2008年12月の観察日記

12月1日 モリシタケアリ。写真を久々に撮影した。
といってもケアリワーカーが団子状に取り巻いて女王や幼虫は見えないが、団子の様子でも見てもらおうかと思う。

これがケアリ団子。直径3センチほどで、女王や幼虫はこの中にいて全く姿を見ることはできない。

ふたを外してのアップ。女王がフェロモンでも出しているのか、このようにすごい団子だ。
モリシタさんの部分に置いてある温湿度計は8℃を示している。
早く来春の爆発的増加が見たいものだ。
12月2日 今日は昨日のモリシタさんと似た者同士と言えるクサアリモドキ。
これはモリシタさんほど顕著な団子は作らないが、それでも女王の周りにアリが集まっている。
写真では分かりにくいが、青黒い胸部が写っているのがおわかりいただけますかね?

クサアリモドキの幼虫。ぱっ見た目にはくすんだ茶色っぽい色のようにみえるのだが、拡大したら割といい色してますね。

体内にも色が入ってるし、順調だろう。女王さえ元気なら来年は大発展するかも?
12月7日 今年採集したアシナガアリ新女王のうち、唯一うまくいった女王2匹のコロニー。

いまだにこの2匹がなぜ共存しているかがよくわからない。過去の観察日記を読んでいただけたらお分かりになるのだがもう1コロニー、女王2で実験したが喧嘩した挙句自らも触角に欠損を負い、生きてはいるが卵やその他幼若個体が全くいない。
アシナガアリは単雌だとは思うが、この発展状況を見たらやはり多雌創設の可能性も捨てきれないのでは?と考えさせられる。
12月8日 越冬中のアメイロアリを撮影してみた。

女王。はて?こんなに黒かったかな?それにしてもアメイロケ同様働きアリと女王の色が全然違いますね。

今度は働きアリに焦点を。腹部が大きく、この分だと春まで問題なさそうだ。
いつも思うのだが、このアメイロアリという種類、もう少し大きければ人気が出ただろうに、如何せん小さすぎる・・・
12月8日 シワクシケアリの様子。新しいほうの蟻巣に引っ越してきて越冬中。

幼虫は一時期のような色つやがなくなってねずみ色に近い色に変わった。
しかし女王も働きアリも元気の様子。
思えばこの種類が恒温機組で最後まで活動していたような気がする。
このアリは季節感というかそういうものに鈍感なんだろうか?
12月9日 クロナガアリでは去年同様、今頃になって産卵が始まった。

思えばクロナガアリの写真って5カ月ぶりなんですね。
もう1枚、卵を咥えて移動させようとしている働きアリ。

幼虫も色が入っているが、成長は止まっているようで大きくならない。しかし去年の例を見たら冬の間に蛹になってくるものが出ることが予想される。
12月10日 ウメマツオオアリを久々に。
女王はチューブに詰まっていてあまり動かない。

幼虫も少しいるがそれ以外は全部成虫。越冬状態に入っていると判断していいだろう。
だから餌は与えていない。水分だけの維持なのだが、乾燥させないようにしるのが一苦労。
温湿度計によると私の部屋は湿度が40%ほどと乾燥気味なので注意しなくてはならない。
12月11日 トビイロシワアリは依然活動していて、時折羽化もしているようで、寒い朝に白い個体がいることがある。
幼虫は放り込んでいた種子をクロナガアリのような姿勢で食べているのが2,3個体。
幼虫はいるが、はて・・?野外でも幼虫越冬ってするのかな?
書き忘れていたことだが、このトビシワのコロニー、いつの間にか女王が1匹になっていた。
2匹いた女王のはずなのに、どれだけ探しても1個体だけ。
ふーむ・・
12月12日 今日、久しぶりに野外で歩くトビシワを見た。
その場所はどちらかというと日陰なのだが、近辺で2個体見かけた。
ここ数日、季節はずれの暖かい日が続いているがその影響だろうか。
動きはゆっくりで夏のようなサッサとした歩き方とは到底言えなかったが、こんな真冬といえる12月の10日過ぎに屋外で働きアリが歩いてる姿をみられるとは思わなかったので少しびっくりしてしまった。
と、同時にますますこの時期の野外のトビシワのサイクルが知りたくなった。
幼虫、いるのかな・・
12月18日 クロナガアリは去年のように順調成長というわけではなく、コロニーの成長自体が止まっているような印象すら受ける。
確かに幼虫は餌を食べていて体内に色が入っているのだが、蛹にならない。
卵もこの前確認したが、4,5個のまま増えてこない。
去年はパネルヒーターにかなり近い場所に置いていたが、今年は少し空間的に余裕があるので、アリたちにとっては温度が低いと感じているのかもしれない。
12月20日 久々にクロヤマアリの飼育容器を見てみた。
コロニーの大半がなぜか石膏部分を放棄してえさ場に出ていた。ただ、石膏が乾きぎみだったため、えさ場に出てきたかもしれない。とりあえず石膏にはたっぷり給水しておいた。
写真撮影しようとしたがふたを開けたら少しずつだが働きアリが脱走するありさま、その上、個体数が多すぎて女王が見えない。
仕方なく撮影は諦めた。
今年、クロヤマアリは大増勢が期待されたが、シーズンが終わったら大して増えも減りもしなかったような感じ。
働きアリの寿命なのか、夏場、適温でも死んでいたのだろうか。
まぁ、このコロニーはうじゃうじゃなので醍醐味を体感できている。
明日はヤマクロヤマアリ。
12月21日 今日はヤマクロヤマアリ(通称レマニ)。
今年は予想外に増えなかった。原因はたぶん産卵開始時期の栄養が必要な時期に餌やりをさぼったことがあるだろう。
正直、6月に越冬状態に移行するとは夢にも思わなかったもので・・
女王は元気である。この色つや、普通のクロヤマとは違ってまたいいですね。

