2014年9月の観察日記

9月1日 蟻研から帰ってきて、全てのコロニーに給餌をしつつ、異常が無いか見て回った。
幸いに異常のあるコロニーは無かった。
こう言う給餌に間を開ける時には冬場にも時々与えるゼリーが実に良い。
食べながら水分供給が出来るという点において重宝する。
ま、普段はメイプルの水割りが管理しやすくて良いのですけどね。
9月2日 今年は秋が大変早い。
昨日は最高気温が25℃辺りまでしか上がらなかったらしい。
恒温機は28℃設定にしている。
と言うことは、昨日のような気温だと暖房モードになってしまう。
冬場はきちんと冬眠してもらいたいし、今さら加温するメリットもあまりないので、恒温機の電源を落とした。
後は気温が下がってアリたちの活性が低くなって越冬モードに入ると今年の飼育活動も終わりということになる。
まぁ、まだ2カ月ほど先のことだが。 
9月3日 ケアリも勢いは落ちてきているが、卵がまだある。

卵塊その1。

卵塊その2。

女王と卵塊その3。
ミールワームに蛹がある時はそのまま放り込んで狩りをさせることもあるが、基本はコオロギを殺して与える。
今シーズンはコオロギをよく食べてくれ、多いに増勢してくれた。
9月4日 秋が早いと言っても、まだ気温は高い。
そのため、餌用のミールワームで蛹になるものがいる。
それをコオロギの代用にならないかと考え、普段コオロギを与えているものに入れて様子を見た。
チクシトゲアリはコオロギのように集まっている所は見なかったがいつの間にか蛹が姿を消しており、食べたらしい。
クサアリモドキはすぐに働きアリが集まって噛みつき始めた。
巣部屋の中に表皮が転がっていたので好評っぽい。
ケアリも絶賛。
入れてすぐに働きアリが大挙して集まる。
これ、コオロギのように殺す手間もなく、ミールワーム幼虫のように刻むこともなく、アリたちの狩猟本能をある意味満足させることが出来るかもしれないと考えると、かなり面白い展開なのかもしれない。 
9月5日 クロヤマアリは3コロニー飼育しているのだが、どれも働きアリが1ケタしかいない。
小さなタッパーで飼育しているので思ったよりも環境が合わなかったのかもしれない。
まだ、蛹が数個あるものの今年の生産は恐らく終了になるので、冬の間に少し容器を考えた方が良いのかもしれない。
それにしても、クロヤマアリの女王を採集した時にメイドさんとして繭を数個取ってくることが出来て本当に良かった。
あれが無ければ3コロニーとも立ちあがっていたかどうか・・ 
9月6日  ケブカツヤオオアリは女王は元気なのを確認しているが今年は全く産卵しなかった。
肉餌を食べてくれるのに、産卵しないとはさっぱり分からない。
せめて来年こそは産卵してほしいと切に願うのだが、もし野外でこんなことが起こるとどうなるのだろうか。コロニーが消滅してしまうのではないかとも思う(野外コロニーでは働きアリを生産しないと事故や外敵等でどんどん死ぬだろうし)。
このコロニーを見ていると、卵幼虫蛹が全くいなくなると大半の働きアリは全然働かないなぁと思う。
賑やかになるのは給餌した直後だけ。
・・寂しい。 
9月7日 常温飼育のクサアリモドキも秋モードになったとはいえ、まだ卵はある。

これよりやや小さな卵塊がもう1つ。

幼虫を育てる「いつもの光景」もまだまだ健在。

育った幼虫に石膏屑?をかけて繭になる手助けをしている。
ミールワーム、コオロギ、ハニーワームの3種類の餌を餌の在庫等と相談しながら与えている。
9月8日 キイロシリアゲアリのコロニー。

