2020年7月の観察日記
7月1日 | オオズアリの幼虫が良い感じに育ってきた。 体内に色が入っているが、ゼリーしか給餌していない。 しかし、1匹でもすごく安定感がある。 オオズアリの新女王っていつ飛ぶのか正直掴み切れていないが、この個体は新女王なのだろうか。 |
7月2日 | アリたちは今は2日に1回の給餌にしている。 それでも、クサアリモドキ、ハヤシクロヤマアリ、クロヤマアリには毎日メイプルシロップを少し与えている。 クサアリモドキは女王の栄養不足が疑われるため、クロヤマ、ハヤシクロヤマはコロニー規模が大きくなってきたからだ。 勿論、翌朝には食べ切るように殆ど1,2滴程度。 食べ残させてそこに巣内のごみをくっつけさせる作戦もあるんですけどね。 |
7月3日 | 6月27日にクロヤマアリに産卵を確認したElasmosoma trichopygidium の幼虫が入っていると思われるクロヤマアリが4匹死んだので腹部を解剖したら1匹だけハチの幼虫がいた。 クロヤマアリの腹部を入れて写した。 腹部ほぼいっぱいに成長した幼虫だが、前蛹ではなく活発に動いていた。 常温飼育でおよそ1週間でここまで大きくなるのだろうか。 それとも以前に産卵されていたのだろうか。 少し分からなくなってきた。 解剖して、これが「ごろっ」と出た時は本当に嬉しい。 次は蛹を見てみたい。 |
7月4日 | 寄生バチの飼育は殆どホストの飼育だ。 寄生されたアリを回収するとき、周囲の未寄生個体を吸い込んでしまう。 それと寄生されたものは見た目で区別が付かない。 そうして寄生されたものを解剖していくのだが、生きているものは寄生されているのかどうかが分からないのは何とも・・・ 解剖したらそこで終わってしまうし・・・ |
7月5日 | 明け方、雨が降ったがその後晴れてきたので枚岡へ。 到着後、自販機に数匹だけケアリのオスを確認。 クサアリモドキのメスアリも見かけたが撮影機材を用意している間にどこかに行ってしまった。 アシナガアリの新女王。オスは自販機に数匹来ていたが新女王がみられるとは思わなかった。 ハリブトシリアゲアリと思われるシリアゲアリの新女王。全く元気が無かった。 街灯にケアリがいた。1匹だけで有翅だったのでスルーした。 そして、帰宅途中私の自宅近くでケアリの新女王を採集した。 昼から大阪城。 寄生バチが1匹飛んできたが私の目の前でアリを集めるために置いたカルパスに絡まってしまった。 他には飛んでこなかったので早々に撤収した。 寄生バチは今日は戦果なしだった。 |
7月6日 | 昨日、アシナガアリの新女王を撮影していたが、それは採集している。 シロアリを採集したことと言い、恒温機には今年も暑い時期に登板願うことになりそう。 恒温機が無かった時、アシナガアリが産卵してもすぐにダメになる理由が全く分からなかった。 恒温機を入手して、夏に冷やせる環境が出来てから働きアリが羽化するようになって高温による障害だと気が付いた。 それにしても、暑い時期に飛ぶアリが暑さにダメって不思議な気もするが林の木陰に巣を構えるアシナガアリには暑さに無対策の私の部屋は厳しいのだろう。 |
7月7日 | 日曜日に採集したケアリ。 ケアリは当たり外れが大きいように思うので採集してみた。 私が中学生辺りまでこのケアリの女王はよく見かけたが今は少なくなった。 私の近所の公園からクロヤマアリがいなくなったのと関係があるのだろうか。 |
7月8日 | アシナガアリの新女王の顔。 アップにすると特徴的な顔をしている。 |
7月9日 | 職場からの帰り、ふと地面を見ると歩いているものがいたので採集した。 アメイロケアリかヒゲナガアメイロケアリと思われる女王アリ。 触角を拡大していないのでどちらとも言えない。 また明日以降に拡大してみてみよう。 羽を落としていないので未交尾の可能性もあるしそもそもケアリの繭が用意できていない。 寄生種は中々最初の準備が大変だ。 |
7月10日 | 昨日、撮影した個体は恐らくアメイロケだろうと思われた。 触角柄節に毛が少なかったからだ。 そして、あっけなく死んでいた。 ・・・・ |
7月11日 | 雨の合間に大阪城にクロヤマアリの寄生バチを見に行った。 しかし、クロヤマアリを集めてもハチが一向に来ない。 他の巣口付近を見たが、ハチの姿は無かった。 ・・・シーズンエンドかな・・・ |
