瑠奈が見知らぬ男性にカフェに誘われていたころ、三千院家では大騒ぎになっていた。
瑠奈は今まで家に従順な娘でその瑠奈が学校を抜け出して外界に出たことが大騒ぎになった。
瑠奈には和彦という三千院の跡取り候補がいる。
それをどこの馬の骨とも知らぬものを引っ張ってきたら・・
いや、それならまだ何とかなるが、誘拐でもされたら・・
三千院当主の瑠奈の父の命により、極秘に街に黒服の軍団が放たれた。
同じころ。カフェで話す瑠奈と男性がいた。
男性は髪はぼさぼさでお世辞にもハンサムとは言えない若者だったが、なんだか惹きつけられる物を
感じて瑠奈はついてきたのだった。
男性は言った。「ここのコーヒーはおいしいんですよ。お気に入りなんです。」
瑠奈は言った。「最初に会った人には自己紹介をするものではありませんの?わたくし、父母からそ
う教わりましたわよ。」
男性ははにかんで頭をくしゃっとかいた。
「ははは・・これは手厳しいお嬢さんだ。でも仰る通り。僕はこういう者なんだ。」
名刺を渡され、見やると「リコリスプロダクション 石川 泰」
と書いてあった。
「・・・何をなさってるのか、さっぱりな名刺ですわね。0点ですわ。」
「これはまた手厳しい。要はね、僕はモデルのスカウトをしてるんだ。」
「モデル?」
瑠奈はイメージがあまり湧かなかった。
三千院の奥では瑠奈に与えられる情報というのはきわめて乏しく、そういう芸能関係の情報は学校のク
ラスメートが隠し持ってくる雑誌をちらっと見たり、話を聞き流すくらいでしか、瑠奈は知らなかった。
「どうだろう?一度わが社のオーディション、受けてみない?ああ、その前に君の名前を聞いてなかったな。」
一瞬三千院と言いかけたがそういうとこの石川という男はどう思うだろう?
少し遊んでやろうと思い瑠奈は名字を伏せて「・・ルナ」とだけ言った。
「そうかぁ、ルナちゃんかぁ。良い名前だねぇ。うんうん、そうしたら一度うちの社長にかけ会ってみ
るから、写真、1枚でいいからいいかな?」
「・・1枚だけですわよ」
ぱしゃっ。
そこには「三千院の娘」としてではなく、「普通の娘」の顔をした瑠奈が写っていた・・