巣部屋内のゴミ捨て場。
ここだけ色が黒い。トイレになっているのかもしれない。
9月9日  ケアリ。

羽化したての働きアリに先輩の働きアリが口移しで栄養を与えている。
9月10日 クロナガアリ。 

卵、幼虫、前蛹、蛹、成虫とそろっていた。

一見、粟の実を貯め込んでいるような図だが実際は餌場に入れた粟の実の周りに陣取った働きアリを写した。
どうも餌場が餌部屋として使われているのではないかと言う気もする。
9月11日 キイロシリアゲアリを見ていて思った。

働きアリにも大きさの差があるんだなぁ、と。
恐らく幼虫時代の栄養によるものだろう。
9月12日 トゲアリ。羽化ラッシュが7月にあったがそれ以降が続かなかった。

幼虫は大体この大きさ。このまま越冬するのだろうか。

1匹だけ育った幼虫がいた。これは今年中に羽化する・・かな?
9月13日 昨年、箕面でアギトアリやクサオオアリ、ケアリの飛行を観察した。
夕方から、夜戦に繰り出した。

午後6時頃、箕面の滝に到着。ここで日が暮れるのを待った。
日没後、暫くした午後7時頃から探索開始。 

自販機にガが来ていた。
しかし、全体的に恐ろしく低調。羽虫の類も数が少ない。

ウマオイかな?

コオロギと思えるが、やけに大きかった。

アリ、何もいないなぁと思いながら歩いていると、不意に出現したのがアギトアリ。
この有翅メスは1匹だけだったが、やっぱり飛んでいた。
暗い中、懐中電灯片手で撮影するのは難しかった。

自販機に来ていたアギトアリのオス。
最初ハチとの区別がつかず、覗きこんで腹柄節があるのを見てようやくアギトアリだと確信できた。

今日の箕面はこれ以外は見せ場なし。惨敗に近かった。
予想以上に空気が乾燥していたからかもしれない。
9月14日  ヤマヨツボシオオアリである。

一見、問題なさそうに見えるが・・

小さな幼虫ばかり。育ったものは見られなくなった。
越冬モードに入ったならそれでいいのだが、例の「症候群」が出たとしたら・・
うーーーむ・・
9月15日 アメイロケアリもすっかり動きが少なくなってきた。

幼虫は成長している感じではない。
体内に色が入っているので肉餌を食べているようだが、あまり成長が見られない。
来年だろうね。 
9月16日 ケブカツヤオオアリは今年は動きが無かったのだ。

昨年増設した巣部屋にたむろしている。サテライトのようにも見える。

元々の巣部屋。働きアリが団子状に固まっているが、塊の中には幼虫も女王もいない。
幼若個体は今年は生産されなかったし、女王は石膏をくりぬいた坑道のようなスペースに数匹の取り巻きと共に籠っている・・ 
9月17日 12日にトゲアリを取り上げたがそこで幼虫が1匹だけだが繭を作り始めた。

働きアリが幼虫を取り囲んで塊を形成しており、そのために撮影がいまいちになってしまった。
まだ数匹育っている幼虫がいるので今年中にもう数匹羽化するかもしれない。
と、好ましいことを書いたが少し心配ごともある。
トゲアリの働きアリの死骸がぽつぽつと見られるのだ。
内部環境の悪化が原因ではないように思える。
と言うことは、寿命?まさかね・・?
とりあえずどんどん羽化する数を出さないとじり貧になってしまいそうにも思える。
どうなるのだろうか?
9月18日 チクシトゲアリの有翅個体を取り上げてみる。

メスアリ。3匹ほど生産された。昨年と同様の数だった。

上とは別のメスアリ。 2枚とも正面を向いているので分かり辛いが腹部を曲げる独特の姿勢をしている。

オス。メスを生産したものとは別コロニーでこのコロニーはオスしか生産していない。
そのオスは沢山いる。

オスを1匹だけ写してみた。
スラダケさん、ふじひろさんのペアリングに関する記事を読み、昨年ペアリングに挑戦してみた。
馴染んだ末に何も起こらないというありがちなダメパターンにはまり、ペアリングできなかった。
今日、撮影後にオス2匹とメス1匹を取り出していずれは巣部屋に使う石膏を敷いた透明ケースに入れてみた。
どうなることやら・・
9月19日 昨日、チクシトゲアリの有翅メス1匹、オス2匹を入れてみた。
帰宅後、様子を見た。
・・全く何も変わっていない。
オスは相変わらず所在無げにじっとしているし、メスは何かを探るように歩きまわっていたが飽きたのかじっとしている。
どう見ても交尾していない。
・・どなたか、良案有りませんか? 
9月20日 朝に枚岡を歩いた。