7月12日 | 枚岡。 アシナガアリのオスがいたので飛んではいるようだが、全体的に羽アリがとても少ない。 ケアリ寄生種用にケアリの繭を確保した。 俯瞰した図。 この中にはオスの繭もあるはずなのでどれだけ働きアリが羽化して食われないかにかかっている。 箕面に移ってアメイロケアリを探してみたが全くのボーズ。 枚岡で採集していたクサアリモドキを導入することにした。 |
7月13日 | 昨日、枚岡で採集したクサアリモドキの写真を撮ってみた。 ケアリの羽化したての働きアリと一緒に写した。 例によって羽化したての働きアリがクサアリモドキ女王の周りに集まり始めている。 今のところ、クサアリモドキへの攻撃は見られない。 昨日導入当初は攻撃する個体も見られたが、今日は特に問題なさそう。 ということは、あとは繭からどれだけ働きアリが羽化するか、この一点だ。 |
7月14日 | これは昨年のクサアリモドキだ。 産卵が止まって心配していたが最近少し再開した。 卵がこれだけ。 心許ないことこの上ない。 世話をしているのはクサアリモドキの働きアリだが、コロニー全体の数は少ない。 昨年、繭を大量に用意できなかったことが原因としか言えない・・・ |
7月15日 | オオズアリはどうなったのだろうか。 蛹が出来ている。 そして、待望の働きアリだ。 羽化して間もないようで体色が淡い。 結局この女王は1匹で子供を育てた。 この女王は新女王アリと言う位置づけで良いのだろうか。 |
7月16日 | 分かり辛い写真だが、1枚。 先週末に採集したクサアリモドキ女王の周りにケアリが集まっているのだ。 この段階になれば最初の関門(受け入れられるかどうか)はクリア。 次は産卵を待つばかりだ。 |
7月17日 | クサアリモドキに導入したケアリの繭から少しずつ働きアリが羽化している。 それらはクサアリモドキの女王を隠すように纏わりついていて、クサアリモドキ自体安定感があるのか動きが非常に少なくなった。 オスアリは羽化しているが峠は越えた模様。 しかし、残っている繭も最初採集した数からみたら半数を切ってきた。 ケアリの働きアリは多くて200ほどだろうか。 繭、もう少し欲しいが採れるかどうか・・・ |
7月18日 | 6月21日に採集した寄生済みのクロヤマアリ。 必ずしも全個体寄生されているわけではなく、死骸を解剖しても空手であることも多い。 今日、解剖を行うと久々に出た。 色的に前蛹の段階だろうか。それとも蛹?よく見たら下の方に脚のようなものが見えなくもない気がする。 損傷させてしまっているのが残念だ。 |
7月19日 | 枚岡を歩いてきた。 ケアリとクサアリモドキの飛行日だったようで、両種ともそこそこの数新女王が歩いていた。 枝を折るとケアリの蛹が出たのがあったので吸い取った。 先週ほどの数にはならなかった。 アメイロケアリがいたらなぁと思いつつ歩いて行くと、ヒゲナガアメイロケアリのメスの死骸がアシナガアリに引っ張られていた。 その辺りでアメイロケアリ系を探すことを決意して、ひたすら歩き回った。 その過程でヒラズオオアリと小さなシリアゲアリ、アシナガアリの脱翅メスを拾った。 しかし、肝心のアメイロケアリ系はとうとう見つからなかった。 箕面に転戦も考えたが、時間的に日射がきつくなってくる時間帯。 先週のこともあり、期待薄と判断して帰宅した。 ケアリの蛹は先週採集したクサアリモドキに放り込んだ。 クサアリモドキは今のところ安定してきていて、女王の周りに働きアリが集まるようになってきた。 そこに今日採集したケアリの蛹たちはきっと良き「メイドさん」として働いてくれるだろう。 シリアゲアリは数年前から貴船や箕面で見ていたハリブトではない種類。 中々脱翅メスを採集する機会が無かったが今回久々に一匹だが採集できた。 さて、どうなうことやら・・・ |
7月20日 | 寄生バチが体内に入っているアリの様子を見ると、数匹奇妙な死に方をするものがいる。 まふらふらになっているが、まだ生きている。 私は、これはハチが発育をほぼ完了したと考えているが、アリにとって環境が不適になったとも考えられた。 解剖したいのだが、手持ちが少なくなってきた。 手持ちの財産を少しずつ使いながら生態を解明していきたい。 一昨日、解剖したときに出た物体はハチの体の一部と思われるが幼虫か蛹か前蛹か判別がつかない。 サンプルの数が多ければもう少し続行できたのだが、今は一つ一つが貴重品。 ジレンマだ・・・・ |
