2010年12月の観察日記

12月1日 チクシトゲアリコロニー。恒温機に放り込んだらすっかり越冬モードのアリ玉を作っている。

アリ玉を撮影。寄生種のように完全な団子ではなく少し平べったい形になっている。

アリ団子を少し拡大。かなりの密集度だ。

そんな働きアリを見ていて、1匹変わり者を見つけた。それが上の写真の個体。脚の色が他より明らかに淡い。蛹はなかったので羽化したての個体とも考えにくい。多分個体差なんだと思うが少し面白い。
12月2日 チクシ2連弾。今日は単独女王の方。

チクシって結構体がごついのでなかなか全体にピントを合わすのが意外と難しいような気がする。

角度を変えて撮影。色彩、結構クロヤマアリの銀光に似て私好みの色彩だ。
12月3日 越冬組は相変わらず。アメイロケアリの写真を写そうかとも思ったが、相変わらず疎外されている女王の状態で変化がなく、アリ玉の中に幼虫がかくまわれてなかなか出てこない。
最近体調不良が続くので、餌をやる手間が省けるのは少しありがたいがそれでもやっぱりこの時期は退屈だ。
12月4日 ミカドオオアリとクロオオアリに寄生させているトゲアリで行動に少し違いがあることに気が付いた。
ミカドオオアリに寄生させたトゲアリは暖かくなると未だに匂い付け行動のように働きアリを舐めまわす。
一方、クロオオアリに寄生させた方は全くそういう行動はしない。
クロオオアリのほうがミカドより働きアリの個体数が多いゆえなのかもしれない。
しかし、もしトゲアリが本来のホストではないという事を見破り、慎重に匂い付け行動をしてる・・なんて考え過ぎだろうか?
12月5日 以前、YASUさん達がアリの体内には活動季節を春からカウントダウンする「時計」のようなものがあるんじゃないか?という話をされていた。
今日、私の過去の観察日記を読み返したらそれはどうもその通りであるようで23℃飼育で大体(シワクシケのように温度変化に鈍感なものもいたが)産卵および育成期間は5〜6か月程度であるようなのだ。
後の期間は活動していても産卵はしない状態。
ただ、今年は温度設定を当初少し高くしてしまいその分産卵期が少し短くなったように思う。
とりあえず、22,23℃が亜高山帯から来たヤマクロヤマと、平地のアリとの妥協点なんだろう。
そして、来季のチクシトゲアリのこと。
このアリ、どうも温度変化もしくは環境変化にかなりシビアなんじゃないかという気がする。
普通の時はいいのだが、いったん何かで「スイッチ」が入るとコロニーがあっという間に崩壊する。
そのスピードは他種の崩壊速度より早く、まさしく「あっという間」に死骸の山になってしまい、そうなると復活は極めて難しいように思う。
今回、運よく2006、2007年に続き3回目のチャレンジをすることができる。
しかし、この崩壊を起こさずに維持していくには細心の注意が必要だろう。
見た目はすごく美しいアリほど飼育難度が高いのは(エゾアカしかり、チクシしかり、トゲしかり)何だかある意味皮肉にも思える。
12月6日 クロナガアリ。一時期3匹まで働きアリがいたが不注意で3匹の働きアリが死んでしまい、その直後に1匹働きアリが生まれた。
この1匹のおかげで綱渡り的ながらコロニーが維持できてるようなもので、その後続が早く育ってほしいと思っている。

卵塊を移動させようとしている働きアリ。

そんなクロナガコロニーで幼虫が生まれていた。
女王1、働きアリ1の超零細コロニーゆえか産卵数も少ない。
クロナガはもうずっと複数雌からの立ち上げばかりだったので1匹の女王からのコロニーの場合、産卵数ってこんなものなのかなぁと思ってしまう。
12月7日 クサアリモドキが引っ越ししない理由がわかった。
越冬モードに入ってるというのが主要因なのだが、もう一つ、接続チューブの中にどうやって入り込んだか全く不明の水滴があるのだ。
水の層は2ミリほどなのだがアリにとっては十分な壁になってるわけで・・
とりあえず加温したらこれは蒸発すると思うので、その時巣部屋に給水して移動をスムーズに行えるようにしたい。