側溝でナナフシを見た。

ナナフシのいた場所とは別の側溝でスズメバチが死んでいた。

クロオオアリの巣口。

周囲は出された砂でいっぱい。

笹についているアブラムシにキイロシリアゲアリが来ていた。
目当ての羽アリ関係だが、全く皆無。オスの羽アリはおろか痕跡すら見当たらなかった。
キイロシリアゲアリを目的に出かけたが先週辺りだったかも・・
9月21日 アメイロアリ。
夏に有翅メスが数匹羽化したことを書いたが、あれから1匹また1匹と姿が見えなくなっていた。
ただ、どういう訳か死骸が見つからず、少ない可能性ながら巣部屋と餌場を繋ぐチューブに籠ったのだろうかと思ったりもしたが・・

餌場に打ち捨てられていた。
羽はもがれているのか、脱翅メスとそっくりの状態だった。

ちなみにこれが女王アリ。結局今年誕生した脱翅メスは皆いなくなってしまった。 
9月22日 トゲアリにしてみた。撮影しやすいので、ね・・

女王アリと働きアリ、見た感じは順調なのだが、どうも働きアリがぽつぽつ死ぬのが気がかり。
トゲアリの働きアリ自体がそれほど多くないので、1個体でも死ぬのは痛いのですよ・・
9月23日 ケアリコロニーの日常編。

沢山の育った幼虫たち。

本日も女王陛下は健やか也。

夏ほどではないが、卵はまだたくさん見られる。

上とは別の卵塊。

蛹は減っている。まぁ、気温も下がり始めてるしね・・
9月24日  アシナガアリ。

この画像を見て、床面がプラスチックの容器に変わっていることがお分かり頂けると思う。

卵を咥える働きアリ。
事の顛末はこうである。
元々、アシナガアリは2コロニーとも巣部屋が1つに餌場を繋いだ容器で飼育していた。
夏のさ中の辺りから巣部屋内の一角に食べた肉餌の残骸を積み上げるようになった。
そこに、カビが発生した。
除去はしていたがある閾値を越えたのだろう、急速に働きアリが死に始めた。
そこで、生きているものをタッパーに収容し新鮮な蜜餌、水を与えて様子を見た。
その後数日は働きアリで死ぬものが出た。
これはすぐに除去しないとあっという間にカビが生える。カビに感染して死んだのかはよく分からない。
そして数日後ようやく死亡がとまり、再建過程にある。
こう言う症状は他のアリでも経験しているが、まず生存しているアリを取り出し、清潔な容器に収容、その後数日死亡したアリは即除去。
死亡がとまるまで新鮮な水を与えて肉餌は中止。
それで働きアリが少しでも残れば再建は可能。
アシナガアリは巣部屋を複数作って巣部屋にゴミが増えてくると別の巣部屋に移ると言うスタイルがあっているように思う。
野外でアシナガアリの引っ越しは見たことが無いが、案外頻繁に引っ越ししているのかもしれないと巣部屋利用を見て思った。 
9月25日 常温飼育で一年を過ごしたクサアリモドキだ。

