2010年9月の観察日記

9月1日 アメイロアリ。どのコロニーも働きアリの多い、少ないはあるが順調に推移している。

一番働きアリの多いコロニー。その女王である。

コロニーの様子。卵も見られ、蛹もあるので上手くサイクルに乗ったという感じがする。
9月2日 アメイロケアリの卵塊は日々大きくなって今ではどんぶり勘定で100は卵を産んだ。
さて、今は9月だ。この卵のうち、どれくらいが孵化するのだろう。
一昨年飼育したモリシタさんは卵期間が長いのかクサアリモドキより孵化が遅く多くの卵が食べられたようで数において最盛期から比べたら孵化した幼虫はごくわずかだった。
それと、この女王、まだ油断がならない。
卵を産んでるということは餌を貰ってるということが間接的に証明できるのだが、それでも一向に働きアリが取り囲まない(こういう女王のまわりにできる「取り巻き」のことを専門用語では「ローヤルコート」というらしい)。
お腹も産卵数の割に大きくならない。
いつ、ケアリワーカーに反乱をおこされないかと冷や冷やしているのだ。
9月3日 昨日に引き続き、アメイロケ。産卵ペースが上がっていてきている。

卵塊を運ぶケアリワーカー。少ないと思われるかもしれないが、実はこれは卵塊の大体4分の1なのだ。どうも餌を交換して撮影する段になると卵塊がばらされて小さくなってしまう。

同じ個体をもう1枚。これ、4分の1ってことは・・産卵数は200辺り?私は基本的に殆どカウントしないので良くわからないのだが・・とにかく良く産んでいる。
後は早く孵化してくれることだけだ。
9月4日 シベリアカタアリ。働きアリが次々と餌場でカビが発生して死んで行き、ダメかと思っていたがここにきてどういうわけかカビの発生が止まり、死亡数も殆どなくなった。
しかし、コロニーには卵幼虫蛹がいないという状態である。
ここから、どう再建させるか・・

久々に女王がアリ団子から出ていたので写してみたが・・どうもうまく写せない。唯一少しだけ見れそうなのがこれ。腹部にピントが合ってしまってるが腹部もボンレスではない。
ただ、働きアリはそこそこ残ったのでこれからの復活に期待したいところである。
9月5日 アメイロケアリだが、今日観察してみたら脚部についていたダニが消え失せていた。
これで障害はなくなったわけだが、どうもここ数日産卵量が落ちているのか、数日ほどの急激な卵塊の膨張が収まったように思う。
思えば確か一昨年のモリシタケアリも産卵した割に孵化が遅く夏に産んだ卵のほとんどが食べられて孵化したのがごくわずかで越冬に入ったのを思い出した。
秋を感じてるのだろうか?
それとも単なる気のせい・・?
9月6日 ムネボソアリは2種類飼育している.
去年イタドリの枯れ枝から採集したものと、今年石の下から採集したものだ。
このムネボソ、種類は違うが共通項があることに気がついた。
驚くほどおとなしいのだ。
多少攪乱してものそのそと動き、蓋を開けない限り、巣部屋の中でも動きがない(触角や足を細かく動かしてるので生きてるとはわかるけど)。
おとなしいのは餌替えや写真撮影にとっては有り難いが観察する面からしたら少々面白くない。
9月7日 キイロケアリ。産卵数は減ってきているがまだ幼虫は成長していて数個ではあるが繭も見られる。

幼虫や卵、蛹の山。普段はこんなに一か所に固められていないのだが、今日は珍しく一か所に固められていた。

働きアリ。本当に黄色く美しい。

終齢幼虫をアップにしてみた。体のまわりに毛が密生しているのが分かる。

飼育しているキイロケアリは殆どが繭を張るのだが、一個体だけ裸蛹がいた。
9月8日 アメイロアリ。いたって順調で動きのある種が少ない現在、貴重なものであるかもしれない。