そんなクサアリモドキの働きアリ。この冬は越冬期間、餌を一切与えていない。餌場に湿度保持の水を張った皿を置いてるだけだ。
しかし、アリの活性が極めて鈍いし、この腹部。
この種類は大丈夫とみている。
12月8日 チクシトゲアリに容器を明け渡して、しばらくの間プラスチックケースにスポンジを入れた簡易飼育部屋に入れてあったヤマクロヤマアリを石膏を敷いた巣部屋に移動させた。
働きアリの個体数も年々減って今では20匹ほどがいるだけ。
どうも活動初期に肉餌をどばっと与えていないのが原因だと思われ、毎年これを注意してるのだが活動期が平地のものよりやや早く店じまいするのでどうも・・

そんな女王様。この色艶、クロヤマアリやハヤシ、ツヤとはまた違った美しさがある。

働きアリ。どうもなかなか大型の個体が生まれず、矮小な個体ばかりだ。

また、昨日書いたクサアリモドキのチューブ内の水を今日、爪楊枝とティッシュでふきとった。その時、チューブ内に幼虫が詰められているのを確認。うん、大丈夫そう。
12月9日 残念なことが2コロニーで起こっていた。
1つはトゲアリのうち、クロオオアリを少数しか従えていなかった女王が死んでいた。
もう1つは夏に採集したアシナガアリで働きアリは元気なのに女王だけ・・
これで今年新女王からスタートしたアシナガアリで生き残っているのは1つだけになった。

アメイロケ。相変わらずアリ玉に潜り込もうと必死なのだ。

幼虫を取り巻く団子に少しでも潜り込もうとしているように見える。

同じようなアングルでもう1枚。この女王、うまくアメイロケのコロニーを立ち上げられるのだろうか。アメイロケワーカーが生まれたら状況は変わると思うが、とりあえずある程度のアメイロケワーカーが羽化するまで全く気が抜けない。
まぁ、産卵しただけでも去年よりはずっと進歩してるんだけど、寄生種は本当にドキドキさせてくれる。
12月10日 クサアリモドキ。越冬モードに入ったのがよりによって不透明なチューブ。それでも様子を伝えてみたいと、写真を写してみた。

この場所は餌場への開口部である。働きアリの団子が口から溢れるような形になってるので女王も開口部付近にいると思われる。

もう1枚。この容器だけ、餌場と巣部屋をつなぐチューブの径が違っていて差し込み式になっていて着脱可能なので少し外してみたら餌場の方のチューブのごく狭い範囲に幼虫も詰め込んでいるようだ。観察上は不満だがアリたちにとっては多分これが「心地いい」間隙なんだろう。
12月11日 どういう構造になってるのか、昨日紹介したクサアリモドキの連結チューブのうち、径の細いものにまた結露がうっすら付着していた。このままではまた水滴になるのが目に見えているのでこの太いチューブ1本で接続できるように巣部屋のチューブ穴をリーマーで拡大してねじ込んだ。その際、少しだけだが女王の頭が見えた。元気だった。とりあえずこれで越冬継続してもらうことにしよう。

今日はアシナガアリ。コロニー採集したものだ。

越冬モードに入っているが室温に出すとすぐに動き出す。思ったよりも低い温度でも活動できるのかもしれない。

幼虫群(の一部)。特に減っていないので問題ないようだ。
12月12日 クサアリモドキのチューブを変えて中の湿度環境が変わったのだろう、女王がチューブの中から出てきた。

アリ玉。この中に女王がいる。

撮影していたら女王が動き出した。働きアリが女王に「乗っかって」いる。

働きアリとの比較。やはりゴツさにおいてどっしりとした風格がある。

腹部もそれなりに大きい。今年こそはばんばん増えてほしい。クサアリモドキの産卵量は去年、今年と体験してるので、あれが全部成虫になったらあっという間に今の容器では手狭になるだろう。
ただ、観察していると幼虫同士噛み合っているのか死亡個体も見られるのでその辺が肉餌不足による噛み合いなのか元来の習性か微妙なところだ。
12月13日 ムネアカオオアリ。去年は少し増えたと思ったら働きアリがなぜか死んで結局Q1、W3幼虫2匹の超零細コロニーである。
餌の食いとか見てたらそれほど問題ないと思うが、来年はある程度は増やしたい。

