2020年9月の観察日記

9月1日 暑い日が続く。
クサアリモドキの氷枕も例年ならこの時期にはお役御免になるのだが、毎日活躍している。
平日、私が部屋にいない間に暑さから狂走の上、脱走されたらテンションが下がってしまう。
脱走は氷枕を乗せてからほぼ抑えられた。
隙間があったのは本当に盲点だった・・・
9月2日 今年、ハヤシクロヤマアリにニイニイゼミ、クマゼミ、ヤブキリ(と思われるキリギリス系昆虫)の死骸を与えた。
クマゼミは見た目は食べていないように見えたが、後日死骸を回収したら胸部に穴が開いていてそこから体内に食い行ったようだ。
そして、今日。私の部屋にセグロアシナガバチが迷い込んだ。
どうしても追い出せなかったことと、布団や寝間着に紛れ込んで刺される危険を考えて殺してハヤシクロヤマアリの餌になって貰った。
餌場に放り込むと、野生のもののように一瞬でわらわらと集まる。
野生のアリってこうだよなぁ・・・と思いながら解体されていくハチの死骸を眺めていた。
正直、野外の昆虫を与えるのは少し抵抗がある。
野外のものを与えて今まで人工的環境の餌で発展していたコロニーが崩壊した話もあったからだ。
それがあったので、今まで決まりきった献立になっていたのだが野生を見ることを考えるととても見ごたえがあった。 
9月3日 出来れば、今度の土曜日に箕面に夜戦に出かけたい。
アギトアリやヒゲナガケアリと思われる大きいケアリ、キイロシリアゲアリと逢いたいのだ。
天気予報はかなり良くない意味で微妙。
日暮れの少し前から雨で日没後しばらくして上がる予報になっている。
い、いや、まだ2日ある。
これくらいなら曇り予報への変更もざらにあるではないか。
そう思って自分を鼓舞している私がいる。
久々にアギトアリとヒゲナガケアリと思われるケアリを撮影したい。
欲を言えばクサオオアリがいてくれたら・・・
ま、それ以外にも最近全然山を歩いていなくて少しうっぷんが溜まっているので自然の良い空気を吸ってリフレッシュと言う意味もあるのだが・・・ 
9月4日 キイロシリアゲアリの女王。

採集してずいぶん時間が経ったが、女王たちは1匹も脱落せずに仲良くしている。
少なくとも、このキイロシリアゲアリはアカムシの餌よりミールワームの方が良かったと今更ながら思う。 
9月5日 7月に採集したアシナガアリで働きアリが羽化した。

恒温機で夏をしのぐとこの時期に働きアリの羽化が見られる。
9月6日 3年前に長野で採集したハヤシクロヤマアリの働きアリ。

ゼリーの容器のふちにいる個体を写してみた。
最近、ゼリーの食いも落ち気味。
幼若個体の生産は終わったようだ。 
9月7日 これは、大阪城の「小型」クロヤマアリの様子。

ボケているが、働きアリ。
容器の深さや置き場所によってカメラの写り具合が変わって苦労する。
このコロニーは8月20日に紹介したもの。
上手く今年は増えてくれた。
来年に一気に増えてくれそうな感じだ。
9月8日 今年採集したクサアリモドキの様子。

卵があるが、孵化していない。
繭を多めに採集したが先月頃の脱走事件でどうも脱走者がそこそこ出てしまったようで何だか寂しくなってしまった(あらかた回収できたと思っていたが)。
それに伴い、女王の産卵数も尻すぼみになってしまった。
このままでは個体数が伸び悩む昨年のクサアリモドキコロニーの二の舞になりそうだ。
もう少しケアリの繭を沢山用意できれば問題なかったのだが、ケアリの繭は毎年見つけられるかが運模様になっている部分があって(繭がある倒木を見つけられるかが運次第ということ)それによってケアリ寄生種の成果が変動している部分がある。 
9月9日 例年、生まれているキイロシリアゲアリのオスアリだが今年は見られない。
理由は恐らく新しい肉餌をあまり食べなくなっていることだと思われる。
来年はミールワームと併用しようとコロニーを見ながら思った。 
9月10日  秋っぽくなり、アリに動きが見られなくなってきている。
多くのアリたちで幼若個体の生育が鈍化或いはストップして来ていて、見ごたえに賭ける時期になってきた。
少し寂しいが、取りあえず冬を乗り切るために餌を与えて栄養をつけて貰おうっと。 
9月11日  肉餌と言えば思い出したことがある。
最初の頃、教科書通りハチミツを使っていたが、メイプルシロップの方が蜜として与えた方が受けが良いことを思い出し、メイプルに変えた。
メイプルには水分が多いのだろうか、やたらとべたつくようになった。
季節的に夏と言う多湿の季節と重なったのか良く分からないが、翌日にはもうドロッとした物体に変わっている。
当然、翌日には撤去しないとダメである。
見た目はよく似たメイプルとハチミツ。
しかし、水分含有量の点では大分違うようだ。
9月12日  箕面に夜間観察に出かけた。
日没後、しばらくした午後7時頃から滝のそばから駅に向かって歩き始めた。
今回、誤算があった。
公園内のトイレ2つが工事中で完全に立ち入れなかった。
2つとも良い光源だったのだが・・
そして、道中の街灯もLED化が進み、「虫の集まる街灯」が減っている。
それでも、収穫はあった。

