ラナは和彦に会った翌日、初音と智代を自身の病室に呼び出して手術を受けることを伝えた。
智代は嬉しさから泣き、初音もうんうんとにこやかにほほ笑んでいた。
ラナの手術の日程は案外早くに決まった。
医師がもともと治療するように、手術を受けるようにと言っていたのをラナが拒絶していたので話が
のびのびになっていただけだったので当人のラナが手術を受諾した今、障害はなかった。
和彦も暇を作ってはラナの見舞いに顔を出してそのたびにラナは退院後に和彦と何をしようか、どこ
へ行こうかと他愛ない会話をしていた。
和彦の説得後、ラナはよく笑うようになった。
確かに体は以前よりずっと痩せていたがそれでも普通の人と変わらぬそぶりでとてもがん患者には見え
ないほどだった。
手術の日、手術室へ向かうラナを初音と美奈、智代が見送った。和彦はどうしても抜けられない商談が
あるとかで顔を出せなかったが、「頑張れ」という励ましをくれた。
ラナは智代に言った。
「私、頑張るね。」
智代が頷く。
その様子を美奈と初音が見ていた。
そうしてラナは手術室の扉の向こうへ入って行った。
手術の終了を待つのってどうしてこんなに長いんだろう。
智代は思った。智代自身、誰かの手術に立ち会うのは初めてだったが、この何とも言えない不安感が荒
れ狂う、恐慌寸前の感情はあまり気持ちのいいものではなかった。
美奈は落ち着きなく、手術室の前を行ったり来たりしている。
初音は椅子に腰かけて何を考えてるわけでもないようで視線が宙を彷徨っていた。
そうして過ごすこと数時間、「手術中」の光が消えた。
それに最初に気がついたのは美奈だった。
「あ!電気、消えた!」
美奈は素っ頓狂な声を上げたがそのおかげで初音と智代は我に返った。
しばらくして扉を開けて医師が出てきた。
3人が同時に聞いた。
「手術は、うまくいきましたか?ラナは元気になるんですよね?」
医師は下を向いて沈痛な表情で一言ぽつりと言った。
「・・申し訳ありません・・」