働きアリ。初期ワーカーよりは少し体格がよくなり、弱弱しいという表現は少し当たらない。

女王。こちらもお腹は大きいので産卵が始まればいいペースで行ってくれると思っている。
12月14日 8月7日に枚岡山で採集したムネボソだ。このコロニー、紹介しなかったのには一つ訳がある。
それは「あまりにも何の動きもない」からだ。
ただ、たくさんいた女王はいつの間にか少し減った。恒温機内で見かけたことがあるのでどこかから逃走した可能性があるがヒメアリやトフシですら逃げ出さないような入れ物での逃走・・?訳が分からない。
このアリも越冬モードに入り、ふたを開けてもすぐには動きださないようになったので今回少し写真を撮影してみた。

働きアリ。このアリもトビシワに似ているがやや小さい。

メスには翅の付いた個体がいる。多分結婚飛行前に採集したので飛行の機会がなく、そのまま巣に居ついていると考えられる。

女王のうちの1匹。体型はトビシワに似ているがずっと小さい。

もう1枚女王。下に写っているが幼虫はたくさんいるがなかなか成長しないように思う。

さて、今回のムネボソアリは種類は何だろうとDBを漁ってみたが、色彩および土中営巣そして多雌という生態を鑑みると、ハリナガムネボソアリ辺りに落ち着きそうである・・
12月15日 クサアリモドキが数か月ぶりに石膏の巣部屋に戻った。
そこで、あることに気が付いた。
働きアリの数が減っているのだ。
アリ玉も明らかに小さく、寂しい大きさになっている。
幸い、幼虫がそこそこいるので持ち直してくれるとは思うが、チューブにいる間に死んだ個体がいたようで、餌場をよく見たら死骸が数個あった。
しかし、数が合わない。
脱走したわけでもなさそうだし、いったい残りの働きアリはどこに行ったのか・・

そんな寂しくなったアリ玉。容器が湿気で湿っていて写りがいまいちなのはご容赦願いたい。

少しアップ。一見、それほどでもないという印象だが、中に大きな女王や幼虫もかくまわれていることを考えたら私的には満足のいく数ではない・・

こうしてみたら、本当に玉だ。
12月16日 アリの観察日記を読み返して、大体のアリが温度が約20℃辺りで産卵を開始することが分かってきた。
すなわち、20℃くらいになって産卵のスタートラインという言い方ができるかもしれない。
今年は最初25℃の設定で失敗したので来年は22℃くらいで維持管理しようかと考えている。
さて、来年の恒温機内の「春」の訪れの日をそろそろ考えていく時期になったのかもしれない。
私も今冬はできるだけ眠っている時期を長くして実際の季節に沿うように・・と、当初考えていた。
しかし、意外な伏兵があった。
クロヤマアリだ。
この種類、2007年から飼育しているが今年は越冬管理で何がまずいのか、働きアリがちょこちょこと死んでいる。
この前、それを見つけて気休めにと巣部屋に給水と餌場にメイプルを与えたがどうも不安が拭えない。
それとクサアリモドキの件。
働きアリが予想外に少なく、とにかく早い目に勢いをつけたいのだ。
さらに、オオズアリ。温度を下げてから急に働きアリが減った。以前、オオズアリは寒さに弱いという記事を(ウインドノットさんのブログだったかな?)読んだことがあったのでこれも早くに温めないと・・と、気を急かす一因になっている。アズマオオズはこんなことはなかったのだが・・
さて、いつにしようか・・
過去の観察日記と、にらめっこしながら考えている。
もうすでにミールワームには乾燥糸ミミズを食べさせて富栄養化をさせている。
温度が低いので育つのが少し遅いがその辺は数でカバーすることになるだろう。
それと越冬モードを解除するにはコオロギも購入してやらないといけない。
ミールワームの硬い外皮を好まないと思われる種類もいるからだ(実際はミールワームで大体事足りるのだが)。


・・・と、まぁこの文を書いて今日はお茶を濁そうかと考えていた。しかし、事情が少し変わった。
今日、トゲアリに蜜を与えたとき、クロオオアリに寄生させているトゲアリで異変に気が付いた。

トゲアリの女王がクロオオアリのアリ玉から出て餌場のチューブに寄り添うようにいるのだ。
動きも少しぎこちない。でもよく見たら、この女王、腹部が少しだが肥大化している。

