ディナーの最中、智代はラナの変化に気がついた。
ラナは以前はこういう高級ディナーを目にしたら皿をなめるくらいの勢いで食べていたのだが、
今日はすごくゆっくりである。
その上、智代にこんなことを言ってきた。
「智代、私、もうお腹いっぱい。残りの分は貴女が食べて。」
「ラナ、今日はあまり食べていないじゃないの?なにかあったの?」
智代が聞くと、ラナは少しはにかんだような顔をして
「・・・ダイエット・・」
と言った。
「ああ、なるほどねぇ・・でもラナ、前に自分は胃下垂だって言ってなかったっけ?」
「体質が変わったのかしら?ちょっと・・ね・・」
「はいはい、わかりました。後は私が引き受けます」
と、智代はいい、高級ディナーをラナの残りの分まで平らげた。
こんなのを残すなんてラナも酔狂ね、と智代は思った。
ラナは智代の部屋に原稿を取りに来たり、智代の生活管理はしていたが、ときどき智代の料理を
食べる以外は二人は別々に食事をとっていた。
だから実際は智代はラナが普段どれくらいの量の食事をしているのかはよくわからないのだった。
しかし、女性同士とはいえ、食べる量について聞くのはなんだか品がないと思い、智代はこの質問
をずっとしそびれていたのだった。
そして一息ついているとラナはおもむろにポケットから薬瓶を取り出して水と一緒に飲んだ。
「ラナ、それ、何の薬?」
無邪気な智代の質問にラナは少し困惑したような表情で答えた。
「整腸剤・・」
「・・ダイエットにそんなの、要るの?」
ラナの表情が曇る。でもそのあと不意に明るくなって答えた。
「そうなのよー、何せ体の中には何も残さないようにしなくちゃならないでしょう?
そのためにはお通じも良くしないとね♪」
ラナの表情や態度に少し疑問は感じたが、ダイエットと本人が言う以上、突っ込んで聞く理由もなく、
ディナーは終わった。