2014年3月の観察日記

3月1日 今日は久々に卵餌を作った。
以前のは寒天を使っていたがどうも硬く使い勝手がいまいちと言う印象だったので、ゼラチンで固めてみた。

試しに常温飼育のクサアリモドキに与えてみるとこのとおり。
寒天より柔らかいのでシリンジだけでも吸引でき、絞り出すことが出来た。

一方、早々にがっくりくることもあった。
クサオオアリの女王が死んでいた。
この前見た時は至って元気で、春以降の巻き返しに期待していたのだが、どうもうまくいかなかった・・
3月2日 今日も昨日ほどではなかったが暖かい一日だった。
給餌のために恒温機を開けてみると、湿度が70パーセントほどあり、冷風が出ていた。要するに、室温の方が恒温機の設定温度より(少なくとも昼間は)高かったようだ。
そのためか、アリたちの動きもあまり活発ではなく、風の吹き出す辺りにおいてある温度計は14℃を示していた。
明日から寒の戻りがあり、週の中頃を中心に強い冷え込みが予想されている。
と言うことは、暖かい風が吹き出すはず・・ 
3月3日 昨日、冷風が出ていたことを受け、今朝温度を2℃あげて18℃に。
帰宅後、内部の湿度を見るとたったの35%!
そこで、内部に水を入れ湿度を維持できるようにした。
クサアリモドキでは団子がほどけて働きアリが巣部屋内部をうろついていた。
どちらかと言うとまだ蜜餌を求めていて肉餌への欲求はどの種類でもそれほど顕著ではない。 
肉餌を本格的に食べるようになれば、忙しくなりそうだ。
3月4日 恒温機内は湿度が70%近くになり、温度は18℃。アリたちも急に活気づいてきた。
今日はキイロシリアゲアリにした。

幼虫の色艶がとてもよくなった気がする。

幼虫群を写してみた。
働きアリの数はまだ少ないが幼虫が沢山いるので、これらが羽化してきたら一気ににぎやかになるだろう。
3月5日 昨日、コオロギを各種類に与えてみた。
久々のまとまった量の肉餌だ。

アシナガアリはこんな感じになった。
ハヤシクロヤマアリだけ、メイプルの水割りの中にコオロギが放り込まれていたが、これはアリが放り込んだのか、コオロギが死んでおらず、苦し紛れにメイプルにダイブしたのかは分からない。
何だか、アリたちに「春」ならではの活気があるのは見ていてこちらも嬉しくなってしまう。 
3月6日 恒温機内では春が来て6日が経過した。
まだ動きはないな・・と思っていたら、否!早くも動き始めている者たちがいたのだ。

ヤマヨツさん。昨年は増えもしないし減りもしない感じだった。
幼虫は沢山いる。
その幼虫の一部が成長を始めていた。働きアリを大きさ比較のために一緒に入れてみた。

女王。どうもピントが甘いね・・ 
3月7日 寒い日だったが、恒温機内の温度は18℃から19℃になった。
昨日、成長が始まったヤマヨツボシオオアリの幼虫を取り上げたが、各種類の幼虫で色が透き通った白色のものが出始めた。
この幼虫が見られると、もうすぐ急に成長しているのが見られるはずだ。 
3月8日 ムネアカオオアリ。
透き通った幼虫を写してみた。

越冬中とは幼虫の色が異なり、実際少し大きくなってきた。

もう1枚。
肉餌はそれほど食べているように見えないが、女王の産卵が始まればコロニー全体の肉餌欲求が高まると思う。
3月9日 今日から20℃に設定。
昨年女王を採集したアメイロケアリ、幼虫がいるのにコオロギは一回目にがっついた以外は餌場に放置。
ミールワームの方が良いのだろうか?
もう少し様子見。
以前、アメイロケアリを飼育していた時にも書いたがどうもアメイロケアリは肉餌の好みが五月蠅いような気がするが、気のせいだろうか? 
3月10日 ハヤシクロヤマアリ。
まだ産卵は始まっておらず、働きアリたちも手持無沙汰気味。

女王。2匹のうち1匹。

働きアリ。
休息していた。
3月11日 チクシトゲアリの幼虫も成長を始めたようだ。

幼虫の塊の一部。チクシトゲアリはコオロギをよく食べてくれる。
この幼虫の体内の入っている色も、コオロギを食したことによるものだろう。 
3月12日 1月に河内長野で採集したナワヨツボシオオアリ。
卵餌を与えて数日、どうかなと様子を見ると、卵餌にダイブして死んでいた。
せっかく、温度も上げ始めてこれからコロニー創設にチャレンジしてもらおうと思っていた矢先のこと。
残念だ。 
3月13日 今日から恒温機21℃。
例年の記録から、まだ産卵開始までもう少しだとは思う。