とりあえず、クロオオアリのいる巣部屋に戻したが、実は数日前、クロヤマアリに給水した時このコロニーの巣部屋にも給水をしたのだ。それが嫌だったのだろうか?
とりあえず何事もなく過ぎ去ってほしいのだが・・
12月17日 苦渋の決断だった。何故なら我が意に反する決断だから。
恒温機の温度を上げることにしたのだ。
昨日、全てのコロニーに給餌をし様子を見た。
オオズアリは働きアリが格段に減っていた。
クシケも働きアリが少し死んでいた。
クシケは越冬中に蜜餌がなかったためだと思う。例年はゼリーをおいていたのだが今年はそれをしなかったのだ。
確かに、大丈夫そうなものも多い。しかし、クサアリモドキも心配になったし、上記2種、そして昨日のトゲアリの事を考え、低温だとお腹がすいていて、餌を与えても体が動ないのではないか?と考えて加温を決断した。
本当に頭で議論させすぎて夜あまり眠れないくらいだった。
しかし、加温の前に(要はアリが眠っている間に)することが幾つかあった。
アシナガアリの巣部屋を増設することにした。これは以前から用意していた石膏を張ったものの穴を拡張してつなげるだけ。
チクシトゲアリの接続チューブの径も少し小さいので拡張。
ムネアカコロニーを小さな容器に引っ越しさせて今の箱を取り払い庫内の嵩を低くする。
将来的には100均小物入れから工具用PBケースに移行したいと考える。
安定した供給があること、脱走がほぼシャットダウンできるというのと一つ一つが小さいので汚れて換える時ができても手間が少ないと見たからだ。
そして恒温機を15℃に設定した・・
12月16日 アリの恒温機を15℃に設定して1日が経過した。
とりあえず、各コロニーの様子を見ていく。
クシケアリの女王は2匹いるのだが、1匹が越冬モード末期から動きがぎこちなかった。
そして2匹の女王ともお腹が小さくなっていたが、今日見たら1匹の元気な方の女王はお腹が大きくなっていて動きも活発。しかしもう1匹の方は相変わらず動きがぎこちなくお腹もそれほど大きくない。
ちょっと危ない感じがしている。
他は問題ない。チクシやヨツボシはまだ団子状態であるが他はある程度覚醒しているようだ。
当面は様子を見ながらの餌やりになるが肉餌はもう2,3日してから与えようと思う。とりあえず、エネルギー源となる糖分の摂取を第一と考えている。

アメイロアリ。1つ、働きアリがいなくなってしまったコロニーの女王が死んだが4コロニー残った。

働きアリのお腹も大きく、一安心だが、体が小さいため、乾燥に弱い。これから恒温機の温度が上がると、庫内湿度が下がる。注意して給水をまめにしていく必要のある種類だ。

アシナガアリの増設ケースへのチューブにはこんなものが。見ての通り、ゴミだ。今まで巣部屋の中にどんどんゴミをため込んでそこがある程度一杯になったら隣の部屋に引っ越していた。
しかし今回、ケースを3つ増設したのでどこにでも移動可能になった。またこうして掃除しやすくゴミを出してくれると掃除をするこちらとしてもありがたい。

ヨツボシ。全体的にまだ越冬モードの延長みたいな感じで10℃の時ほど密集はしていないがまだ活発に動き回ることはない。ただ、餌場に数匹働きアリが出てきているし、アリの密集団子の中にも少しだがお腹の大きなアリがいるので餌は摂りはじめているようだ。
12月19日 さて、恒温機を15℃に設定したが、それには一つネックになり得る種がいる。
それはヤマクロヤマアリ(レマニ)だ。
過去の観察日記を読み返すと生産活動は大体4か月ほど。
そう、今から本格的に温めたら5月の連休頃には生産活動が終わってしまう。
外界ではそれから夏に入り、恒温機内の温度も少し上がってしまう。
また、レマニだけでなく他の種類にも今年より3週間早く温め始めた悪影響が出ないとも限らない。
何とか、産卵および幼虫の成長をしない程度で且つ働きアリが栄養をつけるのに歩き回れるほどの温度というものである程度の期間維持が必要と感じた。
そして気象庁DBで野外のアリの活動が始まる2月末から3月いっぱいまでの気温を調べた。
そうすると大体3月末ころから20℃をうかがうような日が出てきて、クロヤマアリでは自然環境では3月末から4月頭に産卵を開始するのを過去にトラップで確認済みである。
私の出した結論は、温度を上げる間隔を広げて少なくとも設定上限の22℃に達するのに約1か月かけて去年と同じくらいの時期に22℃に達するようにするというものだ。
それでも、レマニは予定温度より早くに産卵を開始する可能性があるため、考えて部屋の室温でしばらく置くことにした。
室温は私がいないときは窓を開けるので風が吹き込み寒い日の日中は10℃を切るだろうし、私がいるときでも15℃くらいなので、何とか時間を稼げる・・と思う。
そして時期を見計らって恒温機に入れたい。
亜高山帯のレマニだけは特に気を使う。
12月20日 温めているクロナガアリ。急速に幼虫が成長して蛹が出始めた。

