瑠奈は黒服に囲まれたままリムジンで三千院家に連れ帰られた。
父は瑠奈を見るとつかつかと歩み寄ってきた。
身を案じるのかと思った瑠奈の想いは裏切られた。
「ぱんっ」
瑠奈の体が倒れた。父は何も言わずに瑠奈の頬を叩いたのだ。
父は言った。
「瑠奈、お前は三千院の娘という自覚があるのか?軽はずみな行動がどれだけの人間に迷惑を・・」
「お父様、それは謝ります。でも、わたくしも外の世界が見た・・」
「そんなもの、お前には必要ない・・」
「・・・」
「お前は三千院の娘だ。お前を利用しようとする人間が外の世界にはあふれている。お前は一人で外
に出るにはあまりにも危険なんだ・・」
「・・・」
その時、黒服が名刺とカメラを父に渡した。
「リコリスプロダクション、石川・・・。瑠奈、こいつに変なことされなかったか?」
「どういうことですの?」
「なにもされていなければそれでよろしい。ふん、こんなプロダクション風情が我が娘にちょっかいを
出そうなど・・」
怒りに震える瑠奈の父の手の中で名刺が握りつぶされた。
瑠奈の父は受話器を取り上げるとどこかに電話をかけ始めた。
「・・ああ、私だ。実は娘の瑠奈にリコリスプロダクションというのがちょっかいをかけたんだ。それにつ
いて調べて報告をあげてほしい。頼んだぞ。」
瑠奈の父は、先ほどまでの厳しい表情を緩め、瑠奈に向って笑いかけた。
「瑠奈、あの怪しい男とその男の所属してるプロダクションがどういうところか少し調べてもらう。
結果次第では断固たる処置を取るから、安心しろ」
「断固たる処置・・?」
瑠奈はその言葉の意味がよくわからなかった。
しかし、数日たってその言葉の意味を理解する。恐怖と絶望を持って・・