2009年9月の観察日記

9月1日 クロヤマアリにゼリーを与えた。

このようにすぐに集まってくる。このフィルムケースの蓋にいっぱいのゼリーを5日ほど放置していたらほぼすべて食いつくす。
ゼリーをこれほど食べるのは我が家のアリではクロヤマくらいだ。
9月2日 ミカド。

女王のうちの1匹。産卵はしていないが、腹部が大きいのでそれなりに餌は食べていると思われる。

幼虫。少しずつ成長はしてるし、数の減少も収まったのでどうやら越冬モードに移行したと判断している。
9月3日 クサアリモドキ。先月、野外のクサアリの巣口に合った木片を入れてからフィルムケースを基にした「カートン」が少し成長した。

この「カートン」、とにかく良く水を吸う。少し世話を怠るとこのカートンがからからになっていたりする。

幼虫と働きアリ。このような小さな幼虫がたくさんいる。今年は思ったほど増えなかったが、来年こそは・・
9月4日 シワクシケアリ。

先週から肉餌が不足したときにどうやら蛹を食べたようで蛹の数は減ったが産卵は数は多くないが継続されていたようだ。

育った幼虫を1匹拡大してみた。御覧のように体内に色が入っていてつやもいい。

女王2匹のうち1匹。腹部も大きく、不安要素がほとんどなく、安心してみていられる。
9月5日 ヤマクロヤマアリ、クサアリモドキを薄型の容器に引っ越しさせ、ムネアカの容器のつなぎ目を少し改良した。
ヤマクロヤマアリとクサアリモドキは入れ物が分厚かったので100均の薄い小物入れに石膏を張ったものに移した。
ヤマクロヤマは実は春以降石膏を敷いていないプラスチック容器でじかに飼育していたが、さすがに最近床の汚れが激しくなってきたので移動させた。
ムネアカの容器は下のものでつなぎなおした。

これ、水道のホースを分岐させるものらしい。
これを上下にガムテープで貼り付けて先端からはチューブを出して巣内に入れた。
スペースの都合上、1組しかできなかったが、これで拡張ができた。
その際、女王の健在も確認、幼虫も小さなものが10個体ほどいる事がわかった。
来年以降に期待。
9月6日 今年採集したクロナガのコロニーの一つ。
このコロニーは女王2匹で飼育している。

色づいた蛹を運ぶ働きアリ。このコロニーはどういうわけか構成員が少なく、全部合わせても10匹ちょっと。水分と餌は過ぎない程度に与えてるつもりだが・・

幼虫の世話をする働きアリ。腹部が切れてるように写っているが、ちゃんとある。
9月7日 クサアリモドキ。新容器に移し替えて初めての撮影だが、実はこの容器はアメイロケで使ったものと同じなのだ。

写真を写して初めて気がついたが、繭が写っている。3個ほどあった。今年は打ち止めかと思っていたが成長した幼虫は食われずに繭になったことに少し感動した。

働きアリを1匹拡大。腹部が大きいのは冬に向けて餌を詰め込んでるんだろう。

クサアリモドキの女王を取り巻くアリ玉。野外でもひょっとしたら女王の周りはこのように玉状に取り巻いて過ごしているのかもしれない(写真が不鮮明ですみません)。
9月8日 ミカド。

ミールワームを2日に1回与えているが食いつきは御覧のようにいい。

ミカドの狩りの様子。働きアリも割と活発で、産卵停止が越冬モードへの移行と理解したらそう事態は深刻でないのかもしれない。

制圧したミールワームをかじる働きアリ。しかし意外と食い残しが多いように思う・・

幼虫。こうやってみたらわずかに色が入っているので少ないながら餌は食べているようだ。成長もしていて現在5ミリほどの幼虫がたくさんいる。

働きアリと幼虫。働きアリはほとんどの個体がおなかがパンパン。ちなみに3女王のうち1女王が全体の働きアリの半数ほどを引き連れてえさ場に出てきてあたかも独立したようになっている。特に敵対行動もないし、たぶん働きアリはお互いを行き来してると思うので当面は放置する。
9月9日 クロヤマアリ。久々に女王を撮影してみた。

どうも最近、分厚いケースではうまく写真が撮れない。ましてやクロヤマのテフロンはとうにはがれおちて巣部屋を撮影するのにふたを開けられない状態だ。
冬の間にクサアリやレマニを入れた薄い入れ物に移し替えようと思っている。
引っ越しの時にでもその入れ物と連結法等を紹介できれば・・と思う。
少なくとも今よりは拡張性は出るだろう・・
9月10日 涼しくなったので、恒温機の温度を1℃下げて20℃にした。今年は思ったより秋が早いので来月には10℃に持っていけるかもしれない。

