2020年6月の観察日記

6月1日 最近、私を悩ませているもの。

これは、「小型」クロヤマアリコロニーの巣内にあるもの。
肉餌の食べ残しにカビが生えているのだ。
先週、これを除去した。
しかし、1週間でこれだ。
肉餌を食べてくれるのは嬉しい。
しかし、食べ残しを巣内に残してこれは良くない。
蓋をあけて取ればよいのだが、巣部屋はここだけ。
ということは、開けたら・・・・
巣部屋、増設しようかな。
6月2日 この前の金曜日、私の部屋に珍客が2匹訪れた。

さて、これオオハリアリか、ナカスジハリアリかどっちだろう。
細かく調べるには標本を作らなくてはならない。
どちらだろう。
6月3日 ムネアカオオアリで働きアリが羽化したが・・・

やけに色が淡い。
羽化直後の個体ではない。
数日経過してこれだ。
過去にこの手の個体は何度か紹介したがなぜこんな風になるのかが分からない。
・・・何故?
6月4日 ハヤシクロヤマアリの餌場なのだが・・・

ゴミを出している。
これは、掃除する側からすると非常にありがたい。
巣部屋内にため込むよりずっとましだからだ。 
6月5日 1日に紹介したゴミの塊。
巣部屋を少し乾燥気味にしたらほぐれた。
巣部屋を乾燥させた効果だが、給餌時に水分を多めに与えておかないと一気に乾燥死まっしぐらだから神経を使う。
粘性の高い餌を餌場に置いておけばそれにゴミを付けて掃除しやすくなりはしないかと思ったりしている。
6月6日   クサアリモドキには心配事がある。
春先に産んだ卵はほぼすべて孵化したようで繭も少しずつだが増えているのだが、卵が無いのだ。
私はクサアリは産卵をよくする時期とそうでもない時期とがあるのではないかと思っているが、様子を見ているとどうも働きアリの労働が幼虫に集中し過ぎているためにこう言うことになっているようにも思える。
取りあえず、繭が羽化して幼虫がある程度育ったら・・・とは思うが、最初に用意できたケアリの数が少ないために本格的に発展するとしたら来年以降だと思っている。 
6月7日 大阪城にクロヤマアリを見に出かけた。

芋虫の死骸を運ぶクロヤマアリ。
やはり芋虫は大人気の餌だ。この画面の上にクロヤマアリの寄生バチが正面を向いてホバリングしているがお分かりいただけるだろうか。

そして、寄生バチの全体像。
産卵もしていたが今年は全然産卵の瞬間を撮影できない。
1時間ほど巣口で粘ってみたが実際に産卵した働きアリは20匹もいない。
先週も思ったが、あまり時間効率が良いとは思えないのだが、気のせいだろうか。 
6月8日 クロオオアリの巣内。

繭の残骸が捨てられている。
クロオオアリは羽化するときに体色が濃いのでどの個体が新しく羽化したものか分からないが、賑やかになってきている。

働きアリの様子。
少しずつだが卵も増えている。
6月9日 ハヤシクロヤマアリの餌場を写した。

餌場にゼリーを入れて2日でこうなる。
暑くなったのでゼリーが干からびるスピードも早いと思うが、アリたちがゼリーのエキスを吸い取っているとも思える。
これだけ食べてくれるのは見ていて楽しい。
6月10日 これから暑い時期に入る。
今年は猛暑が予想されている。
恒温機に入らない種は比較的暑さに強い普通種が多めにしているが、少し心配している。
6月11日  げんなりしてしまった。
ふと、気が付くと稼働させていない恒温機内をアリが歩いている。
ウメマツオオアリだ。
タッパーに穴をあけたのだ。
ウメマツオオアリは時々こうやってタッパーを噛み切って穴をあける。
まだ脱走初期だったようでそれほど脱走者の数は多くなく一通り回収できたが・・
アリ飼育は楽しいが、脱走だけはされると少しげんなりしてしまう・・・ 
6月12日  午後、大阪城に出かけた。
撮影機材は荷物になるので持って行かなかったので備忘録代わりに記録していくことをご理解いただきたい。
大阪城に到着したのは午後2時頃だった。
午前に雨が降る場面があって地面は湿りがちであまり期待していなかった。
どちらかと言うと寄生バチの観察メインだった。
歩いてしばらくしたらクロヤマアリの有翅メスを見つけた。
大阪城のクロヤマアリは不思議と有翅メスを見つける確率が高い気がする。
あまり脱翅メスを見ない。
サンプルとして採集。
その後、少し離れた場所でもう1個体クロヤマアリを見つけた。
そして、そのすぐ近くでまさかのオオズアリを見つけた。
飛んだのだろうか。
少し腹部が痩せているのが気になるが・・・
メインとしていた寄生バチはこの日、全く駄目だった。
アリを集めてみてもハチの姿は無かった。
しかし、例年の観察結果からまだシーズンエンドには早いのでたまたま何かがハチの出現条件に合っていなかったのだろうと判断した。
しばらく観察したが新しく羽アリを見ることもなく、ハチもいなさそうだったので撤収した。
ハチは見られなかったが新女王に遭遇できたので良しとしよう。 
6月13日  5月30日に採集したElasmosoma trichopygidium に寄生されたクロヤマアリが2匹、死んでいたので解剖してみた。
腹部を割いてみると・・・

