Phase3. 奴隷を使うアリ
皆さんも夏に路傍で黒いアリが白い米粒のようなものを銜えて行列しているのを見たことがあると思います。
よく、「引越し」といわれますが実は大抵の場合、サムライアリがクロヤマアリの蛹(繭)を強奪してきた行列です。
このよく知られたサムライアリの生活史をお話しましょう。
7月頃、サムライアリは結婚飛行を行います。
オスは白い羽に白い触角、メスは白い羽を持っています。
とてもきれいなのでぜひ一度実物で見てみたいものです。
話を元に戻しまして結婚飛行を終えた女王はPhase2のような方法でコロニーは作りません。
クロヤマアリの巣にずかずかと入っていきます。
そしてクロヤマアリの女王を殺してしまい、働きアリをそっくりそのまま手に入れます。
こうすることで最初から子育てに専念できるわけなんですね。
さて、サムライアリの働きアリが誕生してきますが働きアリとは名ばかりで、鎌状になった大あごは子育て、巣作り、さらには自分で餌をとることもできません。
砂糖の山の中で餓死したとダーウィンが言っていたそうです。
専ら巣内を意味も無くうろつくか、クロヤマアリから餌をねだっています。
ところが、野外での事故や寿命でクロヤマアリはどんどん減っていきます。
クロヤマアリが減ってくるとサムライアリにとっては一大事です。
そこで近隣のクロヤマアリの巣から繭もしくは羽化したての成虫や幼虫を強奪しに行きます。
強奪されてきたクロヤマアリは先輩のクロヤマアリの世話によりサムライアリの巣で生まれます。
そして仕事に従事するのです。
そこが自分本来の種の巣ではないとは知らず・・・。
こうした寄生様式を奴隷制(もしくは労働寄生)と呼びます。
奴隷制にも色々あります。
最初、女王が巣作りするときだけ相手の巣をのっとって自分の働きアリが生まれたあとはそんなことはせず自分たちだけで生活していく種もいます。たとえばアメイロケアリの巣をのっとるクロクサアリなど。
こういうのを1時的社会寄生といいます。
また、永続的社会寄生というものもあり、この種は働きアリを持たず、女王とオスアリしか産みません。
専ら寄生しているアリの世話に頼りっぱなしです。

なお、奴隷といってもこき使われるわけではありません。
アリはにおいで巣の仲間を見分けているので単に「怠け者だなぁ」と思ってるかもしれませんね。
まれにですが奴隷種が寄生種を攻撃するという「反乱」が外国のアリで観察されています。

・・・人間みたいですね。

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