少し暗いが現在2つ蛹がある。

蛹の1個をアップ。まだ蛹になって日が浅いようで白っぽい。

小さな幼虫。産卵も少しだが続いているようで数個の卵が確認できた。
12月21日 今年の夏に採集したアシナガアリの新女王から立ち上がったコロニー。新女王は数匹採集したが1匹しか生き残らなかった。

コロニー内の幼虫。割と数はいるので女王の突然死さえなければ大丈夫そうな感じ。

働きアリの1匹。アシナガアリの初期ワーカーは独特の形をしてると思う。

女王。産卵はしていないが温度が上がればまた産みはじめるだろう。今はじっくり栄養を摂らせている。
12月22日 ミカドオオアリに寄生させているトゲアリ女王のうち、1匹が昨夜寝る前に何気なくチェックしていたら餌場に出ていて弱っていた。その日の朝、見たときはアリの集団にいたのだが・・
そして今朝、見たらこと切れていた。このトゲ女王の「死への家出」現象がなぜ起こるのかさっぱりわからない。
とにかく、ミカドオオアリは残ったトゲコロニーのミカドと合流させた。もともと同じコロニーから導入したものなので問題なく受け入れられていた。

相変わらず、ミカドの働きアリにマウンティングしている。それでもよく見たら腹部が少し大きくなったように見える。

マウンティング姿勢を別角度から。トゲは腹柄節の辺りが少し赤いだけで基本的に黒っぽいので色がよく似ているミカドワーカーに紛れて結構ぱっと見で判別できにくい。
12月23日 アメイロケアリ。この種類も越冬モードは抜けたと思われるが、幼虫を取り巻くアリ玉は相変わらずで、そしてまた女王がぽつねんとしているのも相変わらずである。

問題の女王。働きアリの集団に寄り添うようにいるのだが、一向に働きアリが懐いていない。観察していると働きアリによる威嚇行動らしきものも見られ、気が抜けない。早く自前の働きアリを育ててもらって名実ともに「女王」の座を手に入れてほしいものだ。しかし、それならなぜ急に大量産卵したのかという疑問が残る。一部は手なずけたと考えるしかない。

幼虫。体内に色が入ってるものもいるがまだ白いものもいる。
設定温度は一応15℃なのだが内部の温湿度計は12℃前後で推移している。
12月24日 恒温機温度を16℃に設定した。もう少し15℃で据え置こうとも思ったが、分かりやすく1週間に1℃上げることにした。
という事は2011年は17℃でスタートすることになる。
越冬から覚醒して産卵開始まで大体1か月ほどとみているので、それに近づけるようなスケジュールにしている。

今日はクサアリモドキ。
働きアリは大半が巣部屋にいるが以前のように団子でいることは少なくなり、幼虫や女王を取り巻きながら散開している。

働きアリ。夏の時より数が減っているように思えて仕方がないが死骸はほとんど見当たらなかった。逃げ出したわけでもないのでよく分からないが、なんとしても増やさねば。

女王。腹部は少し大きくなったようにも見えるがまだ目に見える膨張はない。働きアリが始終取り巻いてグルーミングをしている。

幼虫塊。小さな幼虫が多いが、数匹、成長したものも見られる。温度を上げて成長したのではなく、夏にある程度大きくなったのが休眠したのかそのままの状態で低温条件を生き延び、今に至っていると思われる。
12月25日 コロニー採集したアシナガアリ。先日、巣部屋を増設したがようやくその内の1つに半分ほど引っ越してきていた。

