・・
そうして年月が過ぎ、丁度今から半年ほど前街を歩いていると見覚えのある背中を見つけた。
思わず声をかけた。
「今井・・今井ラナ・・先輩?」
そう声をかけた人物が振り返った。
ああ、まさにこの瞬間のために・・
姶良は感動した。
しかし、姶良はすぐに気がついた。
ラナの隣にいる女性に。
「こちらは・・?」
姶良が尋ねる。
そうして姶良はラナの隣にいる女性が姶良の贔屓にしているファンタジー作家「葉山晴香」であることを知った。
そしてラナが晴香、すなわち城野内智代の編集者である立場であると聞いた。
「まさか・・デート?」
お茶らけて聞いたが半分は真剣だった。
もちろん、ラナにその気があるとは思わなかったが聞かずには居られなかった。
ラナが笑って言った。
「こらっ、私たちは女性同士じゃないか」
喫茶店で色々と話した。ラナは姶良の身の上を聞いて真剣に心配してる様子だった。
もっと話したかったがラナは晴香との約束でディナーに出かけると言って二人で店を出て行った。
久々に会って話したラナは昔と変わっていなかった。
私を気にかけてくれる心細やかなラナ先輩・・
そうして、ラナと会った道をなるべく通るようにしたがその日以来ラナとは出会わなかった。
・・・冗談でしょ?
折角また会えたと思ったらラナ先輩、今度は死んだですって・・?
もう誰もこの世に味方は居なくなった、そんな絶望感を姶良は味わった・・