2010年11月の観察日記

11月1日 昨日、引っ越しさせたトゲアリだが、一晩おいて夜に様子を見たら石膏の巣部屋を引き払って水気のない餌場にミカドワーカーが集まっていて、そこの上にトゲ女王がしっかりと居座っていた。
うん、これならちょっと怖いけど昆虫ゼリーで栄養をつけるという方法もいけるかな?
でもそもそもミカドワーカーが昆虫ゼリーを食べてトゲと栄養交換するまでがまた関門だ。
11月2日 少し冷え込んで、恒温機温度が11℃を示していた。
ここ数日、3週間に及ぶ風邪が悪化してなかなか思う日に餌やりできないありさまだ。
今は湿度管理にさえ気を付けたら大体のアリはそのまま眠っている季節なので良かったと思う。
本当は見栄えがしないのでテキストだけの日記はしたくないのだが、アリに動きがなくなってかつ体調不良というダブルパンチ。
ご容赦願いたい・・
11月3日 クロナガアリの「温室」に火を入れた。どんなのかは毎年と同じなので過去の日記を参照されたい。
入れる直前に様子を見たら動きが鈍かったが、入れてからしばらくしてから様子を見たら30℃という温度が影響してるようで活発に動き回っていた。
今のところ働きアリが3匹の零細コロニーなのであまり多くの種子を入れても処理できないと思われるのでちょこちょこ様子を見ながらの追加になる。
11月4日 昨日、全てのコロニーの餌交換を行い、観察も行った。
一つ、気になるものがいた。アメイロケだ。下の写真をご覧いただきたい。

言わずと知れた女王だ。これの何が問題かというと、この女王がいた状態だ。
クサアリモドキの越冬時の過去の写真と比較いただけたら差がお分かり頂けると思うが、この女王、アリ玉の中にいないのだ。働きアリの集団の片隅にいる。という事はケアリワーカーがアメイロケ女王を女王と認識していないか女王がフェロモンを出していないことが考えられる。

ちなみに幼虫のほうはこのように分厚い団子に包まれていた。
春以降が心配・・
11月5日 トゲ様。2匹の女王を写してみた。

まずはミカドの個体が少ない方。

次はミカドの個体が多い方。
写真ではわかりづらいが、実はこの2匹の女王、体格差が少しある。
2匹を見比べるとミカドの働きアリが多いほうに潜り込んだ方は胸部がやや細く腹部も小さい。
対してミカドの個体数が少ないほうに潜り込んだのは胸部がやや大きく、腹部も丸っこい。
観察しているとこの2匹の女王に共通した奇妙な行動も観察できた。
それは栄養交換「もどき」だ。
というのも、ミカドワーカーが口を開けてトゲ女王に餌を与えようとしている。
ところがトゲの女王があまり口を開かずすぐに振りほどくように顔をそむけてしまう。
この行動が、本来のホストではないミカドワーカーとの口器との違いによるものなのか、正直よく分からない。不思議なアリだ。
11月6日 サクラアリのコロニーを求めて枚岡公園へ。
とりあえず、道すがらアリの姿でも撮影していこうと思い、何枚か撮影した。

神社内を歩いているケアリ。数個体で行列を作っていた。

ドングリのゾウムシの幼虫だろうか?何かの幼虫を襲うアシナガアリ。

別の角度からもう1枚。
椋ヶ根橋に到着。しかし、この前来た時は石の上をサクラアリの働きアリが走り回っているのを見つけることができたが、っ今日は皆無だった。
石を少しめくってみたが全く何もいない。
土中営巣種の姿も殆ど見かけず、どうも越冬モードに入り、地中に潜ってしまったと考えた。
そこで少し方針を変えてその辺に落ちている枯枝折りを行った。

ハリブトシリアゲ「魔界」。なぜ「魔界」かというと個体数が恐ろしく多いくせに女王が全く見つからないうえ、枝を折っていると働きアリがシーズン中ほどではないが活性が出てきて手に噛みついてちくちくするからだ。ちなみに写真に写ってるのは全体のごく一部だ。

アリの部分を少し拡大。これだけいて女王が見つからないのだから不思議だ。

少し大きな石をひっくり返したら出たウロコアリ。これはそっと元に戻しておいた。

直径1センチほどの乾燥したやや硬い枝を折るとヒメアリが出た。

一応巣部屋(というか枝の中の空間)がどれほどの大きさか働きアリを入れることで想像できるようにしてみた。

ふと、そばの石を見ると何か動いている。けだるそうな動き。そして大きさと艶。一瞬で分かった。トゲアリだ!

