第3章ーディナー当選ー

 智代は25歳になった。ペンネームは「葉山晴香」と名乗っている。
 今、長編恋愛ファンタジー小説「異世界の吸血姫」シリーズを執筆中。
 物語は中盤まで進んできていて熱狂的な読者もつくような、人気シリーズになっていた。
 ラナは相変わらず智代の編集者であった。
 智代がラナがウマが合うということで、ラナを担当編集者にとどめていたのだった。
 出版社もドル箱作家のささやかなわがままには目を瞑るという意味でラナは時々応援で他の作家の
 ところに行ったりする以外は変わらず智代の生活をサポートし、出版社と智代の仲立ちをしていた。
 
 そんなある日、智代は懸賞で応募していた高級ホテルのディナー券に当選した。
 智代は言った。
 「ねぇ、ラナ?良かったら、これ、私といかない?」
 ラナが言う。「私はいいわよ。他の人と行ってきたら?智代にも好きな人の一人くらい、いるでしょ
 う?」
 「私にはそんな人いないわよ。ラナだって知ってるでしょう?私は作家業に忙しくてそんな暇ないの
 よ。」
 「ああ、大先生には参るわねぇ。恋愛小説を書いてるのに、当の本人が恋愛経験0だなんて・・」
 「ラナだって同じような感じでしょう?」
 それを聞くと、ラナの笑いがすこし引きつった。
 智代はそれを見逃さなかったが、「なにかあったの?」と聞く前にラナの言葉で遮られてしまった。
 「はいはい、それなら私は智代大先生とお付き合いさせて頂きますわよ」
 「ふふっ、ラナったら、本当はうれしいくせに・・」
 他愛ない言葉を返す二人。
 これが二人の日常だった。
 
 そしてディナー券に指定された当日、二人は高級ホテルにおめかしして出かけた・・

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