2015年7月の観察日記

7月1日 ハヤシクロヤマアリの働きアリが集まっていた。

何を取り巻いているのかと言うと、女王(の亡き骸)。
女王アリが崩御召されると働きアリが取り巻いてしきりに小突く。
しかし、当然ながら女王陛下はひっくり返ったまま、目覚めて動き回ることは無いのであった・・。
合掌。
7月2日 少し趣向を変えて。

これは、ソラマメの種子である。
確か一昨年か昨年の6月初めに購入した。
一応、研究用に使うもので食用の種子ではないと言うことだが、これは単に夏の時期はソラマメの播種時期ではないらしく、どこを探してもこれ以外ソラマメの種子が見つからなかったのだ。
これを発芽させ、アブラムシを寄生させ、それを増やし、ある程度増やした所で餌場が一番大きなクサアリモドキに与えて野外のように「アブラムシに来るアリ」の図を観察したかった。
アブラムシの種類はカラスノエンドウに寄生するエンドウヒゲナガアブラムシにしようと考えてもいた。
しかし、とん挫した。 
ソラマメを餌場に入れた後の事だ。
ソラマメが大きければアブラムシは多く寄生できるが餌場の壁面にもたれてしまうとアリの大脱走を招きかねない。
かと言って、小さいとアブラムシの数が少なく、すぐにアリが間引いてしまうのではと考えたのだ。
そんなわけで、現状「塩漬け」になっているのだ。
7月3日 夕方、会社の近くでアメイロケアリの飛行があったようで、有翅メスと脱翅メス1匹ずつを見かけた。
一瞬採集しようかと考えた(特に脱翅メスを見たとき)。
しかし、考えた。
ホストの繭はどうするの?
枚岡では繭が見つかるかもしれないが、7月中旬くらいまでは小さな繭を採集してもオスの羽蟻ばかりが生まれてくるだろう。
それなら、飼育しているケアリから繭を失敬して・・。
しかし、それでコロニーのリズムがおかしくなったら嫌だ。
そもそも、枚岡のケアリの繭のありそうな場所を全くチェックしていない。
アメイロケアリはリベンジしたいのだが・・。 
7月4日 昨日、アメイロケアリを見たと言うことで、今日は今朝から枚岡を散策、午後に大阪城で寄生蜂がいれば撮影を試み、夜には箕面で灯火を見に行く計画を立てた。
しかし、朝、出発しようとしていると雨が降り出した。
全くやむ気配もなく、一日中雨。
計画は来週に延期になった・・。 
7月5日  アメイロアリは産卵を開始したと書いたが、実はあれから進展が無い。
卵はある。
しかし、孵化が見られない。
どうも、産んでは食べると言うサイクルに入っているのではないかと疑っている。
そうでなければ、産卵確認から3週間経過して幼虫が見られないと言うことは考えにくいからだ。
蛹を取ってこれたら状況は変わりそうに思うが、アメイロアリのコロニーは石の下のような小さな隙間にあることから少し探しにくいという印象があり、難航が予想される・・。
7月6日 クロオオアリにハニーワームを与えてみた。

大きなハニーワームであったが、一瞬で制圧してしまった。

卵塊。他の種類と見比べると、卵ですら大きく見える。
7月7日 クサアリモドキ。

働きアリ。女王が奥に見える。女王の腹部はまた肥大化してきている。

働きアリと繭。羽化も毎日のように見られるが、少し肉餌を絞り気味なので、無茶な増え方はしていない。
7月8日 今年の夏は始まったばかり。
それでも、猛暑を感じさせる日はまだない。
そのため、今年、2015年になって恒温機を稼働させた日数は0日である。
完全に外気温と同じで飼育している。
恒温機を入手したのが2007年だった。
それ以来、毎年夏前には加温、冷却どちらかで稼働させていたが今年はある意味「肩の力が抜けた」飼い方ができているのかもしれない。 
7月9日 朝はそうでもなかったが、夕方以降とても蒸し暑さを感じる「アツい」天気だ。
会社の近くで夕方アメイロケアリを見つけた。
1匹は有翅メスでもう1匹は脱翅していた。
もう少し探せば見つかるかと思い、忍ばせているフィルムケースを出し、探してみたがその2匹以外は見かけなかった。
現状、繭の目処が立っていない。
この週末、枚岡で繭のある場所を探してみるつもりではいるので、見つかればアメイロケリベンジも果たせるかな?
ただ、枚岡は例年7月後半にならないと小さな繭を採集してもオスの羽アリばかりが羽化してくるので、最初からどばっとと言う訳にも行かないだろうね・・。
とにかく、この週末天気が持てば探索予定。 
7月11日 天気が良く、午前から枚岡に出かけた。