この椋ヶ根橋の枝折りは収穫がほかにもあった。
程よく湿った直径1センチちょっとの中が中空になった桜の枯枝からなんとミカドが出た。
Q1、W1、幼虫少しの零細コロニーだ。以前、5月に同じような条件の枝からミカドの女王を出したことがある。どうも初期の女王はこういう枝に潜り込む個体もいるのかもしれない。
もう一つ、これまた直径1センチほどのやや硬い枝を折るとウメマツオオアリかイトウかの女王が単独で出た。他に見つからなかった。とりあえずゲット。

さて、トゲアリを採集したもののホストがいない。
そこで予定を変更して額田山のほうに上った。この辺にはクロオオアリのコロニーがいくつかあるのを確認していたからだ。

そうして上りながら石や土嚢をひっくり返していたらとうとう出た!坑道に沿って最初数匹の働きアリが見えるだけだったがその脇の土の塊をのけると噴き出すようにクロオオアリの働きアリが出てきた。坑道は横に伸びてるようだったのでその辺を注意しながら土をのけていくと何回も働きアリが噴き出した。1回1回の個体数はそれほど多くなかったが噴き出した個所が多かったのでなかなかの収穫になった。ペットボトル吸虫管が大活躍だった。

ほくほくして駅に向かうと、神社のクロオオアリコロニーのある近辺(5月に毎年チェックしてるコロニー)でまたトゲ女王が!

クロオオアリの巣口は閉じているが匂いでもあるのか土の隙間に顔を突っ込んだりしていた。

帰って採集したクロオオアリをタッパーに移した。ここから働きアリを少しずつ導入していく予定。
思わぬ収穫にホクホクだった。
11月7日 昨日採集したトゲアリ2匹。
クロオオアリと接触した気配がない。
離れた場所にぽつねんといるだけだ。
そこで働きアリを2匹導入して接触の機会を持たせた。
クロオオアリは内部温度10℃前後ではほぼ動きが止まるようで、出した直後は動かない。
トゲは若干低温でも動けるような感じなので冷えてる間に匂いが混和して馴染んだらいいな、と思っている。
とにかく、暫くは様子見展開が続く。
11月8日 方針を少し変えた。
土曜日採集したトゲアリはQ2でクロオオアリに入れることにした。
働きアリはそこそこいるのでいっそのことQ2で実験したくなったからだ。
昨日導入して少ししてみたら体格のやや小型のものが大型のトゲ女王に馬乗りになって匂い付けをしていた。クロオオアリは少ないためか威嚇行動はなかった。
今日、少し働きアリを増やしてみた。
1匹だけやたらと好戦的な働きアリがいるが私が見たとき、大型の女王がクロオオアリの働きアリを抑え込んでいるところだった。
その上にまたがるトゲ小型女王・・
不思議な図だった。
とりあえずある程度まで狭い空間で増やしていき、それが飽和状態になったら餌場への道を開通させ、スペースを増やして餌も与えてみる。
11月9日 昨日、クロオオアリを増強したら匂い付けが完全でなかったらしく、一部威嚇や攻撃をする個体が見られたのでクロオオアリの小型働きアリばかり6匹にして再スタートさせた。
今日見てみたら女王のうち1匹がクロオオアリを押さえ込んでいた。

写りが悪いが内部がどうも湿度が高い状態にあるようで容器が曇っていたのだ。
それでもクロオオアリを押さえ込んでいるのはお分かり頂けると思う。
とりあえずこれでしばらく様子を見て、押さえ込み行動が終わったらクロオオアリを少しずつ導入していきたい。
その際、クロオオアリにはあらかじめ餌をふんだんに与えておいてトゲアリに栄養交換が実現したら栄養補給ができるようにするつもりである。
11月10日 寒い日が続く。恒温機も帰宅した時にはぴったり10℃を示していた。
この時期、冷却の関係で恒温機内の湿度は70%以上に達する。
意外と、こういうのは夏場の蒸れとは違い、安心できる。
なぜなら乾燥しないし、温度が低く動けないアリには湿度こそが最大の維持要因と私は考えているのだ。
だから、むしろ加温を開始した直後は内部に水を入れた容器を入れるほど庫内湿度には気を遣う。
餌もトゲアリとウメマツオオアリが少し必要としてるくらいで他は殆ど食べてる形跡もないので当面はかなり手抜き給餌になってしまいそうだ・・
11月11日 昨夜よりはやや暖かい夜だがそれでも帰宅したら恒温機の表示温度は10℃だった。
トゲアリは朝見たら女王のうち、大型のものが働きアリ3匹ほどに足を噛みつかれていたが本気で噛んでいるわけではなかったようで入れ物を少し動かしてやると散っていった。
夜に見てみたら攻撃や威嚇は皆無だったので2匹さらに働きアリを入れてみた。
そうしたらすぐにこんな図になった。

