2011年3月の観察日記
3月1日 | 3月。しかし、初っ端からあまり面白くない話題を取り上げなくてはならなくなった。 それは去年のお盆に高野山で採集したケアリコロニーだ。 Q2体制が崩壊した。 昨日、寝る前に観察したら女王のうち1匹の腹部がひしゃげていた。 物理的ショックかとも思ったがそのようなショックを与えた覚えもないし、昼間恒温機に触る人はいないので不思議だった。 今日になってその女王は死んでいた。 しかし、もう1匹の女王にも問題が発生していた。 問題の女王の頭部。右触覚先端が切れている。 こういう芸当ができるのはアリしかいない。という事は女王同士で争ったか、働きアリに攻撃されたかになる。 現場を見ていないので何とも言えない。 ただ、この女王、昨日までと違い、働きアリ集団から離れてぽつんとしている。 かつて、ミカドに馴染みかけながら追い出されるように死んだトゲの例に似ている。 卵や幼虫を世話する働きアリ。「和解」の日は来るのだろうか・・ |
3月2日 | 昨日取り上げたケアリ女王。今日見たらお亡くなりだった。 あまりにあっけない崩壊劇に開いた口がふさがらない。 高野山で採集したケアリはあと1匹、子育てがとても下手な個体だけになった。 とりあえずこの個体を石膏容器に移し、昨日写っていた卵や幼虫をぶち込み、ゼリーを与えた。 うまく行くかな・・ それにしてもケアリとは相性が悪いね・・ |
3月3日 | 去年新女王を採集して立ち上げたアシナガアリ。結構順調で働きアリが次々と生まれている。 コロニーの様子。 まだ働きアリは弱弱しい体型だがちゃんと育児をしているようだ。 働きアリの腹部も大きく、乾燥さえ気を付けたら割とうまく行きそうな気はする。 |
3月4日 | オオズ。 兵アリの蛹が確認できた。 どうもぼけてるね・・ オオズはなぜか光加減が他の種類の巣部屋より難しくなかなかくっきりしたものが撮れない。 兵アリは去年生産されなかった。 それが餌をローチにしてから急に大型幼虫が出るようになったのだ。 この種類はどうも寒さに弱いようで越冬中に結構な数の働きアリが死んでしまった。 ただ、卵はたくさんあるのでそれほど悲観はしていない。 |
3月5日 | ヨツボシオオアリ。すこぶる順調だ。 メイプルの水割りを飲む大型働きアリ。なかなか大型働きアリは生まれない。どれくらいの栄養をぶち込めば生まれるんだろう。 巣部屋その1。幼虫メインの部屋だ。 巣部屋その2。繭メインの部屋。中型働きアリの蛹はそこそこ見つかるが大型は・・ 繭はまだ大半が白く羽化まではもう少しだろう。 |
3月6日 | クシケ。蛹が色づいてきた。 蛹は色づいたが数がやや少ない。 ローチをわんさか食べてくれたら心配ないんだけど、ローチ、あまり食べてくれない。 困り者だ。 |
3月7日 | クサアリモドキ。実はそれほど大して動きがないのだ。 卵塊もこれくらいの大きさのままあまり変化がない。 まだ、越冬幼虫で蛹になりきっていないものもいる。 大体大きくなってるので大丈夫だとは思うが、どうも活気が少ないような感じがする。 ただ、肉餌はとてもよく食べてるのでその辺に希望をつなぎたい・・ |
3月8日 | テキストだけ。 伊那で3年前の夏に採集したミカドコロニーだが繭が続々とできている。 温め始めてすぐにたくさんいたオスたちが姿を消した。 おそらく食われたんだろう。 繭の数を見ていたら結構安定してるように思うが少し増え方が頭打ち・・? |
3月9日 | 今日もテキストだけ。 アメイロアリはすこぶる順調。働きアリがいなかった1コロニーでも最近働きアリが羽化したようだ。このアリは乾燥にさえ気を付けたらかなり飼いやすいのではないかという印象を持っている。 |
3月10日 | ムネアカオオアリ。温度を上げて最初の卵塊は幼虫になり始めた。 繭は2つのまま。特に最初繭になったものは一向に羽化しない。 死んだなら食われると思うので生きてると思うが、よく分からない。 繭周辺。色は濃くなってるので羽化はそう遠くないと思うけど・・ |
3月11日 | 東北地方を中心にかなり大きな地震があった。 大阪も震度3という事だった。 幸い、恒温機内に積み上げた飼育容器で落ちたりしたものはなかった。 被災者の方々のご無事を切に祈る次第である。 そんな恒温機内のアリで、クロヤマアリでようやく繭が現れた。 石膏の汚れた部分と色が同化してますね・・ 育った幼虫が見られるようになってきたのでサイクルがようやく動き出したかな? |
