姶良は東都大学を卒業後、小さな会社の事務員として就職した。
最初はうまく立ち回れていた。
以前のような突拍子な言動も同僚にはギャグとしてとらえられていたようで温かい雰囲気の会社だった。
しかし、幸せは長く続かなかった。
姶良の直属の上司である部長がセクハラ行為をしてきたのだ。
それは最初卑猥な会話から始まって最終的には身体に触るというところまでエスカレートしていた。
姶良は我慢が出来なくなって公共機関に相談した。
対処します・・という言葉を信じて姶良は日々を耐えた。
それからしばらくのことだった。
社長室に部長が呼ばれた後、真っ青な顔をして出てきた。
部長が社長に解雇を通告されたのだ。
もちろんその背景には公共機関から社長への通報があったのは言うまでもなかった。
それから1カ月、退職までの部長は見る影もなかった。
日に日に生気がなくなって行って最終的には抜け殻のようになって退職して行った。
姶良は若干気の毒に思ったが、自業自得だと思った。
しかし、話はこれで終わらなかった。
部長が姶良にセクハラしてるのは部内皆が周知の事実でセクハラが原因で退職となると
告発したのは姶良だ、ということになった。
同僚の雰囲気が変わった。
明らかに自分を厄介者というか自分も何言われるかわからない・・という目で見てくる。
関係も必要以上に距離を保った無味乾燥なものに変わっていった。
トイレであることないことを同僚がひそひそ話しているのを聞いた時には愕然とした。
私・・またやっちゃったの!?
結局、姶良もその会社を退職することになった。
社長は慰留してくれたが同僚の冷たい視線の中、仕事はできなかった。
それから、姶良は職を転々とした。
なるべく自分のおかしな行動が表面化する前に退職できるように期間を絞った職にしか
就かなかったからだ。
そうして思い出されるのは大学時代、いつも自分のフォロー役に回ってくれていた今井ラナ
という人物の偉大さであった。
そうして、今から半年ほど前、ようやく姶良は本当に偶然にラナと再会した。