日没後、すぐ自販機にキイロシリアゲアリのオスが集まっていた。
メスアリは見かけなかった。

ケアリのオスも来ていたが低調。メスアリはクモの巣に引っかかったもの以外は見かけなかった。

2015年のものに似ているカギバラアリのメスアリ。
取りあえず標本にして顕微鏡でじっくり見ることにした。
5年前はワタセカギバラアリとしたが・・

この時期、かなり目立つアギトアリ。
今年も観察できた。
メスアリは3匹ほどの目撃だったがオスは全部で10匹ほど自販機で見かけた。

そのアギトアリのオス。
毎回書いているような気がするが、ハチにしか見えない・・・
白く明るい自販機に止まっていたので後ろがホワイトバックの綺麗な写真が撮れた。
途中、一瞬にわか雨が(小雨程度だったが)降って少し驚いたが幸いすぐに止んだ。
写真は撮らなかったがカネタタキとヒメカマキリによく遭遇した。
お持ち帰りはアギトアリの雌雄とカギバラアリ。
標本にしたいのだ。
9月13日  最近、部屋の中をウメマツオオアリがちょろちょろ歩いている。
恐らく、机の上のコロニーの構成員だと思うが、脱走出来るような隙間が見当たらない。 
このパターンが一番厄介。
巣部屋、変えた方が良いかなぁ。
この脱走もクサアリモドキのケアリ脱走と同じ時期に出始めた現象。
イヤなシンクロだ・・
9月14日 クロオオアリは巣部屋の給水用金網に肉餌のアカムシの粉末の欠片を塗りたくることを覚えてしまったようだ。
以前はほぼ塞がれるまで時間がかかったが、今は1か月ほどで給水兼吸排気口が機能しなくなる。
アリたちには巣部屋がスースーしすぎるのが気に入らないのかもしれない。
ちなみに、この汚れは蓋を交換してお湯に1時間も浸しておけばふやけてほぼ落ちる程度のもの。
ただ、蓋を一瞬開けるのでそこが勝負どころではある・・・ 
9月15日 クサアリモドキにしてみた。

女王。腹部は結局大きく肥大化しなかった。

卵たち。孵化している様子はない。
トリミングしてみたら、2枚とも微妙にボケてるね・・・
カメラはいつまでも上達しない。
9月16日 クロオオアリが肉餌で巣内の換気口を塞ぐと書いたが、写真を撮ってみた。

金網に肉餌を塗りたくる。
この画像は巣内の石膏に給水するためにスポイトで水を注いだもの。
ここまでの状態になれば蓋を替えるしかない。
同じ蓋があるので一瞬のスキをついて交換する。
そして、この状態の蓋をお湯に浸してこびりついた肉餌をふやかして流水で流し去るのだ。
9月17日  ハヤシクロヤマアリもすっかり食いが細くなった。