トゲアリの2匹の女王が多分新参と思われるクロオオアリの働きアリの1匹を舐めまわしているのだ。
この行動は馬乗り行動がほとんど見られなかったのに働きアリを懐柔したミカドに寄生させたトゲアリでよく見られた。
そういえばケアリ寄生種でも噛み潰さないアメイロケの女王はこんなことをしていた記憶がある。この行動が匂い付けと関係してるのは明らかだが、どれくらい有効な作戦なのか正直効果を測りかねている。
11月12日 今日は仕事が早く終わり、明日は休みという事でゼリー組に給餌を行った。
ゼリー組に限定したのはゼリー組の様子をじっくり見たかったからである。
写真は写さなかったが動きがあった種類の大まかなところを記述する。
アメイロケアリ。
女王だけが孤立して壁面にいた。本当に女王として認められてるのか甚だ疑問だ。
ケアリ寄生種は寄生成功後は「アリ玉」を作って手厚くケアリワーカーに世話されるのが常だがこの女王はいまいちそういう気配がない。
しかし沢山卵を産んだという事はこの女王に栄養が行っていたことを間接的だが示すもので今いる幼虫が羽化したら少し展開は変わるかもしれない。
トゲアリ。クロオオアリとミカドオオアリに寄生させたものの様子もじっくり観察できた。
ミカドオオアリに寄生させているものはトゲ女王が万一にでも餌のゼリーや蜜に溺れて死ぬことがないように例外的に制限給餌(不断給餌ではなく、限られた分しか与えない)法で餌を与えているが前にゼリーを与えてから10日ほどたっていたのでミカドがお腹を空かせていたらしくゼリーを与えたらすごい勢いで群がり、栄養交換がそこかしこで見られた。
しかし、トゲアリへの栄養交換は全く見られなかった。
トゲアリの女王のもっぱらの関心はミカドの働きアリでとにかく適当な個体がいたら舐めまわす。この行為、されている方は相当気持ちがいいのかひっくり返って体の裏側を差し出す働きアリもいたほどだ。
クロオオアリに寄生させたトゲ2コロニー。
よく見てみたら軽い攻撃を受けているのは大型の女王のようだ。
小型の方は全くクロオオアリの働きアリに触られても攻撃はない。
といっても攻撃しているのは1個体しかいないし、ほかの個体は大型女王に触れても反応なしなので様子見。
トゲ女王同士が出会うと濃厚な匂い付けをしている。絡み合う、まさにそんな感じだ。
他は動きが全くなく、完全越冬状態だった。
11月13日 トゲアリのクロオオアリに寄生させた女王2のコロニーがあまりに落ち着きがない。
特に大型女王への攻撃が働きアリを増強するたびにエスカレートする傾向が見られたので止む無く1匹ずつの女王に分けた。
小型女王は殆ど攻撃を受けていなかったのでほぼ放置。
ただ大型女王を取り出す際、ふたを開けてアリたちが驚いて走り回ったためか小型女王もその後残った働きアリを念入りに舐めていた。

大型女王はとりあえず小型働きアリ1匹と同居させた。
すぐに猛烈な勢いで働きアリを舐め始めた。

頭の部分。

横から。クロオオアリがひっくり返っているほど猛烈な勢いで舐めている。
この後、暫く舐め続けて落ち着いたのでもう1匹導入したが攻撃は全くない。
クロオオアリが半分半分になってしまうのは少し痛いが致し方ない・・