今日はシワクシケ。このアリ、ミールワームへのがっつき方から肉食系かと思っていたら、御覧のように昆虫ゼリーにも集まるのだ。

このように与えた直後からわらわらと集まってくる。

ゼリーをなめる働きアリ。
このゼリーが効いてるのか、女王2匹のおなかはいつもつやつやと大きい。今年はどういうわけか割と働きアリが死んで数的に現状維持だったが、来年以降はもう少し増やしてみたい。
ちなみに、このアリは未だに卵をうみ続けている。幼虫の色も越冬する時のそれではない。
どうもフタフシ系のアリは温度変化に鈍いような・・
9月11日 かねてから考えていたウメマツオオアリの巣部屋増設とアズマオオズの引っ越しを行った。
まず、ウメマツオオアリは最近巣部屋よりもえさ場にたむろするアリが増えていて容量がそろそろ一杯になったと判断して、容器を一つ増設した。

容器の4隅には穴をあけ、それを爪楊枝をセロテープで挟んだものでふたをしている。
拡張性はあると思う。

早速新しい巣部屋に偵察隊が入ってきて、うろうろとしていた。

久々に女王を確認できた。ボンレスではないが、小さな幼虫や卵がたくさんあるのでこの分では安心して冬を迎えられそうだ。

次にアズマオオズの引っ越しを行った。
このコロニー、タッパーで飼育していたが、最近卵や幼虫といった個体が全くいなくなった。
餌を食べてないかとも考えたが、兵アリのおなかは大きいし・・よくわからないが、いつまでもタッパー飼育というのも考えものと思い、ようやく重い腰を上げた。
しかし、通常の吸虫管だと吸い口の金網に引っかかったりして大変だった。
ペットボトル吸虫管でやったらよかったと反省。

こんな感じ。部屋と部屋を行き来するアリがかなり少ないのが気になるが、復活を期待したい。
9月12日 久々登場のケブカツヤオオアリ。

今年は働きアリが10匹ほどに増え、中型の働きアリも出てきた。

女王と働きアリの比較。女王の腹部の特徴的な縞模様も健在だ。

働きアリのおなかは越冬に備えてパンパンだ。
このほかにも幼虫が5個体ほどいる。思ったように増えないのはこの種類の特性なのか、はたまた私の飼育技術がヘボなのか・・(後者の可能性が高そうだが・・・)
9月13日 ムネアカ。たむろしてる容器が先日の容器つなぎ替えで上に来たので写真が撮れた。

一部屋にこれくらいいます。しかしこれが働きアリの大半。写っていない部分やほかの部屋の働きアリを入れても200には満たないだろう。容器のスペースがいっぱいかと思って増設したが中々これ以上増えない。来年以降、増えるだろうか・・

越冬に向けて腹部が膨らんだ大型働きアリ。ムネアカの大型働きアリの色もいいですね。
9月14日 クシケアリは普段はえさ場にミールワームを放り込んでいるのだが、最近いまいち襲わなくなったので巣部屋に入れてみたら・・

このとおり。あっという間に襲って針で刺し、制圧してしまった。

同じようなアングルでもう1枚。3日もあれば殻が少し残るだけにしてしまう。すごい食欲だ。
9月15日 アズマオオズの写真を撮ってみた。

女王とそれを取り巻く働きアリ。引っ越し直後1個だけ卵を見かけたが数日見ていない。
この容器は蓋にうっすらと結露がついていて観察や撮影がなかなかうまくいかないが、卵は1個のまま増えていないか、食べられたかどちらかだろう。
昆虫ゼリーは女王にいきわたっていると思うので卵を産まなくなる・・なんてことはないと思いたいが、正直どう転ぶかよくわからない。

兵アリと働きアリの比較。両方ともお腹はパンパン。昆虫ゼリーのおかげと思われる。
こうやってみたら、アズマオオズもかわいいですね。
9月16日 クシケアリの使われていない巣部屋で以前発生した有翅メスが羽を落としたと思われる個体の死骸があった。

胸部が大きいのでメスで間違いないと思う。
羽を落とした後、このメスと思われる個体はえさ場をうろついていて狩りにも参加していた節があるが死んだということは以前のトビシワの例を考えて働きアリに攻撃された?
このコロニー、よく観察していたら働きアリ間でも1個体を小突きまわしてる場面に遭遇することがある。
案外、2匹の女王には序列があって下位の女王の子供は攻撃されているのかもしれない。
9月17日 クサアリモドキ。