到着後、すぐに神社境内でヒラズオオアリの女王アリが見つかった。

クロクサアリ。1匹だけ見かけた。

もう1枚。 

セミの幼虫。目が黒くないので、羽化間近ではなく何かの間違いで地表に迷い出てしまったのだろう。

オトシブミと思われる昆虫がいたのだが、撮影しようとすると背中を見せてくれない姿勢になってしまった。

クサアリモドキの有翅メスが葉の上にいた。
クサアリモドキは「当たり」の日だったようで、かなりの数見かけた。

アミメアリが行列していた。

ハヤシクロヤマアリが羽アリの繭を運んでいた。

苔をアップにした。

クサアリモドキの新女王。上とは別の個体。

クサアリモドキは本当に良く見かけた。

有翅メスが落としたと思われる羽。
多くの個体が同じような場所で羽を落とすと、沢山の落とされた羽が日光を反射してキラキラ見える事がある。

ケアリもクサアリモドキほどではないが有翅メスや脱翅メスが見られた。

公園事務所近くのトイレの壁にアシナガアリのオスがいた。

その近くでシリアゲアリの有翅メスがいた。
シリアゲアリと言うと秋のイメージが強いが、夏に飛ぶ個体もいるのだ。

日向で、ノコギリカミキリが死んでいた。

オスは見つかるが中々メスアリが見つからないなぁと思っていたが、ようやく見つけた。
結局3個体確保した。

午後から、大阪城に出かけた。
ハチの様子とクロヤマアリの羽アリがまだ残っているか様子を見たかったのだ。
結果から書くと、両方とも惨敗だった。
以前、羽アリの繭を見つけた石をめくってみたが、もう既にその場所自体が廃棄に近い状態で働きアリが数匹出ただけ。
寄生蜂は姿も見かけることは無かった。

さらに、夕方から箕面に出かけた。
ヒグラシの声が聞こえるなか滝までの道を上がり、日没を待って駅までの道を歩く。
しかし、滝付近でアメイロケアリの有翅メスが少し見られた以外はごく少数何かのオスアリが見られた以外は惨敗。
周囲の状況を見る限り、ごく最近規模の大きな飛行が見られたようだが、今日ではなかったようだった。
枚岡は良かったが、後は少し物足りない感じになってしまった。
7月12日 今日も午前に枚岡を歩いてきた。
しかし、昨日と違い、見かける羽アリの数が極端に少ない。
昨日の箕面の様子からある程度想像していたが、ここまで極端に数が変わるとは思っていなかったのだ。

そんな中、ほとんど唯一の見せ場。
ハヤシクロヤマアリのオスアリだ。
公園事務所付近のトイレの手すりにとまっていた。 
7月13日  アシナガアリの新女王を採集したこと、週末から急に暑くなったと言う2つの要因により、恒温機を稼働させた。
今年も設定温度は28℃にしている。
これを稼働させると、中のアリたちが秋と勘違いしてしまう危険はあると思うのだが、酷暑で全滅させるよりは・・と思っているのだ・・。
7月14日  ヒラズオオアリは3匹採集した。
そのうち1匹は有翅だが、2匹は羽を落とした状態だ。
収容して3日。
産卵しない。
タッパーが広すぎて落ち着かないのだろうか。
そう思い、今日1つに細いチューブを曲げた者を入れてみた。
女王がぎりぎりで入るくらいの径のものだ。
どうなるかは分からないが、上手く行くと良いなぁ。 
7月15日 アシナガアリの産卵は始まっている。
まだ数個だが3匹とも産卵開始だ。
あとは、この卵を食われずに働きアリが羽化してくれればとりあえず一番不安定な状況は脱する。
これから・・だね。 
7月16日  ここ2週間ほど、ハニーワームが大繁殖して沢山の幼虫が得られている。
そこで、コオロギも、ミールワームも中止してこればかり与えているが見た所やはりハニーワームはかなり良い餌のようでクサアリモドキとクロオオアリは明らかに勢いが出てきた。
やはり、芋虫系の餌は消費してくれればかなり良い餌だなぁと思った。 
7月17日 ヒラズオオアリは4匹採集したが2匹が死んでいた。
残り2匹もまだ産卵は見られない。
落ち着きがないようには見えないのが救いだが、厳しいかもしれない・・。
7月18日 明け方まで降り続いた雨もやみ、夕方以降は天気も安定するので「アツい」と思い、夕方から箕面。
到着してすぐ、「現実」を思い知らされた。

