第51章ー遺された日記ー

 ラナが亡くなった後、智代たちはラナの遺品整理を始めた。
 初音は編集長代理という立場上、職務が忙しくこの作業に加わることができなかった。
 また、ラナが亡くなってから役所で知ったことだが、ラナは小さい時に両親を交通事故で亡くしていて孤児院で
 育ったということが分かった。
 親戚を探したが見つからなかったので、葬儀は会社のメンバーが中心に・・という話で進んでいた。
 遺品整理という作業は実に気が重かった。
 こういう作業をやっていくと、ラナがもうこの世にいないという冷たい現実を突き付けられて智代や美奈は気が
 滅入った。
 智代がアルバムを見つけた。
 大学時代だろうか、和彦やサークルのメンバーと思われる人たちと写った写真もあった。
 しかし、そのアルバムのメインは大学卒業後の写真で、その大半が智代との何気ない日常を切り取ったものだった。
 それを見ると、智代は悲しみを抑えられずに涙を流した。
 美奈もラナとの思い出が次々と思いだされ、同じような状態だった。
 そういえば・・
 美奈はある事を思い出した。
 ラナは入院してから枕元に日記帳を置いていた。
 誰も中身を見たことがなかった。ラナが見ることを許さなかったからだ。
 がさごそと遺品を探して美奈はラナの日記を見つけた。智代と美奈はその日記を読み始めた。
 日記は入院した日から始まっていた。
 そこには智代たちが知ってる普段のラナとは別の死の影に怯えるラナがいた。
 ラナは死ぬのが怖くないと言っていたがやはり死後のことやがんの痛み、そして死を目の前にした「死」ってなに?
 という根本的な自問自答が綴られてあった。
 その日記は瑠奈が訪ねてきた日で終わっていた。
 そこには一言、こう書かれてあった。
 「どうして?どうして私と和彦さんはお互いを想いあっているのに・・」
 
 
 
 

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