2013年5月の観察日記

5月1日 ハヤシクロヤマアリで働きアリが羽化していた。

真っ白という訳ではないが体の色が薄い。
いつ見てもヤマアリ系は体の色もフォルムも美しいと思う。
5月2日 ムネアカオオアリでも繭から働きアリが羽化していた。

クリアではないが色の薄い働きアリ。
女王が単独で育てた働きアリより大きい。
繭もまだあるので今年はどこまで増えるやら、楽しみである。
5月3日 仮説に基づいて、もう少ししたら恒温機組の管理を少しいじってみたい。
もうすぐ、日中は半袖でも過ごせる日が出てくるだろう。
そうなると、当然恒温機は日中冷風を流す。
私の考えでは、この冷風がアリたちに秋を感じさせ、サイクルを停止させるのではないかと考えた。
それを考えさせるようになったのは、一昨年採集した女王を採集したケアリコロニーだ。
通常なら冷風が吹く季節にふと思い立って常温、真夏の気温に出してみた。
すると、夏の終わりまでサイクルを維持した。
アシナガとチクシは暑さにあまり強くないようなので7月くらいまでになるだろうが、恒温機を停止し、常温飼育で様子を見たい。
ひょっとしたらサイクルが7月くらいまで持続できるかもしれない・・ 
5月4日  クシケ。
オスの羽化ラッシュは終わり、働きアリの蛹が多く見られるようになった。

蛹の山の一角。色づいてきて羽化も近そうだ。

幼虫。相変わらず独特の色合い。

羽化した羽アリは全てオスだった。
交尾相手もおらず、どんどん死んでいってゴミ捨て場に打ち捨てられている・・
これで、もしメスがいたら交尾するのだろうか・・
5月5日 北摂にある三草山周辺に出かけた。
後述するが、この山には「ゼフィルスの森」という一角があり、そういう自然環境にはどういうアリがいるかを見たかった。
予め書いておくと、アリの写真は少ない。
「見せ場」が殆どなかったからなのだが・・

阪急バス「森上」バス停を降り、突き当りの信号を左折する。
暫く歩くと神社があり、そこの背中側に山が広がるので、歩き始めた。

田んぼに水が入ったばかり。息を呑むような新緑と水田のコントラストが広がっていた。

もう1枚。

新緑の集落の中を歩く。


このお寺の境内を向かって左に行くと登山道。このお寺に行くまで、標識も何もないから最初苦労したがここまできたらほぼ一本道と聞いていた。

レンゲソウも満開だった。

お寺の敷地を抜けると道が続く。分岐は殆どなく一本道。

まだまだ道が続くと思っていると、急に標識が出現。縮小表示のため読みづらくなっているが「ゼフィルスの森まで0.4キロ、三草山山頂まで1.1キロ」とある。

「ゼフィルスの森」入口にあった案内表示。

このような看板が。

アリはハヤシクロヤマアリばかりが目に付いた。これはコメツキムシの死骸を運んでいる。

ゼフィルスの森の中で1本トゲアリが巣くっている木を見つけた。

野外で見るトゲアリはごつごつして立派だ。
ちなみにこの木には幾つか洞があり、そこからトゲアリが顔をのぞかせていたのでこの木の内部は大きな空洞になっているようだった。

三草山山頂に到着。頂上は少し広場になっている。
これは頂上から南を写したもの。
山頂着が午前11時少し前。まだかなり時間がある。
そこで、上の標識の表示にある「府民牧場」に行こうと思い、山を降りる。
ゼフィルスの森でヨツボシオオアリの有翅メスを1匹見かけた。
フライング個体なのだろうか?撮影できずじまいだった。

集落にあった良く分からないけれど美しい花。

キツネノボタンも満開。

さて、府民牧場へと歩を進めるが、歩いてもそれと思しき場所が見つからない。
ただ、少し距離があるので歩くと国道の表示があった。

ここをまっすぐに行けば府民牧場・・
何て考えていた時期が私にもありました。

小さな山?峠?を越えて行くとこの表示。・・・をい。

しばらくすると民家もなくなり、峠道に。この写真の少し手前で大阪府から兵庫県に入っている。
大まかな方角は分かっているので、山を降りれば目処がつくと思いひたすら歩く。
交通量はそれほど多くないが私の横を車が走っていく。

そしてようやく猪名川町阿小谷集落に出る。
集落に出てバス停があったので時刻表を見た。
能勢電鉄日生中央行きのバスが1日2本あるが平日だけ。休日はバスがない・・
そんなわけでひたすら歩いてやっとこさ能勢電鉄日生中央駅にたどり着く。