2R目。
先の導入から約11時間、クロオオアリを入れているトゲアリの様子を見てみた。
問題の大型女王はクロオオアリの働きアリ2匹に触角と足を噛みつかれていた。
そこで働きアリを1匹に戻し、当面放置することにした。
小型女王。問題ない。女王の周りにクロオオアリが集まっていていい感じだ。

小型女王の写真。周囲にクロオオアリがいる。

もう1枚。
この小型女王のところには2匹、クロオオアリを導入した。

3R目。
2Rの時から約6時間が経過した。
先のクロオオアリと一緒のトゲアリを見てみた。
まず、2匹の働きアリを導入した小型の女王。
腹部を捕まえて匂い付けをしていた。威嚇や攻撃は全くなかった。

どうしても像が甘くなってしまっているが働きアリを舐めているのだ。ほかのクロオオアリは全く素知らぬ顔。

大型女王。こちらも1匹だけの働きアリを押さえ込んでいた。どうもこの女王は匂い付けの段階で失敗したのかクロオオアリに攻撃されやすい傾向があるようなので当面導入は超スローペースで行っていきたい。
11月14日 暖かい日で、恒温機も14℃を示していた。
クシケにミールワームを与えた。
今年は幼虫の数が少ないような気がする。
さらに、気になるのは働きアリの間で間引き行動らしきものがあることだ。
暖かい時期に観察していると特定の働きアリを数匹の働きアリが足を加えたり、触角を引っ張ったりと明らかに攻撃していてそういう働きアリはやがて死んでゴミ捨て場に捨てられる。
これが女王2のコロニーゆえの(遺伝子か匂いか何らかの違いを嗅ぎ取ってるとは思うが)行動なのか、クシケではこういう間引きが起こるものなのか、よく分からない。
この行動のおかげで今年はクシケは思ったほど増えなかった。
飼育の維持管理は容易な方に入ると思うし、タフなアリなのだがこの点だけが解せない。
11月15日 大失態な1日だった。
まず、クロナガアリを見てみたら石膏が乾いて3匹の働きアリが死んでいた。
幸い、女王と幼若個体は生きているがいつもと違う密閉に近い容器だという事で油断した。

それだけで収まらなかった。
この前枚岡で採集したQ1、W1のコロニー。
なぜかふたが開いていて女王が消えていた。働きアリは容器のそばで発見できたが女王は・・
凹んだ。
11月16日 昨日、書いたミカドオオアリだが記述後、女王が無事に見つかった。冬で活性が低いのであまり歩き回らずにいてくれたようだ。ほっ・・

そしてトゲアリ。クロオオアリを入れている女王2匹だが、明暗が分かれてきている。
大型女王。2匹働きアリを入れているがどうも攻撃が続いている。この女王は最初から攻撃を受けていたようだがいったい何が悪いんだろう?

そして小型女王。こちらも昨日働きアリを入れた後、噛みつく個体がいた。しかしほかの個体は全く無視だったので一日様子を見た。
夜になってみたら攻撃は全く止んでいた。そしてまた新たに働きアリを5匹導入。この女王はミカドの時のような手応えを感じる。働きアリを増やしても攻撃がないのだ。
後は栄養交換が見られて産卵したら一段落だが、一筋縄ではいかないことが分かっているので何とも・・
11月17日 連日のトゲアリ。小型女王にはクロオオアリを日に大体5匹から10匹くらい投入している。
攻撃や威嚇は殆どなくアリの集団の中に女王がいるといういい感じになっている。

その女王。周囲にいるクロオオアリは今のところ全く知らん顔。常に観察しているわけではないが栄養交換はまだ見られない。まぁ、今は導入優先なので餌場には何も置いておらず、ホストのクロオオアリに餌を与えて栄養交換からトゲ女王へ栄養を・・と考えているが、どう展開することやら。
11月18日 8月に高野山で採集したケアリ女王。女王2匹のコロニー1個と女王1匹のコロニー1個があるが、両方とも冷やし始めたときは繭があった。
しかし、今日見てみたら繭はなくなっていて小さな幼虫ばかりだった。
当たり前だが蛹の成長には温度が高いという条件が(幼虫のように寒さへの耐性が高くない)必要なんだなぁと感じた。
11月19日 久々にクシケアリを取り上げてみる。

