遺品整理や身の回りも落ち着き、通夜の次第となった。
智代や美奈、初音のほかに会社の同僚や学生時代の同級生なども集まった。
皆一様にラナの人柄を偲び、会場は悲しみに包まれた。
集まった人の中に和彦の姿はなかった。
初音はラナの死後すぐに天野商事にラナが死んだことを電話したが、その時は袴田と名乗る秘書が出て、
社長に伝える、とだけ言われて切られてしまった。
瑠奈という存在を美奈から聞いていた初音はある程度この展開に予想がついたが、それでも最期の見送り
の儀式である通夜に来ない和彦にいらだちを感じた。
と、同時に自分が他の人のことでこんなに心が乱されることに気がついて改めてラナという部下の存在の
重さを確認した。
ラナの通夜は大通りから少し入ったところにあるセレモニーホールで行われた。
そこの前を毎日、仕事の行き帰りにバイクで通る人物がいた。
その日もその人物はセレモニーホールの前を通り、何気なく故人の名前を見た。
「ばさっ」
スーパーで買った食料品が地面に落ちた。
「今井・・ラナ・・?」
垢ぬけないマイペースそうな人物。
そう、数ヶ月前にラナと智代と話した影崎姶良であった。