2011年12月の観察日記
12月1日 | クロナガアリ。少しずつ石膏の巣部屋のほうに引っ越しをさせている。 そんな中の1つのコロニー。 女王は巣部屋のほうにはまだ入っていないが幼虫を運び込んだ。写真中央の個体、少し頭が大きい。 幼虫。色艶も良く安定している感じだ。 |
12月2日 | オオズアリ。今のところ、目立って低温維持の害が出ているようには見えない。 10℃でも採餌活動を行うのか、時々餌場をあけると働きアリが数匹うろついていることがある。数枚写真を写した。 女王。最近、石膏を掘りぬいて「地下都市」にいることが多く、なかなか撮影できなかったが今日はうまく出てきてくれた。 同じ個体。顔がうまく写ってくれた。この時期の撮影は意外な伏兵がいる。 それは結露とまでは言わないが容器が曇るのだ。 ある意味、オオズといえばこっちのほうがお約束的なショット。働きアリと兵アリ。 本当に体格が全く違う。 オオズは結構肉食が強いような印象で肉系の餌をメインにしたほうが良いのかもしれない。 |
12月3日 | クシケ。越冬モードに移行して幼虫以外の幼若ステージはいない。 コロニーの一部。幼虫は写真の大きさのものでほぼ統一されている(一部小さいのがいるが)。この状態でも若干は餌を食べるようで昨年はここで水しか与えていなかったら働きアリが多く死んだので一昨年までの管理に倣い蜜とミールワームを適宜与えるようにしている。 幼虫を1匹取り出す。この幼虫は腹部に何も入っていないので白色だが物を食べている幼虫はネズミ色っぽい色に見える。活動期と違いやや形態的に変わったように見えるとは毎年書いているが実際はどうなんだろう? |
12月4日 | ハヤシクロヤマ。越冬モードで餌場をうろつく個体も皆無だ。 女王。今年、これをゲットできたのは本当に幸運だった。 しかし、今年は増えなかった。 来年は増やしたい。そのためにはまず肉餌を特に重点的に与える必要がありそうだ。 |
12月5日 | クサアリモドキ。2コロニーいて幼虫、ケアリが多いほうと少ないほう(立ち上げ時に投入したケアリの繭の数による)があるが、両方とも異常なく越冬モード中。 幼虫群。ケアリワーカーが上に乗っかっているが結構な数の幼虫がいる。 幼虫を拡大。まだまだ小さい。 上で紹介したものとはまた別の塊。あと、本当に小さな幼虫塊が2つほどあった。でも、凄い数産みましたね、この女王様・・ |
12月6日 | ムネボソアリ。本当に変化がない1年だった。 幼虫や卵もそこそこあって餌の食いも良い。なのに全く数が増えない。 怪奇現象としか言えないくらい、訳が分からない。 卵が見えた。撮影時には気がつかなかったが少数残ってる模様。 女王。何匹もいるがそのうちの2匹。トビシワの女王に結構似ているが大きさが小さい。 働きアリ。腹部が大きいので栄養状態はそれほど悪くないようだ。 終齢幼虫をアップにした。こういう幼虫がごろごろいるのに、増えないのね・・ |
12月7日 | ヤマクロヤマアリ。今年も増えなかった・・ 女王。クロヤマアリやハヤシクロヤマアリとはまた違った色艶だ。 働きアリをアップ。 別の働きアリ。腹部も大きく、問題はないがなぜか増えてくれない・・ |
12月8日 | 去年採集したチクシトゲアリ。 女王は天幕の陰に隠れていたのだろう、はっきりと姿を確認できなかった。餌場を定宿にしてもう半年以上・・巣部屋の石膏には一向に移動しない。 幼虫。越冬モード故なのか色艶がいまいち・・ 頭胸部をアップ。チクシトゲアリはアップにしたら結構特徴ありますね。 |
12月12日 | 3年前、伊那で採集した女王3だったミカド。少し前に書いたが女王は2匹になった。 場所的に撮影し辛い場所にあってなかなか登場しないが元気である。 コロニーの中心部。大型働きアリも多く、安定感がある。 働きアリと幼虫。幼虫もそこそこの数いて来年が楽しみだ。 2匹のうちの1匹の女王。 もう1匹。こっちの女王のほうが心なしか腹部が伸びているような気がする。 春に飛び立たなかったオス。飛行時期が過ぎたら食われるかと思っていたがまだ生存している。面白いのはオスが固まっている場所と女王がいる場所は完全に離れていてサテライトの様相を呈している。 |