これは昨年に新女王を採集したクロオオアリ。
腹部が大きくなっている。
他の恒温機のクロオオアリの女王はここまで大きくなっていなかった。
働きアリの数が少ないから貯蔵役を担っているのだろうか。

小さな幼虫の塊。
越冬モードから抜けたと思われる白っぽい幼虫と「冬服」の薄黄色の幼虫が入り混じっている。
3月14日 アメイロアリ。

働きアリの腹部はパンパンだ。
卵が見られるが、温度を上げ始め産卵し始めたのか、正直微妙。 
3月15日 アメイロケアリ。ホストのケアリがミールワームに集まってきていて、肉餌を本格的に食べ始めたという印象。

わらわらと。

幼虫はとても小さい。 
3月16日 今日から22℃。
まだどのアリでも産卵を開始した兆候が見られない。

トゲアリ。昨年はどういうわけかクロオオアリのオスばかり羽化した。女王の腹部はこんなに大きいので、今年は産卵をしてくれることに期待。

ホストのクロオオアリ同士の栄養交換。トゲアリへの攻撃も全くないので、後はトゲアリが産卵してくれれば、新しい局面が見えてきそうだ。
3月17日 以前、クサアリモドキがカートンのようなものを作ったことを書いたことがあった。
そのコロニーは冬の間に巣部屋を一つ増設して越冬モード終了後、徐々に働きアリがたむろするようになっていた。
今日、ある物に気が付いた。

新しい巣部屋と餌場を繋ぐチューブを基にカートンを「栽培」し始めた。
補足説明すると、このチューブは以前から使用していた巣部屋と餌場を繋いでいたもの。色が茶色っぽいのは時間の経過によるもので、カートンがつけられてこのような色になったわけではない。
しかし、これ、何を基に作ってるんだろう。
餌場には虫と蜜餌しか入れていないのに。
3月18日 昨日、カートンの写真を載せた。
それがどこから持ってきたのか分かった。
元の巣部屋にあったものを引っぺがして新しい巣部屋のチューブに貼りつけていたのだ。今日、元々このカートンがあった場所のアリの密度が低くなり、ようやく真実が分かった。
これ、引っぺがしたり貼りつけたり出来るんですね。


今日はアシナガアリにしてみた。

ミールワームに群がる幼虫。

下の方の2匹の頭部を取り出してみた。
アシナガアリ幼虫の食べ方は本当に特徴的で面白いと思う。
3月19日 恒温機は今日から23℃。
例年ならここで温度上げ作業はおしまいだが、今年は24℃にしてみたいと思う。
常温のアリたちもここ数日の暖かさにつられて餌場を徘徊するようになってきた。
蜜餌も肉餌も忙しくなってきた。
3月20日 アシナガアリには卵が見られるが、秋からあった卵が孵化せずにあるのか、新しく今年に産んだのかがいまいち良く分からない。
もし、産卵しているならばいち早く活動開始になるのだが、冬の間殆ど放置に近かったので、秋にどれくらい卵があったのか把握していない。
肉餌は良く食べるので、どのみちもうすぐ産卵が始まって増勢してくれそうではある。 
3月21日 今日、アリたちに給餌をしていて気が付いた。
ハヤシクロヤマアリの働きアリが卵を2つ抱えているではないか!
これはシャッターチャンスと思い、カメラを構えるとアリ団子の中に隠れてしまった。
今日の撮影は叶わなかったが、初めて今年の産卵を確認できたのは嬉しい。
他の種類でも、徐々に産卵が始まるだろう。
また、常温のアリたちも明後日以降やってくると言う陽気に誘われて活動が本格化しそうである。 
3月22日 恒温機内に本格的に春が来て、各種類の女王も産卵準備がとともってきているのか、腹部が肥大化しつつある。

またヤマヨツさんにしてみた。
女王の腹部は大きくなってきているが産卵はまだ。
今日時点ではっきりと産卵開始が確認できたのはハヤシクロヤマアリだけである。 
3月23日 暖かくなったので、久々に枚岡公園を歩いた。