このように幼虫や女王の周りには「アリ玉」ができるようになってきた。
幼虫の色はまだ越冬モードではないということを示しているがミールワームもそれほど食わなくなっているし、何よりこのアリ玉、容器を多少揺らしたくらいではびくともしない。
越冬モードになるとこの玉がもっと密度が凝集した状態になっていく。
しかしクサアリモドキはつやつやなので普通に撮影したら光っちゃいますね・・
9月18日 アシナガアリは3コロニー、飼育している。
そのうちコロニー採集2つのうち1つはどういうわけか不調になり、壊滅コースをたどっているが、もう1つは一時期不調になりかけたが最近盛り返してきて育った幼虫が20ほどいる。

ミールワームを食べるアシナガアリの幼虫。
アシナガアリ幼虫の食べ方は特徴的で本当に面白いと思う。
9月19日 世は「シルバーウィーク」という5連休に突入したとのこと。
名前はともかくとして私も5連休。
初日の今日、家でぐうたらしてるにはあまりにもいい天気であるという予報。
そこで時期は少し早いとは思ったが久々に河内長野に出かけてみることにした。
到着してすぐ、イタドリの枯れ枝を割り始める。そうしたら意外とミカドの初期コロニーが3つも出た。
予想外だったが家にはミカドの大コロニーがあるので2つもちかえることにしてあとはリリースした。
ほかにもナワヨツボシオオアリと思われるヨツボシの女王が出たが腹部を傷つけてしまいリリース。
ほかは・・サテライト魔界だった。ウメマツオオアリが一番多かったがヤマヨツとナワヨツサテライトも出た。
今回の目標はチクシトゲアリもしくはナワヨツのコロニー採集だったのでサテライトはね・・
1時間ほど割って岩湧山登山口のほうへ移動。
ところが割れるようないい感じのイタドリがほとんどない。色は変色しているが水分が残っていてパキッと折れない。
しかしそれでもムネアカの初期コロニー(Q1、W2)とムネボソ1コロニーが出たので思わず採集してしまった。
山を奥に分け入ると個人的に「アツい」ポイントがある。
去年初頭ヤマヨツを採集したところだ。
そこには枯れたイタドリが奥に積まれてあったので割った。
ミカドサテライトとシリアゲサテライトしか出なかった。
帰ろうとバス停に行ったらバスが来るまで2時間近くもある。
そこで最初の採集ポイントへ移動。思いっきり採集活動を行った。
ミカド1コロニー、ムネボソ1コロニーをゲット。シベリアカタアリのコロニーが出たが女王はいなかった。
太い枯れ枝はあらかた割ってしまい、細いものへシフトしていた時だ。
割って中身をみると何かいる。よく見ると胸部にとげが!
慎重に取り出すと、はたしてチクシトゲアリの女王であった。
チクシは諦めかけていたのでとてもうれしかった。しかし疑問がわいた。
この種類、いつ結婚飛行するんだろう?
以前、1月にサテライトを出したとき、オスがいた。このことから晩秋に飛行すると思っていたのだが、今日の結果を見る限り、そうでもないようだ。
結果、ミカド×2、ムネボソ×2、ムネアカ×1、チクシ女王×1を採集してきた。
成熟コロニーがなかったのは少し残念だが、まぁじっくり育成しよう。

最後に今日採集した女王たち。

ムネボソ。小さいアリの撮影は難しい。働きアリが大体40ほどいるので来年以降の発展に期待。

ミカド2コロニーのうち1つ。働きアリはどちらも3匹ほど。ミカドはちょっと癖があるように思うが何とかうまく発展させたい。

ムネアカ。よく見たらこの個体、胸部にも色が若干入ってますね。

待望のチクシ。しかし飼育事例はほとんど見当たらない。かろうじて太守さんの記録を参考に適宜昆虫ゼリーを与えつつ飼育していきたい。なお、ストレスをかけないように自然条件に近い飼育にしたいのでチューブに入れての飼育になった。
9月20日 クシケアリ。最近、餌場のアリたちが奇妙な行動をしている。

これはえさやり直後の写真ではない。たむろしてるのは2日前のゼリーである。
このようにゼリー周辺に働きアリが大挙して固まっている。かといってゼリーをなめてるわけでもないようで上にいるだけ。
今までこんな行動はなかった。巣部屋が乾燥してるのかとも思ったが巣部屋は取り出してしばらく常温に置くとうっすら結露するのでそうでもないようだ。
・・謎。
9月21日 去年採集した女王2のアシナガ。

働きアリは今年はほとんど増えなかった。なぜかはよくわからないが、女王の産卵数はそれほど多くなかったようだ。
つい最近、ミミズからミールワームに切り替えた。
触角がしっかりしてる女王の腹部が大きい。
9月22日 ムネボソアリ。乾燥環境が好きなのか、1コロニーはチューブにこもり、もう1コロニーは餌場に出てきている。