その様子。今まで茶色の絵の具で石膏を色づけていたが、茶色の絵の具が購入時に切れていたので黄土色のものを使った。

卵塊を運ぶ。この卵は温めてから産みはじめたものではなく、越冬期間中ずっとあったものだ。よく考えたらアシナガっていつもこんな卵で冬を越すものがいるように思う。
多分恒温機の温度の下げ方が急なのと夏を過ぎても産卵停止が起こらないからだろう。
12月26日 ヨツボシオオアリを今日見てびっくりした。
コロニーの1/3ほどの個体が餌場に引っ越しているのだ。
ヨツボシの飼育容器は石膏を使っていない、本当にプラスチックケースをつないだだけなのだが長い間ずっと一つの箱にとどまっていた。
それが今日になっていきなり引っ越してきている。
明日以降、様子を見てケースをもう1つ繋ぐか従来の餌場と巣部屋を交換することになるか決めていきたい。
12月27日 どのコロニーでもそろそろ肉餌への欲求が高まってきているようで、ミールワームの食いがかなり良くなっている。
その中でも最も食い気のあるのが幼虫数が多いアシナガ。久々に幼虫が群がって食べているのに遭遇した。

これを見るとなんだか嬉しくなってしまう。

別のミールワームの欠片もこんな感じ。少し拡大した。体を伸ばして食べている。

さて・・一安心・・と思い、とりあえず女王を確認しようとして異変に気が付いた。それがこれ。働きアリの1匹が女王の頭部に噛みついているのだ。

周囲はこんな感じ。噛みつく個体は頭部の1個体だけだが取り巻く個体も雰囲気が怪しい。
暫く見ていたら女王はこの包囲網を突破して周囲を少しうろついた後、また日常に戻っていった。しかし、こんなのを見せられたらすごく不安だ。せっかく個体数も多く、安定しているコロニーがなぜこのようなコロニーの自殺行為ともいえる女王への攻撃を行うのかさっぱりわからない。
12月28日 昨日記述したアシナガアリだが、1日経過して様子を見たら至って平穏であった。女王も当然ながら全く何事もなく歩き回っていた。ほっ。

今日はクサアリモドキ。このコロニーも肉餌を食べるようになってきている。

幼虫と働きアリ。体内に色が入り、ミールワームを食べていることが推察できる。

少し拡大したら暗くなった。幼虫を世話する働きアリだ。
16度環境ではどの種類もまだ産卵を開始していない。
先に書いたが20℃前後が大体の種において産卵開始の温度なんじゃないかという感じはしている。
12月29日 異変に気がついたのは昨夜だった。
アメイロケアリの幼虫が一気にいなくなってしまったのだ。
働きアリも団子を作っていないので大半が何らかの理由で食われたようだ。

訳がわからない・・
わけではない。
恥ずかしながら一昨昨日、餌場に水気のある餌を置いていなかった。それでも石膏の水分で行けると思った。
それが影響したとしか思えない・・
とにかく、もう一度産卵をしてもらって羽化を待つという大幅なタイムロスが生じてしまった。

そのコロニーの女王。腹部もそれほどぺちゃんこではないが、いまいちケアリワーカーと馴染み切れていない部分があるのでまずは産卵である。
12月30日 トゲアリ。腹部が少しだが大きくなったように見える。

女王アリ。落ちつきがでてきて最近は以前ほどうろうろしなくなった。

この写真を撮影した時、グルーミングしてると思った。しかしよく見たらミカドワーカーの1匹がトゲアリの胸部に噛みつこうとしているようだ。
全く・・馴染んだと思っていたらどうもまだ騙し切れていないのかもしれない。多分やり過ごすと思うが少し心配。
12月31日 2010年も今日で終わり。例年通り、今年1年のアリ日記のセレクションとでもいうか再掲写真を交えて振り返っていきたいと思う。

今年は1月7日に恒温機の温度を上げ始めた。去年のように2月過ぎまでは放置しておこうと考えていたが越冬モードに入って半年以上が経過して幼虫や成虫の体力が少し心配になったのと越冬状態半年経過したから温めても良いんじゃないか?と思ったのだ。
1日1℃のペースで温めて行ったが温度が上がるにつれ、必然的にアリたちの越冬モードは解除され動きが出てきた。

クサアリモドキの団子がほぐれて幼虫が露出し始めたころ。何だか今より働きアリの数が多い・・

一番早く産卵を始めたのはヤマクロヤマアリだった。
また、この月にはムネアカの大きなコロニーの女王を飼育していたが女王がチューブを通れず栄養を摂取できずに死なせてしまうという痛恨のミスもしてしまった・・