電車で座れることの有難味を久々に味わった。
ちなみに帰宅後万歩計を見ると3万歩近い数値を示していた・・

まとめ:三草山への道は少しややこしいが登山道に入ればほぼ一本道。
ただ、標識の数値以上に歩いた気がした。
登山道までは特に夏は陽を遮るものもないのでかなり暑いと思われる。
ゼフィルスの森周辺は非常に手入れが行き届いていた。
ハヤシクロヤマアリばかりが目に付き、時々ムネアカオオアリやケアリ、ヨツボシオオアリが見られた。
棚田風景は一見の価値有りだと思う。
ハイカーも多く、初心者向けかなぁ?
府民牧場方面に行くならちゃんと確認しないと、私みたく阿小谷方面に峠を少なくとも2つほど越える羽目になる。ただ、このコースもハイキングコースとしてあるので、別に道に迷ってとんでもない行程を行ったわけでもない(現に私の前を歩いていたオバさん2人組は屏風岩の方にさらに登って行かれた)。
5月6日 今日、午前に家の近所でシロアリの羽アリが飛んでいた。 
ということは、何か飛んでいるかも・・と思い、枚岡公園。

シロアリがここでも多くはないが見つかった。

ハチが休んでいた。粉まみれなのは花粉?

アリに関しては収穫皆無だった。
アメイロアリくらいは飛んでいるかも、と思ったが風がやや強いこともあったためか、全く見つからなかった。
クロオオアリの巣を見て回ったが新女王が巣口から顔をのぞかせてはいるものの、巣口自体も大きくなく、飛行まで少し時間があるか、という感じだった。
5月7日 ケブカツヤオオアリは産卵が見られない。
もともと、採集した時にも卵はなかったし、常温飼育なので、もう少しかかるのかもしれない。
ケブカツヤオオアリを飼育してまだ10日も経過していないが、見た印象が臆病というかあまり餌場に出てこない。
ケブカツヤオオアリを野外で見たことがないので、どういう風な生態(夜行性なのか、昼行性なのか)かという情報も良く分からない。
うーむ。 
5月8日 トゲアリ。およそ1月ぶりに取り上げるが、幼虫が成長しているのだ。

トゲアリの幼虫を運ぶクロオオアリの働きアリ。

上とはまた別の幼虫。数自体は数個体と少ないが、まずは働きアリが生まれたら良いかな、と。

卵塊は一時期干からびたようになってしまったが最近また産み始めているようだ。
また、小さな幼虫も写っている。

女王。腹部は大きい。
5月9日 クサアリモドキの一昨年新女王採集コロニーのうち、個体数の少ない方のコロニーでは働きアリの羽化が続く。

今は白いが体が固まると真っ黒で艶やかな色になる。

今年産卵した卵からも幼虫が沢山孵化している。
これは与えたコオロギの脚に齧りつく幼虫。

卵。一時期よりペースは落ちているがまだたくさんある。
5月10日 ケブカツヤオオアリにコオロギを与えるとわらわらと集まってきた。

この大きさのコオロギなら翌朝にはほぼ食べつくす。

女王。節の色が特徴的。産卵はまだされていない。
5月11日  大阪では、昨日昼過ぎから雨になって今日の昼過ぎまでまる一日雨だった。
しかも降雨量もしっかりとした量だ。
そして、明日は打って変わって晴れ。予想最高気温は25℃。
この天気、気温は3年前、2010年に恐らく大飛行があった(見に行っていないので断言できないが)時の気象条件に似ている(10日ほど早いが)。
時期的にはクロオオアリやムネアカオオアリも飛んでもおかしくないので、明日辺りはアツいかも・・と思いつつ、明日は歩きまわってきます。
今日の「飛びそう」という予感が、どの程度当たるかは明日またここで・・
5月12日 晴れ。
満を持して枚岡を歩いてきた。

到着後、すぐにアメイロアリが歩いていた。 

もう1枚。メスの数は決して多くはなかったが、オスは多く見られた。

有翅メス。後部にオスがくっついて交尾中だった。

信貴生駒スカイライン周辺を歩いていると、イタドリがあった。
折ると、出たのがこれ。

ケブカツヤオオアリのサテライト。有翅メスとオスが多くおり、ミカドサテライトの例と同じく女王はいなかった。
これを見て、「ひょっとして今日は飛ばないのか?」と思い、帰路に就く。

猪名川のクロナガを見つける前、数年枚岡のクロナガアリを観察していたことがあった。
その場所を通ると、有翅メスが1匹いた。あまり元気がなかった。

椋ヶ根橋周辺で見つけたクロナガアリの脱翅メス。1匹だけだった。

予想外にクロオオアリの巣口は小さく、有翅個体が外を窺うが、まだ本格的に飛ぼうとはしていないようだった。
今日、観察できたのはシロアリとアメイロアリ、クロナガアリだった。
5月13日 昨夜、恒温機の電源を落とした。
これは、例年、この時期になると外気温の上昇により恒温機内部が冷風を出すようになる。
それにより、アリたちが秋と感じ、産卵や幼虫の成長がストップする。
昨夏、試験的に恒温機で春を迎えたケアリを夏に常温に置いてみた。
不調になることなく、9月頃まで活動した。
これを踏まえて、恒温機に暇を出した。
時期恒温機稼働予定は7月の頭頃を予定している。 
5月14日 ケブカツヤオオアリはようやく産卵を始めた。