少しボケ気味になったがコロニーの一つ。大体どのコロニーでもこれくらいの働きアリを生産しているがそこからなかなか増えてこない。卵幼虫蛹はあるのだが。

働きアリのアップ。腹部が大きい。アメイロアリにはメイプルの水割りを与えているが溺死者も少なく今のところうまくいってる感じがする。

別コロニー。幼虫を運ぶ働きアリ。働きアリの小ささを考えていただけたら一見大きそうなこの幼虫も実はすごく小さいのがお分かりいただけるかもしれない。

同じコロニー。このコロニーの女王は卵を良く産んでいてこれくらいの卵塊を形成している。
やっぱり黄色のアリって美しいですね。
9月9日 9のぞろ目の日だ。
と言っても、別に普段と変わりはない。ただ言ってみたかっただけ。

キイロシリアゲ。先日、餌として与えたミールワームの頭部が大暴走してそこに卵がくっついて多くの卵を失ってしまったが産卵も回復してきている。
ただ、夏の初めより働きアリが減ったような・・
でも死骸は見ないし・・

働きアリ。小さいが、拡大して観察してみると実に愛らしい種類だ。

頭部から。

幼虫を運ぶ働きアリ。どの働きアリも色が薄く写っているがフラッシュの光によるもので、実際はもう少し濃い色をしている。
当初4匹で始まったこのコロニー、今年に入り女王が1匹死んだが影響はない。
ただ、どうも増え方がのんびりだ。
9月10日 ヨツボシオオアリ。このコロニーもやや越冬幼虫が少ないくらいでそれほど問題はない。しかし、3月にまさか竹からこれの大コロニーが出るとは思わなかった。

働きアリ団子。いたるところでこういう光景がみられる。

大型働きアリをアップ。どのアリもそうだが、大きく見てみると各種ごとに造形美というか味がある。
9月11日 今年新女王からスタートのアシナガアリ1コロニーで蛹が出現していた。

1枚目。女王の陰に隠れてしまった。

2枚目。どうも蛹は2個体いるようだ。アシナガアリは恒温飼育ができるようになって飼育の難易度がぐっと下がったように思う。少なくとも新女王からの育成に関してはかなりの高確率で働きアリ誕生にこぎつけられるようになった。
問題は、それからなんですけどね・・
9月12日 コロニー採集したアシナガアリ。すこぶる順調だ。

羽化したての働きアリ。どうも飼育していたら大型の働きアリがなかなか出てこない。
餌は十分に与えてるのだが・・

幼虫の群れ(の一部)。とにかく数が多く、餌の食いもいい。
9月13日 約1か月前に高野山で採集したケアリ。
ようやく卵が孵化し始めた。

こんなのが数匹いる。しかし、ケアリの割にえらく卵期間が長い。恒温機の23℃という温度が影響してるのだろうか?

女王。胸部がやや赤い。腹部も少し赤みがかっている。こりゃ、この種類もアメイロケのように越年が濃厚になってきた・・・
9月14日 昼頃、少し雨が降りまた涼しくなった。
夕方恒温機の温度を見たら設定どおり23℃になっていた。
10日ほど前、35℃以上まで気温が上がっていたとは信じられない下がり方。
その影響ではないと思うが、面白いものが観察できた。

ヤマクロヤマアリの女王。この女王、採集して3年になるがこれだけ腹が膨れたのは初めてだ。餌は2日に1回ゼリー+メイプルを与えている。
肉餌は与えても食べないので最近与えていない。ゼリーにたんぱく質が入ってるので、まぁいいかとも思うがこの膨らみ方は・・
9月15日 今月ももう半分が過ぎた。
アメイロケアリは産卵を停止した模様で卵塊の膨張が止まった。
それだけなら特に問題はないがどうも少しずつ縮小してるように思える。
このパターンは、一昨年のモリシタさんに似ている。
今で大体産卵開始から3週間だからあと2週間ほどしたら幼虫が孵化すると思うが、どれくらいの卵が食われずに孵化するかはよくわからない。
とにかく、1個体でも多くアメイロケ有の幼虫を得ること、それが今の目標だ。
9月16日 夏の初め、ミカドオオアリにオスが生まれた。生まれてすぐの数匹は食べられたがその後羽化したものは食われずに今も生存している。ところが、このオスたち、問題があるのだ。