2月。
外は寒いが恒温機のアリたちは活発に活動していた。

クサアリモドキは越冬幼虫が繭を作り始めた。

その時期の女王。今思えばこの時期が一番女王の腹部が大きかったように思う。

3月。春分の日に大学時代の友人のび氏と堺市の鉢ヶ峰に出掛けた。
そこで、割と細い竹から私がシベリアカタアリを発見し、女王ゲットも成し遂げた。

その時の女王。シベリアカタアリの女王は初めて見たのと、最初の印象がヤマヨツだと思っていたのでびっくりしたし、嬉しかった。

また、その後すぐにアリに関しては素人ののび氏が少し太い竹(確か4センチくらいの直径だったのではないかと記憶しているが少しあやふや)からヨツボシオオアリの大コロニーを出したのにもびっくりした。今思えば竹の割れ目から頭を覗かせている働きアリを撮ったら良かったと思う。

4月。まず予想外に枚岡公園の梅林でカドフシアリのメスを見つけた。

あの場所でそのアリを見たことは今まで全くなく、何の種類か最初全然わからなかった。あの後、数回同じ場所で石をひっくり返してみたがカドフシアリを見たのはこの時だけだった。
また、今年の春は天候不順で桜の開花こそそれほど異常ではなかったが開花後、低温状態に入って桜が3週間も咲き続けたままという状態の年だった。
これがクロナガアリの飛行時期を直撃して4月の中旬に少し飛んだがその後まったく飛行がなかった。

ちなみに今飼育しているクロナガはその時採集したものだ。写真はその女王で翅を落としてるところである。
そしてオオズアリを近くの神社というまさに「目と鼻の先」で採集できた。今年は採集に夢中でコロニーの様子は撮影できなかったが暖かくなったら石をひっくり返してコロニーの様子を撮影してみたい。

5月。G.Wに入ってもクロナガはなかなか飛びそうで飛ばなかった。ただ、メスの羽アリを働きアリが咥えて追い出すような行動を見かけたので時期的には熟し切ってるという判断からG.W中に飛ぶとみていた。
結果として、それは当たった。しかし、午前に飛行したと考えられるような不規則な飛行が行われ例年の昼過ぎの時間に行っても潜った後という悔しい思いをした。

クロナガの女王が潜っていた穴。盛り土がしてあったのでそれを掘ると穴が出る。そういう穴には女王がいることが多かったが掘る道具を持っていなかったので採集は結構困難を極めた。
クロナガが終わったので枚岡のオオアリ採集に移行。ヒラズオオアリのはぐれ女王を採集したが、掲示板で指摘されるまで種類が全く分からなかった。

ヒラズ女王はもっと大きいと思っていたがあんなに小さいとは思わなかった。ただ、このあと数回、女王採集には至らなかったがコロニーを暴く機会があってヒラズコロニーが枚岡にもいるという事が分かった。
また、ヒラズ女王を見つけた日は運よくアメイロアリがたくさん飛んでいてある程度の数採集してきた。数年前のように交尾してる個体がいたら面白かったが大半が翅を落とした脱翅メスだった。
そしてヤマトシロアリの飛行日にもあたった。

好奇心で繋がっている雌雄を採集して飼育してみたら幾つかで働きアリの生産にこぎつけた。感触ではどうもティッシュだけではうまく行かず、木片を入れたものは高確率で働きアリ生産にこぎつけたように思う。
そして、運命の日、5月21日金曜日。
各地で飛行が報告され、私も気温、湿度、風全てにおいて飛行すると踏んだ。
しかしよりによってこんな日に残業で10時まで居残り。
翌日出かけたがオオアリのメスは全くいなかった。

またこの時期、シベリアカタアリはすごく順調で巣部屋に蛹や幼虫がたくさんあった。

6月。枚岡でハリブトシリアゲアリのコロニーを見つけて採集した。
また、数年ぶりにクロヤマアリのオスアリを見ることができた。

クロヤマアリのオスアリっていつ見ても変わったアリらしくない形をしてると思う。
そして忘れてはならないのが通称「デカクサ」のメスを採集したこと。
ケアリワーカーと馴染んでうまく行きかけたが死んでしまった・・・