ん?育ったハチの幼虫だろうか。ウジのようなものが出てきた。
この画像では大きさの比較対象になる物が無いので、もう1個体は腹部の残骸を入れてみながら撮影してみた。

これ、ハチの幼虫ではないだろうか。
腹部よりわずかに小さいレベルの大きさなのだが、成虫の大きさを考えると育っている幼虫ではないかと思うのだが、いかがだろうか。
ご意見お待ちしております・・
6月14日 昨日、クロヤマアリの寄生バチの画像を載せたが解剖もしていた。
クロヤマアリFormica japonicaの腹部にいたElasmosoma trichopygidiumの幼虫。
Twitterには昨日載せていたもの。変換ソフトの都合上ロゴが出るのはご勘弁願いたい。アリの死骸は大きさ比較のために置いたもの。
アリの腹部を割くと出てきた。
ホストのクロヤマアリの採集日は5月30日。
およそ2週間でここまで成長したことになる。
昨日載せた画像のアリは死んでいたが、この動画のホストのアリはまだ生存していた。アリの死が寄生バチによるものか、他の要因なのかは分からない。
しかし、2週間でこれだけ育った幼虫をお腹に抱えていることはホストに相当負担がかかっているのではないだろうか。
ところで、今日また寄生バチに寄生されたクロヤマアリを大阪城で採集できた。
10匹にも満たないが大まかな生育期間が分かっただけで、今後の参考にしたい。
ゆくゆくは蛹やうまく行けば羽化・・なんてことを夢想したりもする。 
6月15日 金曜日に採集したクロヤマアリの新女王アリ。

羽を落としている。いつもながら、この瞬間は至福の時だと思う(交尾済みだと言えるので)

その新女王アリ。
これはゼリーを給餌してもこの腹部の痩せ具合なのだ。
これで子供を養育できるだけの栄養を溜め込んでいるとは思えないのだが・・? 
6月16日 昨日の夜、14日に採集したクロヤマアリの働きアリが2匹死んでいたので解剖した。1匹は何も入っていなかったが、もう1匹には・・
クロヤマアリから出したElasmosoma trichopygidiumの幼虫
ハチの幼虫が入っていた。
流石に1日でここまで成長するとは思えないので、以前に産卵されていたと考えた。
まだ生きていて体内が脈動している。
少し分かり辛いかもしれないが、今回はホストのクロヤマアリを画面左に配置してみた。こうやってみるとアリの大きさに対して結構大きめですね。 
6月17日 どうしてもここがTwitterの後追いになってしまうが昨夜、6月7日に採集したElasmosoma trichopygidium に産卵されたクロヤマアリを解剖した。

産卵後9日ではまだ終齢幼虫には至っていない模様。
しかし、一連のクロヤマアリ寄生バチの様子を顕微鏡で見て思う。
大学・大学院で寄生バチやってて良かった、と。
6月18日 以前から、クロヤマアリの女王には「大型」「小型」個体がいるのではないかと言う話をしていた。
ただ、今まで飼育の方に注力していて標本化していなかったので、今回は標本にしてみた(大雑把だが)。

まず、「小型」女王。一度だけ給餌している。体長はおよそ8ミリほど。腹部が小さく、腹部の艶もややくすんでいる。

「大型」女王。体長およそ10ミリ。
腹部がつやつやして大きい。
行動的にも違いがあり、「小型」女王は落ち着きが無く、子育てが下手な個体が多い(卵を産みっぱなし、食卵等々)
「大型」女王は安定感がある状態で働きアリを育て上げることが多い。「小型」個体ほど神経質ではない。
ちなみに、「小型」女王は大阪市内で、「大型」女王は吹田市内で採集した。
これ、2つとも「クロヤマアリ」なんだろうか。ご意見頂けると幸いである。
6月19日 先週の金曜日に採集したオオズアリ。

女王1匹で孤軍奮闘している。

卵。産み散らかしているように見えるかもしれないが、撮影時に驚かせたためで普段はきちんとまとめている。
ゼリーを給餌している。 
6月20日  大阪城でクロヤマアリと寄生バチの観察。
寄生バチが産卵したアリを10匹ほど採集できた。
夜、14日に採集した2匹アリを解剖したが何も出なかった。未寄生個体がどうしても紛れ込んでしまっているのでそれなのだろうか。