これだ。

増水すさまじく、

濁流。ただ、濁流。
山の斜面からも水が浸み出し、滝に至っては水量が凄まじすぎて日没まで滝そばで待機することも出来なかった(離れた所からでも水しぶきでシャワー状態になった)。
灯りを見たが、来る虫も極めて少なく、今日は(中止になったらしいが)滝までの道をろうそくで照らすイベントが予定されていたためか日没後も次々と人が上ってくる。
お宝ホイホイも寂しいなんてものじゃないほどの成績。
早々に退散した。
7月19日  関西集会当日。明け方まで雨が残り、集合時間を1時間遅らせての開催になった。
昨日の箕面の件があり、それほど期待できないかと思っていたのだが・・

神社の境内で早速ケアリの脱翅メスが見つかり、盛り上がった。 

少し歩くと、ケアリの脱翅メスがアシナガアリに襲われていた。
この光景が見られる日はケアリの脱翅メスが多く見られる日であると私は認識している。
そして、実際今日の会ではケアリの脱翅メスが多く見つかった。

アシナガアリの脱翅メス。これもケアリほどではないが見つかった。今日は「祭りの日」だったのだ。アシナガアリの新女王は3匹また採集した。

枚岡に通い始めて長くなるが、このアカスジカメムシは初めて見た。

樹液にクロスズメバチがやってきた。

樹液はそこかしこの木から出ていたが、虫が集まっている気は多くなかった。
そんな中、カナブンやハナムグリが多く集まっている木が1本だけあった。
写真はカナブン。この後、kuroyagiさんが木を蹴ってみたがカナブンが飛び立った以外は面白い物は落ちて来なかった。

展望台でお昼。日が陰り、ヒグラシが鳴いていた。私がおにぎりのマグロペーストが入った部分を落とすとすぐにトビイロシワアリが集まって来た。

kuroyagiさんがドライマンゴーを落とすと、すぐにクロヤマアリがやってきた。

クロオオアリも参戦してきた。

アメイロアリ。少数ながら、トビイロシワアリやクロオオアリに攻撃されることなくおにぎりやマンゴーを漁っていた。

kuroyagiさんが持ってきた「カリカリ梅」はあまり評判が良くないようだったが、クロヤマアリやアメイロアリが少し舐めていた。

トビイロシワアリがマンゴーを席巻しそうだった。
それを見て、少し隣にいたご婦人と話をしていて、目を戻すとどこからか出現したアミメアリがマンゴーを制圧していた。
クロオオアリが怒りにまかせてトビイロシワアリの働きアリを噛み砕いていた。
クロヤマアリは俊足を生かして時折なめるようにマグロおにぎりやマンゴーを舐めていたが多数派にはならなかった。

このクロオオアリの脚にはトビイロシワアリがしっかり食いついていた。
このトビイロシワアリはすでにこのクロオオアリによって殺されているのだが、クロオオアリはこれが気になるらしくしきりにこの頭部を外そうと身をよじっているように見えた、

山を降りていると、笹にアブラムシが寄生していて、そこにケアリが来ていた。
そのケアリの通り道にクサアリモドキの脱翅メスがいたのだが、このメスアリ、ケアリの働きアリに「されるがまま」に身体チェックをさせていた。

何かのキノコにショウジョウバエが集まっていた。

オオカマキリの幼虫。今日は今までになく良く見かけた。

神社の灯篭にヒラズオオアリがいた。

今日の会は大成功だった。
アリに限らず色々な昆虫を観察でき、非常に楽しい時間を過ごせた。
kuroyagiさん、有難うございました。
7月20日 朝から箕面に出かけた。

アギトアリの生息地を訪れると、少数の働きアリが見られた。

キマワリ。

ヨツボシケシキスイ?

クワガタのメス。ミヤマクワガタだろうか?