朝の時点ではもう少しまとめられていたが夜には卵塊がばらされていた。
これが限界・・ 

女王。少し腹部が大きくなった?
5月15日 昨年新女王を採集したアシナガアリは好調そのものだ。

羽化を手助けする働きアリの図。

幼虫も丸々としている。
卵もそれほど数は多くないが一定した数があり、卵幼虫蛹と全ステージが見られる。
5月16日 恒温機の電源を落とし、常温化して数日。
今のところ、全く異常は見られない。
ただ、毎年この時期恒温機内は湿度が高い状態になってくるが、今年はそれがないので、乾燥には要注意である・・ 
5月17日  恒温機で温めていたクロオオアリではようやく最近になって繭ができ始めた。
常温の物と殆ど変らないペースである。
これなら常温の方が良かったかもしれない。 
5月18日  枚岡観察会。
午前10時に近鉄枚岡駅前に集まったのは、私あにまりあと、風人さん、kuroyagiさんの3人であった。
神社の中で通称デカクサと呼ばれるクサアリの女王が歩いていた。
期待を高めながら、お話をしながら登り始めた。
今年はマイマイガの当たり年で、至る所で幼虫の毛虫が見られる。
しかし、上っている時、パラパラと断続的に何かが落ちる音がしている一角があった。
その上を見ると丸坊主にされた木があった。
恐らくマイマイガ、あるいは芋虫毛虫の類が大量に木の上にいてそれが落とす糞がパラパラと音を立てているようだった。
歩いて行くと、糸を引きながら降りてくる毛虫のほかに予告なしに「ぼとっ」と落ちてくる中、大型のの毛虫やシャクトリムシ。
集中して地面を見たいが、これがあるために空中を漂うものはkuroyagiさんが枝で露払いしながら歩くことを余儀なくされた。
それでも、途中一か所でコンクリ片をめくるとクロオオアリの有翅メスが3匹、オスが1匹だけいるコロニーがあった。
完全には飛びきっていないらしい。
展望台を過ぎて急に毛虫の密度が下がる。
何故かは不明だったが、少し楽になる。
枚岡神社の本来のお社に3人で参拝して休憩所でお弁当。
そこから舗装路を歩き、暗峠への道を歩く。
側溝を見るが何もいない。
ダメなのか・・と思い、国道308との合流部付近でなんとかクロオオアリの脱翅メスを1匹採集。
峠を歩くが何もおらず、ふと枯れた篠竹を折ると、ウメマツオオアリが出た。
女王のいるコロニーで風人さんがお持ち帰り。
信貴生駒スカイラインを歩く。
そこで、先週ケブカツヤオオアリサテライトが出た場所で再びケブカツヤオオアリサテライト。

オスはいなかったが有翅メスが数匹いた。
タッパーにあけて落ち着いたところを写した。
風人さんはこれを見るのが初めて、kuroyagiさんは2005年の伊那以来の再会であった。

もう1枚。腹部の模様が特徴的なアリ。
また、この場所でヤマヨツボシオオアリも観察できた。

山を降りて行く。
黄金週間にケブカツヤオオアリのコロニーを見つけた辺りでイタドリの枯れ枝を1本折ると、ケブカツヤオオアリの初期コロニーが出た。
風人さんに差し上げた。
暗峠は急坂なので膝が笑い、何回か休みながら降りて行く。
椋ヶ根橋付近で風人さんがサンプルとして所望されていたキイロヒメアリのコロニーを数個出した。
午後4時過ぎ、散会。
帰宅後、膝が笑う状態からやや痛みに移行してしまった・・

まとめ:
クロオオアリは先週の初めにかなり飛んだのか、今日は見つけたのは1個体だけだった。まだ有翅個体が残っているコロニーがあったので、完全に終了ではないと思われるが大規模に飛ぶのは期待薄かもしれない。
私個人としてはケブカツヤオオアリを見てもらえて大満足だった。
マイマイガがかなりの規模の発生がみられ、山をある程度登るまでは毛虫の爆撃の心づもりはしておいた方が良いかもしれない。
5月19日  去年新女王を採集して立ち上げたクサアリモドキコロニーでも働きアリが生まれ始めた。
この構成員の多いコロニーはコオロギSサイズ3匹を毎日完食してしまう。
コオロギを置くとすぐにケアリの働きアリが集まってくる。
勢いに気押されそうなくらいだ・・
5月20日 会社の帰り、ふと足元を何か歩いているのが目に入った。
それはクロオオアリの脱翅メスだった!
人通りが多くはないが絶えない場所で仕方なく人通りが少なくなった瞬間にフィルムケースに収容。
そして持ち帰ったのが、これ。