餌場に出ているコロニーの様子。このコロニー、意外なことに女王が8匹もいる。コロニー構成員の総数は30ほどなのに・・

さて、働きアリのうち1匹を拡大してみた。
ムネボソにしては中胸のトゲが大きいように思う。かといって、ハリナガムネボソアリは営巣場所が少し違うように思う(2コロニーともイタドリの枯れ枝から出た)。
ということは、DBによるとハヤシムネボソアリが近いかなぁ?
昆虫の正式な同定作業は大学院以来なので正直あまり自信がない。
ご意見頂戴できたらありがたく思う。
実は・・シン・ハンさんのムネボソを見ていていつかは飼ってみたいと思っていたが出るたびにその小ささゆえに敬遠していたのだ・・
9月23日 トビシワ。

御覧のように、幼虫の色つやもよく、ミールワームの食いもいい。
ただ、夏の終わりころ、少しミールワームを切らしたことがあって、その時に大分幼虫と蛹が減ってしまった。
ただ、このアリ、今年はかなり増えたと思う。そろそろ「うじゃうじゃ」という称号を与えてもいいかも・・
9月24日 レマニ(ヤマクロヤマアリ)。

女王。今年はほとんど増えなかった。
シーズン末期に働きアリ数匹にゼリーを誤ってかけてしまい、そのためか死亡者が出た。
幸い必要最小限の働きアリと女王は生き残っているので来年は最低でも漸増には持っていきたい。しかしレマニって増えにくい種類なんだろうか・・?
9月25日 大コロニーのほうのムネアカの働きアリ。

この個体は別に寄生虫に寄生されてるわけではなく、単純に栄養を詰め込んでいるのだ。
このコロニーには中型以上の個体しかおらず、小型個体はいない。
そのうち、大型働きアリはほとんどがお腹がパンパン。
ところでムネアカって色に個体差がありますね。赤っぽいのと黒っぽいの。
これは赤が強い個体だと思う。
9月26日 クシケアリの蛹をアップで撮影してみた。

補正をかけたのでやや暗くなっているが、これ1枚しか思った通りの写真が撮れなかった。
蛹のような動かないものでこのありさま。
私の撮影の腕のヘボさが出てるように思う。
さて、クシケもアシナガも蛹の形はそっくりなように思う。体色が濃くなってきて、腹部が黒くなってきたら羽化間近だ。
9月27日 ウメマツオオアリ。入れ物を増設してから石膏のほうに幼虫や卵を置いてくれるので観察しやすくなった。

孵化したての幼虫。このような幼虫がたくさんいる。

別の塊。どうも増設してから産卵ラッシュモードになったようで小さな幼虫や卵がたくさんある。
でも時期的にこのままもう少し成長した段階で越冬するかもね・・
9月28日 久々に今日は写真がないバージョンで。
アズマオオズでは卵塊が少しずつ大きくなっていて、今では大体10個を超えてきた。
小型働きアリが2,3匹周りに取り巻いている。
今回、卵を撮影しようとしたのだが、この容器、どうもふたの部分がうっすらと結露してるのと、卵が小さすぎてピントがてんで合わなかった。だから写真がない。

クロナガアリも産卵が開始された。
今現在、数個しかないがこれで一安心。
こちらも卵塊が小さすぎて見栄えがしないので写真を撮らなかった。
小鳥のえさで維持している。
9月29日 クサアリモドキ。

アリ玉になって最近動きがなくなってきた。面白いことに、このアリ玉、クサアリモドキだけで構成されていて、ケアリワーカーは部屋の隅やほかの所に点在してる感じである。

働きアリのおなかはパンパン。来年は少しでも大きな働きアリを生産させてみたい。
幼虫は越冬モードに入ったようで色が白から薄黄に変わった。
写真を撮ろうにも以外にもこのアリ玉、しっかりしていてなかなかほどけない・・

なお、今日から恒温機の温度を15℃に設定した。
20℃に設定していたが、21℃から一向に下がらない。
そこで設定温度を下げたら+1℃の値を示すことがわかったのでこの際だから日隔差を出すのもいいかと思い、15℃にした。要は昼暖かく夜寒いという環境を恒温機で作ったわけだ。
こうすることでクシケ、アシナガという2つの越冬モードに入っていないアリにも休眠体制を取らせるのが目的だ。
9月30日 クシケ。最近、活性が落ちたのか餌場にミールワームを入れても反応がない。
そこで巣部屋に投入したらものすごい勢いで襲う。

ミールワームにかみつく働きアリ。

針で刺したりかみついたりですぐに制圧してしまう。

幼虫。まだ色つやがよく、越冬モードに入っていないことを示している。

少しぶれたが女王のうち1匹。腹部は大きく、茶色く見える。

羽化直後の成虫から蛹の外皮を剥いてる働きアリ。

戻る