そして、今日は珍しく羽を落としている状態のメスアリを採集できた。
画像の上の方に羽の欠片が見えるがこれはこの個体のものではなく18日の紹介した「小型」クロヤマアリのもの。
容器に余裕が無く使いまわしてしまった。
こうやってみるとやっぱり大きいのと違うんですよねぇ・・・
6月21日 今日もクロヤマアリの寄生バチの観察に出かけた。
写真や映像は無い。理由は後述。
到着したのは12時辺りだった。
巣口を見ると、ハチが飛んでいる。
昆虫の死骸を与えようと思ったが、見つからなかったのでカルパスにした。
それを巣口近くに置くと、すぐにクロヤマアリが集まる。
今日のハチは「やる気」だった。
ホバリングの期間がいつもほど長くはなく割と産卵してくれた。
それを回収していく。
合計40匹ほどのクロヤマアリを1時間半ほどで採集出来た。
さて、それだけなら問題なかったのだが・・
カルパスを置いて40分ほどした辺りからアミメアリが集まり始めた。
結局、クロヤマアリは追い出されカルパスはアミメアリに占領された。
しかし、その後30分ほどは寄生バチはまだクロヤマアリの巣口付近を飛んでおり、少し離れた別の巣口付近で産卵していたのでそれを回収も出来た(回収の効率は大幅に下がったが)。
しかし、その後カルパスにケアリの大群が乱入。
クロヤマアリ、アミメアリ、ケアリが入り乱れる大混戦になってしまった。
カルパスを置いていたのがクロヤマアリの巣口近くでクロヤマアリは外敵の防戦一方。
採集どころではなくなった。
写真や映像が無いのはそれもあるのだが、長くなったので理由は明日書くことにする。
明日へ続く。
6月22日 クロヤマアリの寄生バチを今年は殆ど撮影しなかった理由の続き。
5月30日の観察時、カメラを持って行っていたし寄生バチの撮影も試みた。
しかし、撮影は非常に難しい上に撮影しているとその間採集が出来ない。
そこで悩んだ上に撮影を切り捨てて寄生バチに寄生されたアリの採集に集中することにした
寄生の瞬間は昨年までにそこそこ撮影できたので今年は切り捨てた次第である 。
お陰で、例年になく寄生されたと思われるアリを採集できた。
毎日フィールドに通えればもっとそう言うアリを採集できたのかもしれないが、平日は無理・・
6月23日 5月30日に採集したクロヤマアリ寄生バチに寄生されていたクロヤマアリが一昨日、死んだので腹部を保存していたが、今日解剖してみた。

うん、だいぶ育っている。
幼虫は蛹になる前の状態なのか死んでいるのか分からないが全く動きが無かった。
黄色いし、干からびた感じは無いので前蛹状態と信じたい。 
6月24日 暑くなる予報だったので、恒温機をつけた。
実際、恒温機は例年もう少し後の出番なのだが、今年はシロアリが入っていてそのシロアリが最近調子が良くないように見えるのでせめてもの・・・と言う意味がある。
実際、シロアリが何故調子が上がらないのかは良く分からない。 
6月25日 クサアリモドキ。

女王。

働きアリに纏わりつかれている。

小さな幼虫。

羽化したての働きアリ。
一見、順調そうに見えるが実はそうでは無い。
女王の産卵が止まっているのだ。
若い幼虫たちはゴールデンウィーク頃の卵だと思う。
春先は順調だったのに、この体たらく。
・・・女王に栄養が行っていないのだろうか。
6月26日 オオズアリにした。

孵化した。
オオズアリの新女王からの育成は初めてだがこの女王は優秀のようで1匹ながら子だくさん、幼虫もちゃんと孵化しているという状態。
どうなるのだろうか。 
6月27日   先週、大阪城で採集したクロヤマアリは・・・

羽が1枚残ったまま卵を産み始めた。
お腹は膨らんでいるが給餌したため。
産卵数もそれほど多くない。
典型的な「小型」女王の特徴だ。
「大型」女王はもっと産卵数も多い。
・・・何なのだろう。
6月28日  大阪城でクロヤマアリ寄生バチの観察。
トータル20匹ほどの寄生されたと思われるクロヤマアリを採集した。
途中、10匹ほど集めた所で容器をひっくり返してしまい採集したアリを逃がしてしまうという事故が無ければ良かったがその後寄生バチが攻撃したアリを採集できたのでまぁ良しとした。
例年、この時期にはハチが見られなくなっているのだがそれは単純にアリの集め方が分からなかっただけで意外とハチの活動時期は長いのかもしれない。 
6月29日 タッパー飼育のウメマツオオアリがまた穴をあけた。
穴をその都度グルーガンで塞いでいるが、やはり賢いのかもしれない。
最初数日は何事もないように振舞うが、一旦スイッチが入るとその個所を集中的に攻めてくる。
ずっと前、確か2010か2011頃にヨツボシオオアリでこれをやられたことがあったが樹上種はやはり齧る力が強いと思う。
侮れない・・・ 
6月30日 昨年、箕面公園で採集したケアリ。すこぶる順調だ。

働きアリを取り上げてみた。
野外のものに比べると小さい働きアリだが勢いが出てきた気がする。
ケアリは当たり外れが大きい気がする。
大抵は新女王は働きアリを羽化させてくれるがそこから伸びるコロニーが少ない気がする。
飼育下手と言われたらそれまでですが・・・ 

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