しかし、やはり枚岡にも「デカクサ」は結構普通にいることが確認できた。

また、早朝採集に出掛けおびただしい数のケアリの飛び立ちにも遭遇した。

そして「デカクサ」とケアリ初期コロニー用に繭を結構な数採集したがそこからは予想外に寄生蜂が大量に羽化してきたのだ・・

7月。ケアリ祭りな月だった。
特に4日は3日、大雨が降った後、急きょ晴れて湿気充満の「飛行日和」になって、アメイロケアリの脱翅メスをお日様が高い時間に採集できるという幸運に恵まれた。あの時、ケアリワーカーを咥えて歩いているもう1匹のアメイロケを採集できていたら・・(カメラを構えている間にどこかに消えてしまった)

グルーミングされるアメイロケ女王。当初は問題ないように見えたがすぐに働きアリがちょくちょく威嚇行動らしきものを見せるようになる。
そして7月と言えばアシナガの新女王の季節だ。今年も数匹ではあるが採集することができた。

巣作りの場所を探して歩き回るアシナガアリ新女王。どうも朝のかなり早い時間に飛び立ちが行われているような印象を受ける。巣から出てくる瞬間を捉えてみたいものだ。

そして今季一番残念だった発見がこれ。ハヤシクロヤマと思われるアリの翅だ。ハヤシクロヤマは今年脱翅メスを1匹採集したが産卵せずに死んでしまった。ハヤシクロヤマはそれほど珍しくもないのだが新女王は広い範囲に飛び散るのかなかなか見つからない。

8月。とてつもなく暑い年で連日35℃オーバーの日が続いた。
避暑を兼ねて行った高野山ではいろいろと面白いものが見られた。

金剛峰寺(こんごうぶじ)境内でケアリの飛行に遭遇。羽アリが次々と出現していた。

その時のケアリは結構ほかのアリに食われている現場を目の当たりにしたのだった。

そして、お盆が明けてすぐのころ、諦めかけていた7月採集のアメイロケが突如産卵を開始した。

9月。連日暑い日が続き、秋分の日の前日まで暑かった。
アメイロケアリは結局3週間ほど産卵をつづけた後、産卵が終わって今年は終了になった。

中旬にようやく幼虫が孵化した。

高野山で飛行に遭遇し、採集したケアリ脱翅メのところでも幼虫が生まれた。今から思えばこれは常温飼育した方が良かったかもしれない。

10月。最初の休日に出掛けた枚岡で偶然サクラアリの飛び立ちを見ることができた。

サクラアリには少し興味があったので脱翅メスを探したが一向に見つからなかった。

しかし、その日の主役はまさにこのキイシリ団子だった。ほかのサイトで写真は見ていたがまさか自分が実物を見ることになろうとは思わなかった。今年は結構予想しない女王との遭遇が多かったように思う。



そして秋の主役トゲアリ、そして予想外のトフシの有翅メスを見ることができた。
この月から恒温機の温度を下げ始めた。

11月。
たまたまサクラアリのコロニーを発掘に出掛けた枚岡でトゲアリとまたしても遭遇。

クロオオアリも採集できたが、この時採集した2匹の女王死んでしまう・・
そして月末、河内長野にチクシトゲアリを採集しに出掛けた。

予想外にすぐコロニーがゲットできて本当によかった。このアングルってこの写真が初めてのように思う。

幼虫がやや少ないように思うが女王が元気だし、いう事なしだ。

12月。10月頃から体調的にはいまいちだったのがここにきて悪化してドクターストップを食らう。今冬は餌なしの水分だけしか餌場においていなかったのだが特にクシケにおいてこれが大誤算で恒温機を中旬に稼働させる羽目になった(アリに栄養を摂らせるため)
そして、今日31日に温度をまた1℃上げて17℃にした。
今のところ産卵は見られないが肉餌への欲求が高まっている。
特に肉餌への欲求が高いのが幼虫がたくさんいるアシナガアリだ。このコロニーは5月8日にコロニー採集したもので元から個体数は多かったが巣部屋を増設してから格段に飼育がしやすくなった。コロニー規模に対してかなり多めに巣部屋を増設したが今のところ吉と出ている。

そんなアシナガアリ幼虫。ミールワームに直接頭を突っ込んで食べるこの様式、結構見ていて面白い。

2011年のアリに関する目標等は明日、元旦に記述予定。

さて、写真を例年より大幅に多く使ったので長くなったがこの1年を振り返った。
皆さんにとって今年はどういう年だっただろうか。
ここをご覧の読者の方々、来年2011年もよろしくお願いいたします。
良い年をお迎えください。

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