城野内智代は幼い時から本を読むのが好きな少女だった。
いつの頃からか、彼女自身も忘れたが自分で物語を書きたいと思うようになった。
最初は学校の国語の先生に見てもらったが、赤字の添削だらけで却ってきて苦笑いしてしまった。
それでも、智代は書くということを諦めなかった。
高校入学の頃、ライトノベル小説の賞に応募したら努力賞なるものがもらえた。
もちろん、内容が全文公開されるような出来ではなく、単に雑誌の受賞者名の終わりの方に小さくペン
ネームが載っただけだった。
しかし、智代はこれに大いに気をよくして、ますます色々な賞に応募をして行くようになった。
そして、高校3年の春、富士出版という出版社が出す富士ファンタジー文庫というライトノベル文庫の
大賞を取った。高校3年での大賞受賞は当時、すごく驚嘆を持って迎えられた。
智代には早速原稿執筆の依頼が来たが、智代は受験生であったので、勉強との両立は大変で、連載は2
カ月に1回という遅筆であった。
智代は地方の小都市に住んでいた。冬になると雪が積もり、鉛色の空になるこの都市から出たくて智代は
東京の大学を受験していた。
そして念願かない東京にある某私立大学の文学部に入学することになった。
東京での新生活、それが始まるのに伴い、富士出版から物語の執筆ペースなどの打ち合わせと日常の生活
管理をする編集者が智代につくことになった。
その編集者こそ、今井ラナという女性編集者であった。