12月19日 | クロナガアリ。他のアリは越冬モードで動きがない中、このアリは例外的に温めているので動きがあるのだ。 カゼクサの種子をため込んでいる。餌場にカゼクサを置いて好きなものを運び込ませていたらどんどんため込んだ。 もう1枚。働きアリの大きさと比較してもらえるとこの収穫物の量の多さがお分かり頂けるかも。 幼虫。あまりうまく写らなかったが成長している。ただ、まだ蛹は見られない。 |
12月20日 | 今年採集したアシナガアリ女王。 数匹脱落したが大半の女王がうまく働きアリを育て上げた。 本当になんというか「か弱い」という表現がぴったりの初期ワーカーだ。 羽化したばかりでもないのにやたらと色の薄い働きアリがいた。 完全越冬モードで成虫と幼虫以外は見られない。 |
12月22日 | 今年の初夏採集した2匹のクロオオアリ女王。 2匹ともコロニーの立ち上げに成功して10匹の働きアリと小さな幼虫で越冬中。 幼虫の塊。それほど多くはない。 働きアリ。初期の働きアリっぽく、それほどいかつくない。 |
12月23日 | 昨年コロニー採集したアシナガアリ。 幼虫がたくさんいる状態で越冬に入った。 卵が見られる。たぶん女王が卵をまだ産んでいる段階で温度を下げたために卵が孵化できない温度になってるのだろう。しかし、食われずに大事にされている。 とりあえず幼虫。これで全部ではないのが凄い・・ コロニー本体がいる部屋の隣で20ほどの働きアリがいた。幼虫もいないし、なんだかくつろいでるような印象を受けた。骨休め中? |
12月30日 | 去年採集したチクシトゲアリ。数枚写真を写してみた。 コロニーの様子。相変わらず餌場に陣取って石膏の巣部屋には一向に移動しようとしない。 幼虫を運んでいる働きアリ。 どの働きアリの腹部もこんな風にかなり大きい。栄養的には問題なさそうだ。 容器の角っこでひときわ集まっていた。クサアリほどではないが「アリ玉」っぽい。 |
12月31日 | 2011年も今日で終わりということでまた再掲写真とともに振り返って行きたい。 今年は昨年末に恒温機を稼働させた関係で元旦からアリたちは活動していた。 しかし、実際に各種で産卵が活発になったのは1月の末だった。どうも23℃くらいが我が家のアリたちには適温らしい。 そして一番このころ見ていて勢いがあったのは去年コロニー採集したアシナガアリで幼虫がとにかく餌を良く食べたのだ。 これはレッドローチを食べているアシナガアリの幼虫たち。少々大きなレッドローチでも平気で食べつくしていた。 そしてこのころから順調だったクサアリモドキに異変が起きた。 蛹が食われるのだ。 幼虫は問題なく成長して蛹になるのだが蛹を幼虫が食べてしまう。 そのおかしくなった過程でこのような明らかに大きすぎる幼虫も出てきた。 何が悪いのか良く分からないまま壊滅してしまった・・ 3月、お彼岸の休みを利用して堺市の鉢ヶ峯に出かけた。 結論から言うと収穫はなかった。 しかしミカドサテライトがあったり、ウメマツオオアリサテライトがあったりとそれなりに楽しむことができた。 その時のミカドサテライト。 4月。暖かくなり、ちょうど石めくりが面白い季節だ。今年はハヤシクロヤマアリのコロニー採集を目標の一つにしていたのでずっと通い詰め、ようやく1コロニーゲットできた。 クロヤマアリと比べてやや大きく色合いも少し違う。採集時、何人ものハイカーが奇異の目で私を見ながら通り過ぎて行ったが気にしてる暇もなく働きアリを吸いまくった。 そしてこの月、コヌカアリコロニーと初めて出会った。一瞬ミツバ系かと思ったが女王がいたのでそこから足がついた。しかしその女王様、すぐ死んでしまった・・ クロナガアリの飛行時期になっていたがなかなか休日に良い天気に恵まれず、今年の飛行は逃したと思った。 それでもゴールデンウィークに出かけると、まさかの事態に遭遇した。 午前10時頃なのに、こういう光景がそこかしこ。 こんなに女王が!とびっくりするほど見られた。 結構早い時間に飛行することもあるということが昨年に引き続いて分かった。 その後は枚岡でオオアリ系の観察。 アメイロアリの交尾写真がうまく撮れた。 