至って普通のクロオオアリの女王だ。いつ見ても野外で歩いている姿は迫力がある。
本当は歩いている姿を撮りたかったが会社の近く、ちょっと躊躇ってしまった。 
5月21日 一昨年から飼育しているクロオオアリ。
常温飼育で最近になってやけにデカい幼虫が出現している。

このコロニーには大型の働きアリがいないが、この幼虫がひょっとして・・?

上とは別の幼虫。
彼らに栄養を振り分け過ぎているのか、幼虫がこれ以外には少なく、卵も増えて来ない。
もう少し肉餌を増強しなきゃ・・
5月22日 ケブカツヤオオアリ女王のお腹が急に膨らんできたのだ。

この状態。産卵を始めてから急に腹部が大きくなってきた。 

繭もでき始めた。この繭は大きさの比較対象がないが、非常に小さい。

ミールワームを貪っている。見ていて勢いがある。
5月23日 餌の話。
肉餌はコオロギメインになってきているのだが、今日は小さなものばかりになってしまっていた。
ショップも今日はお休みなので、どうしよう、と思っていたら以前少し使っていて最近はクロナガ専用になっていた乾燥アカムシのボトルが目に入った。
とりあえず与えてみる。
うーん、反応がいまいちだ。
かなり使い込んだ後で粉末化しているのが気に食わないのだろうか。
とりあえず、今夜は様子見である。 
5月24日 4月の中旬以降、感じていることがある。
それは、早くに「春」を迎えさせた恒温機の組が何れも勢いが出てきたのだ。
恒温機内は1月末から春状態なのに、野外で春になってから活気が出てきたのは不思議だ。
「活気がある」とはどういう状態なのか、具体的に言葉にするとなると適当な表現が出てこない。 
表現って難しい。
5月25日 トゲアリの幼虫は大きく育ち、恐らく終齢と思えるほど大きくなった。
ただ、数が少ない・・
5匹程度。
後は小さな幼虫と卵。
やはり寄生種はホストが多くないと、難しいかなと思ったりしている。
5月26日  先日、採集したクロオオアリの新女王は産卵を始めた。
オレンジ色の卵であるが、写真を撮ろうとしても中々落ち着かず、良い写真が撮れない。
撮影はまたの機会にしたい。 
5月27日 アメイロケアリで 不思議な行動が見られた。

小さな幼虫は数匹いるが、右側の幼虫を働きアリ数匹が取り囲んで触角でつついている。それはあたかも女王を取り囲む様子にそっくりだった。
他にも幼虫はいるが、この一匹だけ特別扱いされているように見えた。
この幼虫、一体どんな秘密を持っているのやら・・?
5月28日 昨年新女王を採集したクサアリモドキコロニー。
ここ数日、また急に腹部が大きくなってきたのだ。

腹部しか写せなかったが肥大しているのはお分かり頂けると思う。壁面にへばりついている上、常に周囲を働きアリがまとわりついていて全体のクリアな撮影がやや難しい。

餌として与えたコオロギにすぐ集まってくる。

繭山の中での羽化したてのクサアリモドキの働きアリとホストのケアリの働きアリ。

クサアリモドキの働きアリの羽化をケアリの働きアリが助けている。
5月29日 ハニーワーム。
先週あたりから成虫のガが羽化し始めたので、昨年から使用している容器に入れてみると産卵していた。
そして、今日、小さな幼虫が動いているのを確認した。
これで、ハニーワームの供給は少し安定できるだろうか。
とにかく、養殖(と言うほどでもないかもしれないが)に成功できれば、嗜好性の高いこの餌をコオロギやミールワームと併用できる見込みが高まる。
何としてもうまくやらなければ・・! 
5月30日 不思議なヤマヨツボシオオアリ。
何が不思議かというと今年は絶好調なのだ。
越冬幼虫が次々と繭になり、その繭から小型とはいえ働きアリが続々羽化しているのだ。

女王。このコロニーの女王は1匹だけ。

繭と働きアリ。 

卵塊。とりあえず、現在はこんなところ。
5月31日 久々のアズマオオズアリ。
コオロギを与えるようにしてから活性が上がり、兵アリが羽化するようになった。

この頭でっかちが何ともいえず可愛らしい。 

小さな幼虫の世話をしている。

女王。働きアリとの体格差が大きい。

コオロギを与えるとすぐにこの有様。もう少し時間が経つと遠目にはオレンジっぽく見えるほどたかって翌日には殆ど食いつくしている・・

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