第15章ー回想(1)ー

 
 ラナは東京にある東都大学という大学に通っていた。
 ラナは一年浪人して入学していたので、合格発表のとき、自分の番号を見つけた時はそれは嬉しかった。
 東都大学はサークル活動の活発な大学だった。
 ラナも入学早々勧誘の雨あられに曝されることになった。
 友達づくりにはサークルに入るのが手っ取り早いと考えたラナはあるサークルを選んだ。
 そのサークルは「サイクリングサークル」であった。
 ラナは自転車に乗るのが好きだったので単純にこのサークルに決めたのだ。
 大学のサークルというものはえてしてそういうものだとは聞いていたが、サイクリングよりもメンバーの
 親睦会という名の飲み会の方が多かった。
 ラナは最初の飲み会で先輩たちと飲みあい、潰してしまい、入って早々「クイーン」の称号を手に入れた。
 しかし、ラナには嬉し恥ずかしという感じだった。
 
 「クイーン」としてのラナはどちらかというと頼りにされることが多い姉さん的キャラクターになっていて、
 ラナは同級生の恋の悩みや勉強やバイトの愚痴を聞くことが多かった。
 そんなキャラクターが災いしたのか、不思議とラナに言い寄ってくる男子はいなかった。
 「まぁ、仕方ないか・・」
 大学のサークルでの甘いロマンスを夢見ていたラナには自分の立ち位置が少し不満であった。
 
 そんなラナの心情に気がついたのか同級生の女子軍団がある男子学生とラナをくっつけようと画策を始めた。
 もちろん両人には知られないように・・
 その男子学生こそ「天野和彦」だった。
 彼女たちは知らなかった。
 この何気ない計画がその後に暗い影を落とすことになることに・・

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