1枚目。

また別の個体。そう、羽がだめなのだ。
1匹もまともな羽の者がいない。
あるものは縮れ、あるものはほとんど羽がなくなってたり・・
今までの野外でのミカド竹割りからミカドオオアリの有翅個体は成虫で越冬することは知っているが、これだけ不完全個体が続出するのは・・?
9月17日 アメイロケアリ。写真を多く撮ってみた。

女王。相変わらず取り巻きは殆どいないが、どうも普段は卵塊に寄り添っているらしい。

もう1枚。ご覧の通り、腹部はそれほど大きくない。

卵塊のごく一部を運ぶケアリワーカー。まだ卵はたくさんある。

そして、今日アメイロケアリを取り上げた理由、それはこれだ。

「それ」はケアリに手厚くガードされていた。

画像ソフトを使って拡大したが今回はこれが限界。
そう、幼虫が孵化していたのだ。
10匹ほどだが、昨日見たときは全くいなかったのですべて今日中に孵化したようだ。
大体1か月で孵化したことになる。
酷暑ともうべき残暑が影響してるとみるか、それとももともとこんなもの・・?
とにかく、孵化が始まったということは今日以降幼虫が一斉に孵化すると思われる。
どれほどの越冬幼虫を得られるか・・
とにかく、嬉しい。
9月18日 キイロシリアゲアリの女王がまた1匹死んでいた。
一昨日見たときは全く問題なかったのだが・・
気になるのはその死骸。
触角がなく、胸部を中心に傷があるように見えた。
ということは女王間で争いが・・?
痛々しく見えたのはその死骸にその女王の娘だろうか、2匹の働きアリがずっと寄り添って触角でつついたりグルーミングをしていることだった・・
9月19日 アメイロケアリの幼虫は増えると思っていたが最初の幼虫以降あまりというか、殆ど増えていないように思う。その幼虫を見ると体内に色が入っているので何かを食べているのは明らかなのだが、何を食べてるのだろう?ミールワームも入れているがあまり食べてる気配がない。
そこで一つの可能性として浮かんだのが、減ってきている卵だ。
これを幼虫に還元してるのでは・・?
とおもった。
今日は高野山のケアリの様子を撮影しようと思ったらストロボの電池が切れていた。
もう遅くなってしまったので、明日買に行こう・・
9月20日 昨日紹介予定だった高野山のケアリ。
幼虫が増えてきて、しかも大きくなってきている。

一番育ってる幼虫をアップにしてみた。

全体像。大体これくらいの幼虫がいる。

このコロニーは先に紹介したものと違い、女王2匹で飼育している。今のところ平穏だ。
9月21日 クサアリモドキ。幼虫は成長しているものがおり、体内にも色が入っているがミールワームを入れても食べてるのかよくわからない。
そこで、ミールワームの切れ端をクサアリモドキの集団の近くにおいてみた。

ミールワームにかみつく働きアリ。
一時だがミールワームの周りを取り巻くように集まっていた。
なんだ、食べるのね・・
その幼虫は終齢と思われる大きなものもおり、蛹になりそうなのだが、そこから進行しない。
経験上、こういう大きくなり過ぎた幼虫は食われているようなのでなんだかロスしたような気分になる。
9月22日 彼岸の中日の前日だというのにとても暑い日であった。
明日雨が降って一気に季節が進むというが、どうなんだろう?