箕面ではケアリ脱翅メスを1匹とハリブトシリアゲアリの脱翅メスを数匹採集した。
箕面駅に戻ってくると、午前9時ちょうどだった。
あまりにも早いので枚岡に転戦を決意。
枚岡では昨日あまり見かけなかったクサアリモドキをよく見かけた。
それでもアシナガアリの脱翅メスを2匹採集したのだった。
枚岡では特にこれと言って見せ場無しと思ったので撮影しなかった。
7月21日 7月11日に採集したアシナガアリは産卵を始めている。

恒温機が我が家にやって来てからようやく働きアリが生産できるようになった。
真夏に飛行するのに暑さに弱いとは最初のころ全く思わなかったのだ。
9月頃の働きアリの羽化を見込んでいる。
7月22日 この時期、暑さ対策のために常温のクサアリモドキに氷枕を、恒温機は稼働させている。そうすると、ある問題が発生する。
結露だ。
恒温機のものは蓋にうっすらと結露が張り付き、中が見えにくくなり、氷枕を乗せたものは大きな結露が雫になって蓋内部に常駐する。
時折働きアリがそれに取り込まれて死んでいると言うこともあるだろう。
クサアリモドキはホストのケアリが脱走するので容器の蓋をグルーガンで接着しており、開けるのが非常に困難な造りにしてしまった。
蓋に空気入れ替え用の穴を2か所開けているが効果は今一つ・・。 
7月23日 3年前に採集したトゲアリは最近衰勢著しかったが、とうとうこの日が来た。

女王陛下、崩御・・。
思えば、働きアリを生産すべき一昨年にクロオオアリのオスアリしか生産せず、その間にホストのクロオオアリが減ってしまったのが痛かった。
合掌。 
7月24日 先月に淀川河川敷で採集したトビイロシワアリのメスアリが死んでいた。
どうも調子に乗り切れていない感じがして心配していたが、ダメだった。
合掌。
7月25日  ヒラズオオアリは相変わらずだ。
産卵しない。
チューブを入れたがチューブに籠らず。
・・・難物かもしれない・・。 
7月26日  枚岡を歩いた。
しかし、ケアリもアシナガアリも終わっていたようで姿を見かける事が無かった。
クサアリモドキの脱翅メスを3匹とウメマツオオアリかイトウオオアリの脱翅メスを1匹見かけただけ。
アシナガアリはオスアリすら見かけなかった。
枚岡では今年のアシナガアリとケアリは終わったのかもしれない・・。 
7月27日 先週の月曜日、箕面で1匹だけ採集したケアリの脱翅メスである。

見慣れた恐らくトビイロケアリより明らかに茶色っぽい。
今一つ、これの正体が良く分かっていないがとりあえず飼育している。
腹部先端が少し陥没しているが産卵には支障ないようで卵が多く見られるようになっている。 
7月28日 アシナガアリの女王アリ。

腹部は意外と毛が多く生えているのが見える。
今のところ、卵だけ。孵化はまだしていない。 
7月29日 枚岡と箕面でハリブトシリアゲアリのメスアリを採集している。

女王の陰に隠れているが、何れの個体も産卵を開始している。
今のところ順調に見える。
この種類、過去に何度か飼育したことはあるがいつも失敗していた。
今回は成功させたい。 
7月30日 真夏だ。恒温機を稼働させているが、それについて少し考えてみたい。
スペースの関係で、ケアリ、クロオオアリ、ウメマツオオアリ、クサアリモドキ2コロニーを常温で飼育している。
クサアリモドキのみ、日中に氷枕を乗せているが後は真夏の温度そのままで飼育している。
常温のものでも、暑さのために狂走現象が起きればすぐに恒温機行きである。
ところが、恒温機に入れようかと思わせるものは無くむしろ恒温機のものより活性が高い。気温が高いのでと言われるとそれまでだが、高温による害が今のところ皆無。
それを見て思う。
氷枕である程度対応できるんじゃないか、と。
恒温機を否定はしない。
アシナガアリは恒温機がないと、恐らく新女王からの育成は不可能だろう。
ムネアカオオアリもクロオオアリよりやや暑さに弱い印象があり、これも恒温機。
チクシトゲアリは以前暑さで狂走現象を見たので恒温機組からはどうも外しにくい。
しかし、それ以外だと夏の暑さも悪くないんじゃないかと思うようになってきている。
この日記の初期の頃の私がこういうことを見ると、どう思うだろう・・。 
7月31日 この1カ月、アリたちは「ハニーワーム三昧」だった。
ハニーワームが大量に孵化し、幼虫が沢山生まれていた。
そして、とうとう繁殖、維持に残していたもの以外は使いきった。
またコオロギとミールワームの日々になるが、こういうアバウトさは案外アリたちには「味の変化」をつける事が出来ていて結果的に良いんじゃないかと自分に納得させている。 

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