3月12日 | ヨツボシ。白っぽい繭ばかりである。繭を作る時の素材が何もなかったらこういう色になるのだろうか。 頭と腹部が大きい。大型働きアリになるのだろうか?それにしては繭の大きさがやや小さいように思うが、こればかりは羽化しないと何とも言えない。 |
3月13日 | 暖かい一日だった。 そこで常温飼育を行っているウメマツオオアリに肉餌としてローチを与えてみた。 大好評だった。 同じアングルでもう1枚。これから、常温飼育組にも肉餌が必要な時期がやってきたようだ。ただ、今週は週の半ばに寒の戻りがあるというので常温飼育組は様子を見ながらの給餌になる。 |
3月14日 | クサアリモドキ。 卵塊の色が少し変わって色が濃くなってきている。写真を写したがぼけて没にしたが幼虫も数匹孵化している。 ただ、正直言ってどうも苦しい。 幼虫は育つ。 ただ、繭になるとすぐに食べてしまうのだ。 ミールワームは去年よりも多い量を与えているし、肉餌は不足しているとは思わないがちょっと自信がなくなってきた。 ただ、このまま手をこまねいていても仕方がないのでミールワームをさらに増量して孵化した幼虫の成長具合で調節していきたい。 |
3月15日 | ヤマクロヤマアリ。幼虫が孵化し始めた。 塊を咥えているのは女王である。 肉餌はよく食べるのでそれが救いか。 なお、今日から肉餌を大量に必要としているコロニーに対して一昨年少し与えた乾燥ミミズを与えて様子を見ることにした。 これなら肉塊に近いので無駄が少ないし、肉そのものだから需要にある程度耐えられるという見地からだ。 |
3月16日 | 久々のチクシトゲアリ。 産卵は続いていて、幼虫も育っているがかなりスローペースだ。 だから最近登場機会が少なかった。 繭と働きアリ。繭の色が濃くなってきた。羽化も近いだろう。 |
3月17日 | ムネアカ。4匹目の働きアリが羽化した。 羽化して間もないようで色が淡い。 サイズは小さい。育った幼虫もそこそこいるので肉餌さえ切らさなければ大丈夫とは思うが一気の増加は望み薄なのでまぁ、できるだけ多くの働きアリを生産させることを目標にしている。 |
3月18日 | ヨツボシオオアリでも羽化が始まっていた。 腹部の紋の色が淡い。体色は結構濃いのでうっかりすると見過ごすところだった。 写真のアリのように割と大型の個体も羽化している。しかしそれでも最大級の働きアリは生まれない。 |
3月19日 | 晴れて暖かい一日だ。そこで、ふと思い立って去年の春に訪れて以来ご無沙汰だった鉢ヶ峰に行ってみた。 記憶を頼りに進んでいく。今回は前回案内してくれたのび氏がおらず、一人で探索だったので記憶だけが頼りだった。 去年、シベリアカタアリを採集したポイント付近で枯れ木の上にいた甲虫。一瞬ノコギリカミキリかと思ったがよく見たら体型が違う。よく分からない種類だった。 竹林内で湿った枯れ竹を割るとミカドサテライト。羽アリは見かけなかったがこの種類ではよくあることではあるが女王は見つからなかった。 去年、ヨツボシを採集した竹林へと降りる経路は確認したがどうもあの辺は足場が少し不安定だったので一人では不安があったのでやめ。 最後に諦め気味で陽当たりのいい場所で直径1センチにも満たない竹を割るとウメマツオオアリが出た。しかし、これもサテライト・・ 別のポイントで予想していない竹を踏み抜いてしまった。そうしたらクロヤマアリがいた。 よく見たら端を土で覆っている。 こういうのは枚岡でハヤシクロヤマで2回ほど確認していて女王のいる確率は2/2だったのでこれはやった!と思い、あけてみた。 働きアリしかいなかった。 そんなことないだろう・・と思って周囲を見たがやっぱり働きアリだけ。 結果。観察したのはミカドサテライト2コロニー、ウメマツオオアリサテライト1コロニー、あとクロヤマアリの小集団1つという寂しい結果だった。 それでも竹林内で観察していた時、私のすぐそばで鶯が大きな声で鳴いて楽しむことができた。 |
3月20日 | アメイロアリ。今のところ問題なくコロニー規模が拡大している。 女王。小さな体なのに卵をよく産んでいる。 卵の世話をする働きアリ。ここに写っている卵塊はまだほんの一部だ。 働きアリ。いつ見てもとても美しい種類だ。 |
3月21日 | クサアリモドキでは越冬後産卵された卵から幼虫が孵化している。 色が入っているので食べ物はちゃんと食べてるようだ。 卵塊の一部。でも、実際はそれほど多くない。 どうも今年のクサアリモドキは変だ。 繭を剥いでは食べてしまうし、女王の産卵数も増えてこない。 袋小路に迷い込んだ? |