クシケアリは10℃の世界でも蛹が成長できるらしく、羽化したての個体がまだ見られる。蛹もまだもう少しあるので年内はだらだらと羽化を続けるのではないかと思う。

女王のうち1匹。腹部の色つやもよく、まだまだ元気そうだ。

働きアリと幼虫。幼虫はやはり扁平な形に変わっている。
11月20日 トゲアリへのクロオオアリ導入が終わった。大型女王が手こずってる間に小型女王の方にどんどん放り込んで行って殆ど小型女王の方に行ってしまった。
今日は餌交換を行い、しばらく様子を見てみた。
ミカドに寄生させたものと違い、アリの密度が高いせいもあるのかどこかどっしりしてる雰囲気がある。それほどちょこちょこと歩き回らないし、匂い付け行動も殆どしなくなっている。
あとはそして恒温機のふたを開けたとき、クロオオアリの「アリ玉」の中心に潜り込んでいた。
寄生種にとってこれはすなわちホストの働きアリが女王と認めているという事でひとまず安心だ。
11月21日 本当は寄生種であるクサアリモドキも取り上げたいのだが、今冬はチューブに大半がこもってしまい、中の様子が全く見えない。辛うじて少数の働きアリがチューブの出口付近にいるだけで一向に面白い写真が撮れそうにない。

寄生種、アメイロケアリ。越冬中でいまいち変わり映えしないが写真を撮った。例によってアリ玉。この中に幼虫がかくまわれている。

そうして女王。何とかアリ玉に潜り込もうとしてるような印象だ。
それにしてもこの女王、変わってる。アリ玉を作らないし、栄養交換をしてるのも見たことがないのに卵を晩夏にたくさん産んだ。という事は栄養交換を積極的にしていた時期があるという事なのだが、産卵期間中でも栄養交換を見たことがなかった。
来年、温め始めてどうなるか、行く先が不安でもあり、楽しみでもある・・
11月22日 体調面でさんざんな1日で動けるようになったのが日付が変わるころだった。
とりあえず、明日休みという事で、トゲアリにメイプルを与えた。
私は、トゲアリに寄生させているミカドにせよ、クロオオにせよ、普段はあまり動かなくなってるので餌も必要ないと考えていた。
実際クロヤマやアメイロケ、クサアリモドキなど大多数は餌を与えても集団が散らばることはなく餌を食べてるか甚だ疑問だ。
しかし、そういう先入観は誤りだった。

栄養交換するクロオオアリ。最初、蜜を垂らした皿に働きアリが群がったほどだった。

これは1匹の働きアリに2匹が栄養交換をせがんでいるところ。

試しに、ミールワームの切れ端を入れてみた。それほど受けはよくなかったが首を突っ込んでいる個体もいたのでそれなり、というところか。
トゲアリはクロオオアリのアリ玉深くに潜っていることが多くなった。昨日の観察でも栄養交換は見られなかった。なかなか難しさを感じさせてくれる種類だ。
11月23日 少し気温が下がった。
恒温機内のアリの大半は越冬モードなのだが、一番見ていてそれが顕著なのがヨツボシオオアリだ。

とにかく群れている。活動期は割と巣部屋内にばらけていたが、今では左上部の方に団子になっている。多少動かしてもほとんど動かない。
11月24日 クロヤマアリ。
越冬モードで動きが全くない。
思えば今年は繁殖期間が少し短かったため、寿命かで死ぬ働きアリの数が今年生産された数よりやや多いようで去年の日記に写ってる数より少ない。

女王。この女王は来年の春で採集して4年になるが、元気である。この女王は丸っこく、色もきれいでお気に入りの種類なのだ。
11月25日 ミカドをホストにしたトゲアリで綺麗な「アリ玉」ができていた。

結構きれいな形になっている。どうやらこのミカドたちはトゲ女王を女王として認識したようで栄養交換の現場は見たことがないが採集した時より女王の腹部が少し大きくなったような気がする。目の錯覚かもしれないけど。
11月26日 10月3日に採集したキイロシリアゲ女王団子。数匹の女王が脱落したが総体としては無難な越冬生活をしている。

女王集団のうちの1つ。こんなのが合計5ケースに入っている。
側溝で雨が降り始めたとはいえ採集しすぎたかな、とか反省しているがとにかく採集したものはうまくコロニー創設まで持っていったやりたい。
といっても話は加温しないと始まらないんだけど・・
11月27日 本当は、もっと寒くなってから河内長野、滝畑ダム周辺に採集に行く予定だった。
しかし、今日ふと行ってみようという気になって出かけた。
出かけようと考えたのは今年は例年より寒さの訪れが早くその分アリのひそんでいるイタドリも枯れて折りやすくなっていると考えたからである。
狙いはチクシトゲアリだ。できればコロニー採集ができれば最高と考えて出かけた。