ハヤシクロヤマアリは数が少ないが地表を歩きまわっているのが見られた。 

山でそこかしこで見られたスミレ。いつも早春に見られる。

展望台からの風景。今日は大阪平野が良く見えた。

木々からは新芽が芽吹いていた。

ガードレールにガがとまっていた。

オオイヌノフグリとハコベ。良く咲いていた。

テングチョウ。他のチョウは見られないがこの種類だけは良く飛び回っていた。

暗峠を歩いていく。棚田はまだ水も入っておらず、閑散としている。
この風景は昨年4月末に撮影した。
奥の車用温度計は15℃と表示されていた。

ふと手に取った枯竹に穴が開いていた。割ってみたが何もいなかった。

枯れたイタドリがあったので割るとムネボソがいた。写真では少しシリアゲっぽく写っているがムネボソだと思う。

良く分からないずんぐりしたハチがいた。
木の新芽に寄生するタマバチに似ているように思う。

山道でイタドリを少し割ってみたが、ミカドの小さなサテライトと上記のムネボソ以外は出なかった。それほど割ったわけではないのでこの程度だろう。
梅林付近で、トビイロシワアリ、クサアリ、ウメマツオオアリを見た。
まだ動きは緩慢さがあり、本格活動ではないことを思わせた。
3月24日 キイロシリアゲアリでも産卵が始まった。

働きアリの顔と卵塊。

卵塊を世話している働きアリ。

女王アリと幼虫。女王は蜜餌のためか腹部が大きい。
3月25日 アメイロケアリは女王の腹部が急に大きくなってきた。

大きくなってきたが、まだ膨らむのは昨夏で確認済み。

もう1枚。産卵はまだ確認できていない。
ちなみに今日はクロオオアリ、ケアリ、ヤマヨツボシオオアリで産卵開始を確認した。
3月26日 帰宅後、恒温機の蓋の部分を見ると、クサアリモドキの働きアリが2匹いた。
これはすなわち、脱走があると言うことだ。
すぐに庫内を確認する。
夥しいと言うほどではないがそこそこの数うろうろしている。
吸虫管で吸いとりながら脱走個所の特定作業。
いつもの場合、ここが難航するが、今回は比較的簡単に特定できた。
冬の間に増設した巣部屋を繋ぐチューブの個所のグルーガンの接着が甘い所。
そこだった。
穴をふさぎ、様子をみる。
収まったようだ。
これがあると、一気に疲れるのです。
まぁ、それ以前にきちんと接着しとけと言う話なんですけどね・・

アメイロケアリも産卵開始を確認した。 
3月27日 ケアリコロニーでは繭ができ始めた。

働きアリと同寸の繭。2つ確認できた。

卵塊。もう1つある。
アリの卵ってどの種類も美しいですね。
3月28日 ムネアカ。
今日の餌はハニーワーム。

一斉に攻撃して鎮圧してしまった。
幼虫が育っていて肉餌の欲求が激しい。
女王の産卵も始まっていて、今肉餌を切らすとシーズン中不調気味になるのは経験しているので、ここはしっかりと肉餌を与えておきたいところだ。
3月29日 トゲアリコロニー。
ホストのクロオオアリの働きアリが卵を咥えていた。

数は少ない。この卵からクロオオアリのオスアリが生まれるか、トゲアリが生まれるか・・
昨年はまさかのクロオオアリオスが羽化したので、産卵したと言って単純に喜べないのが何とも。

女王。

もう1枚。腹部はかなり大きい。産卵する分には問題ないと思うが、なぜ昨年クロオオアリのオスしか出て来なかったのかが良く分からない。 
3月30日 クサアリモドキを何度か取り上げているが、今日は今まで取り上げていないもう一つのコロニー。今まで「働きアリの個体数が多い方」と表現していたものだ。

やや不鮮明だが、おわん形のカートンを作った。

育った幼虫たち。
写真はとっていないが、女王の腹部も肥大化し、産卵している。
さて、なぜ今年になって急にクサアリモドキがカートンを作ったのだろうと思われる方もいるかもしれない。
私自身、確証はないのだが、実はカートンができ始めた頃に餌を少し変えたのだ。
メイプルシロップ。
それを水割りから原液に変え、水は巣部屋に給水する方法に変えた。
それからカートンができ始めた。
以前、カートンを作る原料としてアブラムシの甘露云々という記事を見た記憶があるが、今日の日記を書くに際し原文を探したが見つからなかった。
濃い蜜源と関係あるのだろうか。ご存知の方いらっしゃれば教えて下さい。
3月31日 アメイロアリも順調だ。

働きアリと前蛹。蛹も出来始めている。

働きアリと卵塊の図。

その卵を産んでいる女王アリ。小さな体ではあるが、良く卵を産んでいる。
餌はミールワームの欠片とメイプルで維持している。 

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