第11章ー恐怖の宣告ー

 ラナは病院に収容された。
 以前よりなんだか重々しい雰囲気で行われる検査の数々。
 正直辟易した。
 はぁ、こんなところで寝てるだけってのもねぇ・・
 
 入院してしばらく経った頃、ラナは担当医、竹内の部屋に呼ばれた。
 竹内は胃カメラの写真や数値やグラフの入った表を見せて、言った。
 「今井さん、率直に申し上げます。貴女はがんです。胃がんです。しかもだいぶ進行していて今すぐにで
 も手術をお勧めします。」
 「・・・」
 「化学療法や放射線治療なんかも必要になるでしょう。とにかく、今は一刻を争う非常事態だと認識して
 ください。」
 「そこでですね、とりあえず手術に同意していただく必要があって・・」
 まくしたてるように話す竹内の言葉をラナが遮った。
 「お医者さん、私、自分が多分がんだってことはわかっていましたよ。これほど胃が痛くて食欲がなくて
 痩せて行くなんて尋常じゃ
ない。ええ、わかってたんですよ・・」
 「じゃぁ、なぜもっと早くに診察を受けなかったんですか?」
 「ちょっと色々ありまして・・」
 「とにかく、手術です。手遅れになりたくないでしょう?」
 
 その時、ラナの表情が変わった。
 力が抜けて視線が遠くに行った。
 「いいですよ、手術なんて。どうせもう十分生きた命ですもの。これはむしろ神がもういい、と言ってる
 んですわ」
 「ちょっと、今井さん!」
 「私、手術は受けません。いかなる延命の治療も拒否します。そんなことしたら裁判に持ち込みますよ?」
 裁判、と聞いて竹内がたじろぐ。
 「それじゃぁ、部屋に戻ります。」
 
 部屋には茫然としている竹内が残された。
 竹内はラナのカルテを出してラナの記述に目を通した。
 そしておもむろに電話に手を伸ばした。
 「もしもし、私、S病院の今井ラナさん担当の竹内と申しますが・・」

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