到着後、すぐにイタドリを折り始める。しかし、今年はどういうわけか細いものが多く、なかなか目にかなうものがない。それでもじっと斜面を見ているとだんだんイタドリの枯枝が見つかってきた。
折ってすぐ、ウメマツオオアリのコロニーが出た。ウメマツオオアリはサテライトの例も多いので期待せずに入れ物にあけてみたら女王がいた。この女王、触角の右先端が欠けていたがコロニーをちゃんと作っていたのだ。

そんなウメマツオオアリ。構成員はそれほど多くないが、大型働きアリもいる立派なものだ。

次に出たのはムネボソ。

同じコロニーのもの。ムネボソは今日は4つか5つコロニーを出したがいずれも非常に細い(直径5ミリくらいだろうか)のものから出た。

次に地面に接しているかなり湿ったものから、意外なアメイロアリが出た。オスも数匹見られたが女王は見つからなかった。

そして枯れきった枝を折ると、ついにチクシトゲアリの単独女王が出た!腹部が去年採集したものより幾分大きく見えるので今年飛行した個体なのだろうか。この種類の結婚飛行は全く時期がわからないので不安はあるが採集。ちなみに写真は採集後、フィルムケースに入れたもの。

更に折り進む。直径1センチほどのやや乾燥した枝を折るとアリが覗いている。一瞬、ウメマツオオアリかと思ったが、少しゴツい。

そう、まさにチクシさんそのものだった。以前、こういうコロニーを見つけたがサテライトで泣かされたので慎重に女王を探す。チクシは女王と働きアリとの間に形態差が少なく、大きさも似ているので女王を見分けるには胸部の大きさで見分けるしかない。眺めることしばし、いた!明らかに女王がいた!念願のチクシコロニーだった。
本当は今日は岩湧山登山道のほうにまで足を延ばす予定だったがあっさり目標完遂、そして歩くときに入れ物の揺れに反応してギ酸を出して壊滅したら嫌なので(この現象は枯枝とんとん方式ではほとんど起きず、吸虫管でアリを吸い取ると時々起る)帰ろうとした。
しかし、バスまで40分も時間がある。
そこでもう少し枝折りを楽しむことにした。

そうしたらミカドの初期コロニーが2つ出た。細いイタドリでこれも直径1センチちょっとというものだった。この写真もフィルムケースに落とし込んだ後のもの。

帰宅後、チクシトゲアリを収容。しかし、女王が判別できない。どうもアリ玉の中にいるようなのだが状態が正常であることを確認したかったので目を皿にして探すことしばし、ようやく見つかった。

今日の結果。ウメマツオオアリコロニー×1、チクシトゲアリ女王のみ×1、チクシトゲアリコロニー×1、ミカドオオアリコロニー×2。
特に今日はチクシ狙いで行ったようなものだったので狙いのものを手に入れられて満足な1日だった。
11月28日 27日に採集したウメマツオオアリ。写真を撮ってみた。

大型働きアリ。この大型働きアリ、コロニーの初期の段階から生産されるのだろうか。
というのも、このコロニー、それほど規模が大きくないと思われるのに大型働きアリが5匹以上いるのだ。

女王。隅にいるので写真が撮り辛かった。
11月29日 クシケ。少し変わったものが見られた。

蛹の残骸・・というか齧られて死んだと思われる蛹。これが部屋の隅にまとめられている。
温度が低いゆえに成長できなかったのか、肉餌不足のために齧られて死んだのか正直よく分からないが少し肉餌は重点強化したい。

コロニーの様子。上記の蛹の死亡がある以外は特に異常はない。

働きアリを拡大。以前にも書いたが、シワクシケアリというのはこうやってアップにしたら毛深い。
11月30日 ミカドに寄生させたトゲアリ。普段はアリ玉の中心にいるが、蜜を与えるときに室温においておくと団子がほぐれる。

しかし、ミカドとトゲって色彩がよく似てるので見分けるのに苦労する。クロオオアリなら腹部に金色の毛があり、ムネアカオオアリなら体色が赤いのですぐ見分けがつくが・・

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