コロニー採集したアシナガアリ。
恐ろしいほど順調で卵がたくさんある。
幼虫は少し減ったようだが蛹がそれほど見当たらない。
ミールワームはちゃんと与えているし、少し様子見。
その巣部屋の隅っこにミールワームの殻などの食べたカスが蓄積されてきている。
湿度のためか幼虫のかじりつく際に出すと思われる消化酵素のためか黒く、柔らかいもう少しでどろっとした感じになりそうなシロモノだ。
しかし、アリが退去しそうにないので移るまで掃除は見送り・・
9月23日 雨が降り、急に肌寒くなった。最高気温は前日比マイナス9℃だったそうだ。
恒温機の表示温度も久しぶりに一日23℃を示していた。

久々のオオズアリ。卵も幼虫も蛹もとにかくたくさん。
ただ、どういうわけか個体数的にはそれほど増えていないように思う。
それに生産しているのは小型働きアリばかりで最近は兵アリを全然生産していない。
餌は十分だと思うのだが、まだ足りないのだろうか?
9月24日 我が家のアメイロケアリは一昨年のモリシタケアリと同じ戦略をとっているようだ。
すなわち、少数の幼虫に目をかけてやり、卵はどうやら食べるほうに動いているようだ。

幼虫。数えたら20匹ほどいるようだ。そのどれもが体内に色が入っていて餌を食べているようだ。それにしてもこのコロニーの女王は一向にケアリワーカーとの距離を縮めようとしない。
グルーミングはされているようだが手厚いのは後ろ足で払ってるし・・
どうなるのかは、来年に持ち越しである。
9月25日 コロニー採集したアシナガアリ。今日、観察したら久々に幼虫がミールワームに噛り付いてる姿に遭遇できた。

こんな感じ。この姿はいつみても面白い。
9月26日 アメイロケアリの幼虫が急に増えてきた。
今日、観察してカウントしてみたがどうも50匹ほどいるようだ。
細かい数は働きアリ団子に邪魔されてカウントできなかったが50オーバーは間違いない。
そういえばこのアメイロケアリは急に産卵を開始してほんの短い間だったが産卵を一気にしたので一気に孵化するというのも頷ける。
しかし、その産んだ卵も残りは50ほど。
この中からどれだけの数が孵化してくるのか、今後の展開が待たれる。
そしてアメイロケアリの卵がなくなったときから恒温機の温度を下げ始める予定。
23℃から徐々に下げて10月末には設定を10℃にしたい。
もっとも、10月はまだ暖かいので10℃設定でも10℃になるのは夜くらいかもしれないが。
9月27日 涼しくなってから、クサアリモドキに動きがあった。
夏の間、ずっと餌場の冷気があたる壁面に居座っていたのだが、暖かい風が吹くようになったのか、そこを大半のアリが引き払って接続チューブに引っ越してしまった。
幼虫もすべてその中。
このチューブは汚れていて中の様子が全く確認できない。
しかし女王は時々チューブから出て壁面にいるので元気である。
とりあえず巣部屋にお引越し願うために湿度は高めにしてある。
乾燥したところで越冬されると湿度管理に気を使うので、石膏のあるところへと思う次第なのだが・・
9月28日 高野山で採集したケアリ。越年かと思っていたら幼虫期間を特急で通過して繭ができ始めた。

数は多くないが、この分だと年内に働きアリが数個体誕生しそうだ。
ちなみにこれは女王2のコロニー。女王1のものでも繭が1個できている。
9月29日 キイロケアリでも卵がなくなった。
幼虫の大きさも終齢でそろい、小さなものはいない。
ただ、このコロニーにはまだ繭が少しある。
温度を下げるのはもう少ししてからだね・・
9月30日 アメイロケアリは急速に幼虫が成長している。
卵を今日、確認したが、もう5,6個しかなく、そのほとんどが孵化寸前のようで色が変色していた。
このコロニーには毎日ミールワームの断片を与えているが今のところそれが良い方向に動いているようで幼虫の体内に色が入っている。
そろそろ幼虫の成長も止まると思うが、これも卵があるのでそれが孵化してから温度を下げようと考えている。
少なくとも10月末には10℃設定にもっていきたい。

戻る