7月21日 | 日曜日に採集したヒラズオオアリ。 チューブに上手く潜ってくれた。 ヨツボシオオアリと同じやり方。 ヨツボシのように上手く働きアリを育ててくれたら良いのだが・・・ |
7月22日 | 昨年採集したクサアリモドキ。 卵が無く、心配していたが最近少しずつ産卵してきている。 冷房をかけて、容器が湿った状態なので不鮮明だが卵塊が以前より大きくなっている。今年は大発展は無いだろうが来年に期待。 |
7月23日 | 困った女王アリ。 先月大阪城で採集したクロヤマ。一番育った幼虫でこれ。 大型女王なら採集で1か月したら働きアリの羽化があり、幼若個体の数も多い。 しかし、この小型女王は産卵数が多くなく幼虫の育ちが遅い(恐らく食卵しているのだろう)。 後はこれが羽化さえしてくれたら・・・ |
7月24日 | 枚岡を歩いた。 ケアリの羽アリが数匹、シリアゲアリの有翅メスが1匹、アシナガアリの脱翅メスが数匹、ヒラズオオアリの女王が1匹と言う結果だった。 クロクサも歩いていた。 アシナガ1匹とヒラズを採集した。 そして、今日はもう一つ収穫があった。 ニイニイゼミの新鮮な死骸があったので持ち帰り、餌場に。 そうするとずっとせっついている。 よほど美味しいのだろうか。 |
7月25日 | 今年採集したクサアリモドキが安定してきて、蛹が大分羽化したので今日は引っ越しを行った。 と言っても、ただ餌場にアリを入れて巣部屋にお引越し願うだけ。 後はアリが脱走していないかとか、餌場に留まり続けていないかを見るだけ。 午前にこの作業を行い、夕方には全ての個体が巣部屋に引っ越してくれた。 脱走も今のところなく大人しくしている。 やれやれ、これで後は産卵を開始してくれるのを待つだけになったぞ。 |
7月26日 | 先月採集したオオズアリ。 幼虫。何となく撮影してみたが拡大したら可愛い 先ほどの幼虫のそばに働きアリがやって来た。 色は淡いが恐ろしくすばしっこい。 そろそろ肉餌を与えて行こうかな。 |
7月27日 | 昨夜、寝る前にふとクサアリモドキを見てみると・・・ 卵だ。 女王の腹部はまだ極大に肥大化していない。 土曜日に引っ越しさせてすぐ産卵。 この石膏の足元が気に入ったのだろうか。 昨日から給餌の時に肉餌を入れたがそれも功を奏したのだろうか。 とにかく、スタートできた・・ |
7月28日 | 6月21日に採集した寄生バチに寄生されたクロヤマアリの死骸を解剖した。 数匹解剖してようやく小さな幼虫らしきものが出た。 水が多くて非常に不鮮明になっているが恐らく若い幼虫。 この後、水を吸い取ったらどこかに消えてしまうという大失態。 しかし動きが全くなかった。 体内に色が入っているし、死んだ感じではなかったが、どうだろうか。 このアリのお腹を解剖したとき、もう1つハチ関係だと思うが良く分からないものが出た。 先ほどの個体の左上に当たる所にあった。 恐らくハチ関係の物体だと思うがこれまた先ほどの物と同じく、動き自体が無い。 アリの死骸はまだ複数保存しているがハチは成長しているのだろうか。 予想以上にハチが入っていない率が上がってきた。 ・・・うまく行くのだろうか。 |
7月29日 | 先日採集したケアリ。 給餌したら腹部が膨らんだ。 この状態で子供を育てていく。 初期状態からこんなに膨らむのはケアリならでは。 |
7月30日 | 先月、大阪城で採集したクロヤマアリ。 ようやく蛹になった。 ぶれているが裸蛹。 もう1つ、繭がある。 「大型」女王が子育てをしたら1か月もしないうちに働きアリを育て上げる。 しかし、この「小型」女王は給餌したら腹部は大きくなるが子育てに時間がかかる。 子育てを放棄することも多い。 ・・・こんな状態で初期コロニーを立ち上げているのだろうか。 出戻りか近くの巣に入りこんでいるのではないかと思うのだが、確証が持てない。 |
7月31日 | クサアリモドキは完全に受け入れられてケアリからこまめな給餌を受けている。 今回は昨年と異なり働きアリの数が多いので少し安定感がある。 女王の突然死と言う事態さえなければ安定して来年以降増えてくれそう。 今のところ、不安要素がほぼ無く安心してみていられる。 ルーペ越しにこういう世界を見ているのは、楽しい。 |