ゼリーを与えてもこれくらいしか集まってこない。
これを見て、卵幼虫蛹はいないので、もう今年は肉餌は与えずにプロゼリーだけで良いのではないかと思い始めた。
しかし、野外のアリは普通に昆虫を集めている。
やはり、まだ肉餌は必要なんじゃないかと思い直した。
幼虫で越冬する種もいますしね。
9月18日 肉餌あれこれについて書いて行きたい。
今年、社会情勢の混乱もあって春頃、気楽に山や店に餌用昆虫をゲットできる状態ではなかった。
そんな時に見つけたハチミツ+テトラフィン+乾燥アカムシ。
すり潰すときにくしゃみが出るのはご愛敬だが、保管はしやすいし、アリの受けもそこそこだと思う。
途中からアカムシとテトラフィンをハチミツからメイプルに変えてみたが恐らくこれはハチミツの方が正解だと思う。
メイプルは乾燥が早いようで乾燥した肉餌は殆ど相手にされなくなる。
恐らく、これとミールワームが今の私には最適解なのではないかと思う。
シーズンも終わってしまうので、来春以降の課題にしたい。
さて、どういう問題を起こしてくれて、どういう解決策をひねり出してくれようか。
9月19日 昼頃、クサアリモドキの餌場を見てみると、外気温が高くないのに餌場を登ろうとしているアリたちが多くいた。
餌を欲していると思い、ゼリーを入れるとあっさりと大人しくなった。
そう言えば、この容器をクサアリモドキ用として使っていた頃、氷枕に毎日給餌をしていた。
毎日給餌はゼリーや肉餌のロスが大きい(要するに1日で食べ切れない)ことが分かり、2日に1回の給餌に改めた。
しかし、この涼しくなり始めている時期にこの姿を見せられると、メイプルくらいは今でも毎日与えないとダメなんだなぁと思う。 
9月20日 大阪城のクロヤマアリの女王は2個体採集して、1個体は働きアリの羽化まで漕ぎつけたが、もう1個体がダメ。
卵しかない状態のまま3か月が過ぎている。
給餌しているので、腹部は大きいが一向に幼虫以降ステージが進まない。
働きアリを育てた女王も、よく考えるとそれ以降働きアリが羽化してこない。
「大型」クロヤマアリ女王はそう言うことが少なく安定感があるのに、「小型」クロヤマアリは産卵数が少なく神経質な印象だ。
「小型」女王はこういう習性を持つ者が多いのであるならば、単独でコロニーの立ち上げは出来るのか疑問が沸いてくる。
しかし、現状でそれ以上調べる術が思い浮かばないのだった。 
9月21日 枚岡を歩いた。
女王アリや羽アリを見かけることは無かった。
代わりに、少し変わったものを見かけた。
動画
オオスズメバチが抱き合っている。
「社会性カリバチの生態と進化」によると、これは「オオスズメバチに特有の抱き合い行動。同巣の働きバチ間の相方が空腹状態の時に行われる」だそうである。
この後しばらくして2匹は離れて行った。

画像にすると、こんな感じ。

アリ関係では、朽木をめくるとケアリの働きアリの小さな幼虫が出た。
今夏、クサアリモドキに入れたケアリが脱走してコロニーの勢いが弱化した。
そこで、来年のテコ入れを祈ってこの幼虫を今年採集したクサアリモドキコロニーに入れた。
取りあえず、これらが羽化したら一気に巻き返してくれるだろう・・・多分。
餌場に入れると、すぐに働きアリが巣内に運び込んでくれた。
9月23日 クサアリモドキの様子。

昨日、投入した幼虫の世話をしているケアリの働きアリ。

女王。夏場はエアコンをつけると巣内が曇って上手く写真が撮れなかったがエアコンも必要なくなり、ようやくクリアな写真が撮れた。
もう、産卵はしていない模様。
ケアリの働きアリを維持しつつ来年に期待だ。 
9月23日 これは一昨日ハヤシクロヤマアリコロニーに入れたゼリー。

投入して3日目でこんな感じ。
幼若個体の生産は終わったが、まだまだ食欲は健在だ。 
9月24日  箕面で昨年採集したケアリ。

働きアリにしてみた。
休憩しているのだろうか。
タッパーで飼育しているが、今のところ特に不具合が無い。
9月25日 アシナガアリも幼虫の成長が鈍化してきた。
1つのコロニーで2匹目の働きアリが羽化しそうであるがそれ以降は小さなものばかり。
初年度に働きアリを生産出来たらアシナガアリは成功だと私は思っているので、来年以降・・かな。
9月26日  枚岡を歩いた。
しかし、思った以上に山に水分が多く、アリは少なかった。
しかし、シリアゲアリは飛んだようで公園事務所のトイレの壁に有翅、脱翅メスが数匹見られた。

脱翅していたのは2匹で、あとは有翅と言う状態だった。
アップにしてみると、可愛い。
9月27日 ムネアカオオアリ。

あまり増えなかった。
飼育容器の容量の加減か、肉餌があまりお気に召さなかったのか・・・
クロオオアリは微増ながら増えてくれているので、原因追及は来年にしよう。
9月28日 箕面のケアリ。

枚岡の朽木からは小さな幼虫しか出なかったが、このコロニーにはまだ繭がある。
だから枚岡の朽木に期待もしたが、飼育環境と野外とでは違うということなのだろうか。 
9月29日 クロオオアリの働きアリ。

少し大型の働きアリが出てきた。
微増だったが、働きアリ全体の体躯が大きくがっしりとしてきた気がする。 
9月30日 1日に、「暑い日が続く」と書いていたが、最近朝夕はめっきり涼しくなった。
アリたちの餌の食いも大人しくなってきた。
毎年、この時期辺りから冬の管理について考え始める。
とにかく乾燥させないように、この一言なのだが部屋に暖房も入れるので夏ほどの頻度ではないが給餌もしなくてはならない。
さて、今冬はどういう風にしていこうか・・・ 

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