今年はアメイロアリの女王にはそれほど遭遇しなかったうえに持ち帰ってフィルムケースを開けると死んでいる事故が多発して新女王からの育成はできなかった。 そして、今年はアメイロケアリがいるのでクロクサアリの寄生にも挑戦した。しかし、今年は採集できる時に天候がよくなく、クロクサの女王自体があまり採集できなかった。 この写真はアメイロケアリの女王がいるコロニーにクロクサの女王を導入した時にもの。グルーミングを受けているようだったが何がスイッチなのか突然猛烈な攻撃を受けて殺されてしまった・・ それでも、1個体アメイロケの繭メインにしたコロニーでうまく産卵を始めたものがいたが、秋に死んでしまった。卵は産んでいたのだが・・ そしてこの月、まさかの悪夢が。ヨツボシ大脱走。まさかチューブに穴をあけているとは思わず完全に盲点だった・・せっかくの大コロニー・・ 6月。最初の週末にクロオオアリの女王を2匹ゲットできた。 これはクロオオアリの新女王が巣を掘っている所。普通はこれは夜に行われるとみられ、実際真昼間に掘ってるのを見たのは初めてだった。 また、数年ぶりにクロヤマアリの新女王にも遭遇できた。しかしこの女王、食卵癖があって産んでは食べを繰り返し、夏の終わりに死んでしまうのだ… そして今年は初めて枚岡に夜間観察に出かけた。 幾つかめぼしい街灯や自販機を見つけておいたが、それは大当りでアメイロケアリが飛んできたり、ヒラズやケアリがぶんぶん飛ぶ状況だった。 これはアメイロケアリ。見ている前で翅を落としたが写真を写していなかった・・この女王は寄生に失敗した。 7月。クサアリモドキ、ケアリシーズン突入だ。 第1週目からケアリやクサアリモドキが見られた。 ケアリ女王は今年も良く見かけた。 クサアリモドキも採集してケアリ繭を導入したが7月上旬に採集した小さな繭からは殆どオスしか生まれてこなかった。 あまり見かけないクサアリ(と思われる)のオスアリ。朝にはもうほとんどが餌になって巣に運ばれているので見かけないのだろう。 アシナガアリも順調に飛行をしていた。それにしてもこの種の女王は野外で見ると実際よりすごく赤みがかって見える。膨らんだ腹部のせいもあるかもしれない。 少し脱線だがアゲハモドキを撮影できた。でも、どう見てもジャコウアゲハだよね・・ また撮影はできなかったがオオムラサキのオスも初めて見かけた。 野外で生きて飛んでいるオスを見たのは初めてで本当に美しい紫をしていた。 そして今年はミヤマカミキリに異様によく遭遇した。こんなに見かけたのは初めて。当たり年だったのだろうか。 8月。資格試験勉強が本格化して今年はフィールドにあまり出かけることができなかった。 7月末にケアリの大きな繭部屋を暴き、そこからどっさり繭を採ってきてクサアリモドキに導入した。クサアリモドキは最終的に2個体残って2匹とも産卵を開始したが繭を多く入れて結果ケアリの働きアリが多いほうの女王の腹部がすごいことになったのだ。 これだけパンパンでどんどん産卵するとすごい迫力だ。 9月。恒温機のアリたちはほとんどが越冬モードに入ってきた。 キイロシリアゲアリの女王に今年も遭遇できた。 翅のついた女王だがこの後翅を落とした。 また、末には河内長野に出かけた。 予想外にチクシトゲアリの初期コロニーを出すことができた。 キイロヒメアリにも挑戦したがまさかの脱走を食らう・・ 10月。新規開拓を狙って八尾市の水呑み地蔵周辺に出かけた。 アズマオオズが良く見られるポイントがあったが前提的にはあまりアリが見られなかった・・ 夏に採集したアシナガアリが働きアリを育て上げるのもこのころだ。 11月。とても忙しく、フィールド観察すらままならなかった。この月から越冬管理に移行。観察日記も不定期化した。 12月。恒温機内の温度計は8℃前後で維持できていて、アリたちの給餌もかなり間隔があいている。 今年はフィールドの新規開拓があまりできなかった。 それでも夜間観察がとても面白く、アメイロケにも再三挑戦できたのは良かったと思う。 ヨツボシ大脱走は痛すぎだった。 それでも、クロナガの女王の集団巣作りに遭遇でき、観察は結構楽しめたと思う。 以上、早足で今年のダイジェストをお送りした。 来年の目標はまた明日、元日に行う予定である。 それではみなさん、良いお年を・・ |