3月22日 | 去年の秋、キイロシリアゲの女王団子を見つけたと書いたが続報を書いていなかった。 温め始めてしばらくしてから産卵が始まった。 小分けにしてるとはいえ、入れ物の数の都合でどうしても通常より女王数が多い。 そのためかべらぼうな卵がある事態になっている。 塊その1。女王の腹部は結構個体差があって大きなものもいれば小さなものもいる。 塊その2。とにかくべらぼうな卵はお分かり頂けるかと・・ |
3月23日 | 高野山で採集したケアリ。最後の1匹で卵を産んでは食べの繰り返しで果てしなくダメモードだったのだが、Q2コロニー崩壊の時に残った卵と働きアリ1匹で(何故かこの働きアリは1番一緒に入れておくと翌日にはなじんでいた)再スタートした。 働きアリと女王。蜜を飲んだので女王と働きアリもお腹が膨れているがそれを差し引いてもこんなに体格差がある。 女王の陰で撮影しにくかったが何とか撮影できた卵と小さな幼虫。幼虫は以前のQ2の子供だと思われる。最初、卵をなかなか産まなかったが最近になって少しずつ産卵するようになった。 |
3月24日 | ヤマクロヤマアリでは繭ができ始めた。 今現在繭は2つ。幼虫は20ほどだろうか。毎年書いてるように思うがどうもクロヤマアリのように爆発的な産卵は見られない。 増えてほしいんですけどね・・ |
3月25日 | キイロケアリ。第2世代ともいうべき幼虫群が現れた。 一部。幼虫はもう少し存在している。 卵塊。大体常にこれくらいの大きさを維持している。 働きアリと幼虫。綺麗なアリだ。 |
3月26日 | コオロギが届いた。 とりあえず与えてみたがローチのように素早く逃げ回らないし、ミールワームのように刻む手間もないので非常に餌やりの時間が短縮できた。 そして与えたアリでは結構受けがいい。 これはウメマツオオアリ。最近肉餌不足を示す傾向が見られたので投入したらあっという間に貪っていた。コオロギは表皮が柔らかいので食べやすいのだろう。 |
3月27日 | 寒い日だった。10℃ほどまでしか気温が上がらず、野外観察は来週以降にした。 昨日与えたコオロギだが、概ね好評だった。 これはムネアカ。幼虫の体内に万遍なく色が入り、かつ女王も幾ばくか食べたようで腹部が凄く大きくなった。 クシケ。1枚目。 2枚目。全体像。ご覧のとおり、硬い頭部以外全部食べてしまった。 コオロギを食べたコロニーはどれも腹部を中心に食べている。 脚部は真っ先に外されて幼虫の餌になっているようで1本1本の足に噛り付く幼虫が見られる種類もいる。 そうして腹部を食べて背中胸部と食べていくパターンのようだ。 私の感覚ではクシケが一番コオロギを喜んでいるような感じを受けている。 |
3月28日 | クロナガアリでは働きアリがいつの間にか4匹になっていた。 最近、他のアリの世話が忙しく、給水する以外はあまり様子を見ることがなかったのだが、それが幸いしたのかもしれない。 とにかくふたを開けたらこの4匹の働きアリ、凄い勢いで走り回る。 4匹の写真は撮れなかった・・ |
3月29日 | アシナガアリ。コオロギがすこぶる受けがいい。 コオロギに群がる働きアリ。実はこのコオロギ、昨日与えたものだが、どうも少し数が多かったようで餌場に放置されていたものを解体処理している最中だった。ちなみにこの写真撮影の後、すぐにコロニーの中に運ばれていった。 巣部屋の中でコオロギをせっつく働きアリ。ちなみに上の写真のコオロギとは別のものである。 小さな幼虫の写真だが、ちゃんと色がついていて肉餌が行きわたっているようだ。 |
3月30日 | クサアリモドキ。少し不思議な幼虫を見つけた。 それがこれ。比較対象があいまいなので分かり辛いと思うが、この幼虫、かなりサイズが大きいのだ。 そしてどうも蛹にならずに死んで喰われている節がある。 さて・・この話、どこかで覚えがある。 そう、以前冬に加温飼育したトビシワだ。 あの時も加温飼育した幼虫は成長せず、死んでしまった。 その後、春になって産卵された卵から普通の幼虫が普通に成長していった。 最近のクサアリモドキの不調はひょっとしたらこの辺に? ちなみに卵からは今、小さな幼虫が次々と孵化している。 卵塊の大きさもそれほど変わっていないし、どうも最近産卵を少しずつだがしているような雰囲気があるのでひとまず峠は越えたのかもしれない。楽観はできないけど。 |
3月31日 | 昨日に引き続きクサアリモドキの話題。 このコロニーは以前からそういう傾向が見られたのだが、どうもこのコロニー、ミールワームがかなりお好みのようだ。 ローチとコオロギを与えてみたが殆ど食べていない。 そうして刻んだミールワームはいつも翌日には中身が空っぽになっている。 小さな幼虫はどれも今のところ順調に育っているので何とか盛り返してもらいたいものだ。 |