幼虫を運んでいる。

分かりにくい図だが、栄養交換をしている。
丁度メイプルを与えた直後だった。
このコロニーの女王はほぼ常に壁面にとまっている。
しかも、向かって手前の壁面なので撮影が出来ない・・
生存は確認している。
9月26日 アメイロケアリは今一つ。
アメイロケアリの働きアリも多く羽化したが、大半は死んでしまった。
と言うのは、夏以降にどういうわけかメイプルにダイブして死ぬアメイロケアリが多数発生したのだ。
ホストのケアリはそういうことは一切なく、アメイロケアリばかり。
乾燥したわけではない(水には気をつけていた)。
なぜ、こんなことになったのだろう。
今ではホストのケアリの方が数が多いほどになってしまった。
コロニーを見ても今一つ活気に欠けるように思える。
幼虫がおり、全くサイクルが断絶していないのが希望の灯だろうか。
来年に期待したいが、それ以前に冬を上手く越さないとね・・ 
9月27日 朝枚岡を歩いてきた。
住宅地内の側溝を見て行くが、何もいない。
とても静かな雰囲気だ。
これは先週のようにまたボーズかなぁと思っていた。

公園内で1匹スズメバチがいた。弱っているわけでもなさそうだが、動きが鈍い。気温のせいだろうか。 

クモバチの仲間っぽい。これも少し動きが変だった。

仰向けで移動するハナムグリかカナブンっぽい幼虫。撮影後、側溝から救済した。

アミメアリが乾燥したミミズのようなものに集まっていた。

タマムシ。死んでいたが、今年はもう見ることが出来ないと思っていたので少し嬉しかった。

オオカマキリの後翅。何かに食われたと見るのが妥当か。

さて、今回はキイロシリアゲアリの団子が見られたらいいなと思っていた。
ただ、途中の住宅地内のポイントが皆無だったので、正直厳しいかもと思った。

公園事務所付近でふと側溝を見ると、あった。女王団子だ。
一旦、見つけると次々と見つかる。以下、祭り。

小さな集団。

団子。

団子。

また団子。

とにかく団子。

寄って見た。

ひたすら団子だ。

落ち葉を核にするように集まっていた。

どんぐりの「かさ」の周りに集まっていた。

これも落ち葉の周りに集まっていた。

ある意味、狂喜の瞬間だろう。
山道の側溝は多くの女王団子が見られた。
もう飛び終わったのだろうかと思っていたのだが、今年もうまく観察することが出来た。
ちなみに、撮影しただけで採集は全くしていない。
9月28日 春に女王を採集したクロナガアリ。

わしわしと増えている。

働きアリがまだ小さめだがそれ以外は問題ない。
このコロニー、給餌に際し、粟の実だけしか与えていない。
アカムシは全く与えていない。
それでも幼虫が育っている所を見ると、種子だけでもあまり問題なさそうだと改めて認識した。アカムシを与えると「味を覚えて」しまうかもしれず、そうなると種子の食いが悪くなるかも、と考えているのでアカムシに踏み切れていない。
9月29日 今年のアリたちの生産活動もそろそろ終わりが見えてきた・・
はずなのだが、1つ奇妙な光景を目にした。

卵塊である。

上の卵塊の傍にあった卵がさらに3つ。 

そして、それを生んだと思われるのが、このアリ。クロヤマアリ。
ご存知の向きも多いと思うが、クロヤマアリは越冬時には成虫しかいない。
実際、他の2コロニーのクロヤマアリは生産を終了した。
飼育条件は全く同じ。
なのに、このコロニーだけ卵がある。
どういうことだろう?
9月30日 ケブカツヤオオアリは今年産卵しなかったと再々書いたように思う。
このコロニーの女王は石膏をくりぬいた穴の中に潜っていて、巣部屋をひっくり返さないと様子が見えない。 
女王が元気なのを確認しようと様子を見てみた。
女王は元気で会った。
その女王の傍に小さなものがあるのに気が付いた。
むむ・・よく見えない。ルーペで拡大してみる。
小さな幼虫だ!
数匹だけだが、確かに孵化したばかりの小さな幼虫が見られる。
卵は見当たらない。
今年、ケブカツヤオオアリは全く生産が無かったのだが、最後に少しだけ生産ということになりそう。
ただ、来春に今まで通り生産してくれて、初めて通常に戻るのでまだ数が少ないという点で不安はあるのだが・・

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