越冬中の働きアリ。くすんだ色に写っていますが、実際はもう少し艶があります。

明日はオオズアリ。
12月22日 今日はオオズアリ。しかし、写真はない。
というのはこのオオズアリ、今年はすごく調子が悪かったのだ。
今では働きアリが10匹ほど、兵隊3匹、女王2匹という惨憺たるありさま。
何が悪いのか全く分からない。
しばらく前まで蛹があったが、食べられたようで、幼若個体は全くいない。
それでも容器を外に出してやると暖かい室内ではもぞもぞと動く。
この「冬眠」は少なくとも2月半ばまで行う予定であるが(ひょっとしたら3月初めまで伸びるかも)その間に何もなく、且つ、来年の復活を願ってやまない。
明日はクサアリモドキとモリシタさん。
12月23日 クサアリモドキとモリシタさん。下の2枚の写真はクサアリモドキとモリシタさんなのだが、両方とも同じように女王の周りをケアリワーカーが取り巻いている。

これはクサアリモドキの様子。

こちらがモリシタさん。
こうやって見たら、2種を同時紹介した理由がお分かりいただけるかと。そう、2種とも見た目がほとんどおなじ状態で越冬しているのだ。
ちなみにこれはクサアリモドキの幼虫。数は少なく見ても150はいそうだ。

モリシタさんは越冬幼虫は20個体ほど。モリシタさん、産卵数はクサアリモドキより多かったが、孵化数は少なかった。
いったん乾燥させ気味にしたときに食べてしまったために孵化が遅れたのかはわからないが、モリシタさんは珍種らしいのでぜひともこの種類は成功させたいものだ。
明日はヤマヨツボシオオアリ。
12月24日 ヤマヨツボシオオアリは「ヤマヨツ症候群」にかかっている。
すなわち、増えないのだ。
産卵数は女王が3匹の割にはごくわずか。しかも幼虫は見られるのだが、蛹にならない。
餌はふんだんに与えているのだが、食いがそんなに良くなく、結果巣の構成員の大半が手持無沙汰気味にじっとたむろしているという状態である。
このアリ、皆さん苦戦されてるという印象だが、成功されてる方っているのだろうか?
いるとしたらぜひお話をお聞かせ願いたいものである・・
明日はミカドオオアリ。
12月25日 今日はミカドオオアリ。7月の伊那でアキラさんが割った竹から出た大コロニーを私がいただいた。このコロニー、面白いことに女王が3頭いる。しかもお互いに敵対行動は見られない。
はて・・?ミカドって複数女王がいたかな・・?しかし現実に目の前に厳然としているわけだし、「そういうこともある」ということで納得させようかと・・
そんなミカドの写真を2枚。
越冬モードのミカドのアリ団子。こんなのが3つほどある。

もう一つは餌場に出てきて越冬している方。幼虫も見られ、順調そうだ。

私見だが、ミカドは固形餌よりゼリーとかメイプルとかいう蜜系の餌のほうが好きなように思う。
3年前だったっと思うがミカドを飼育していた。その時、肉餌としてミールワームを与えていたが、徐々に食いが悪くなり、とうとう何も食べなくなってしまった。
当然壊滅。
アリのコロニーは構成員が多い安定したように見えるものでも何かの折に突然おかしくなるのでなかなか気が抜けない。飼育作業自体は単純そのものだが、種類ごとに餌の好みって多分あるんでしょうね。
12月26日 とても寒い日で、大阪も夕方になると気温が5℃を割った。帰って部屋でハロゲンヒーターを入れてもまだ薄ら寒い。
さて、クロナガアリで産卵があったと今月初めに書いたが、産卵数が増えない。4個のまま。
幼虫は餌を食べているが去年と違い、一向に成長しない。
このコロニーは現在20℃で維持されているのだが、もっとパネルヒーターに近づけて温度を上げたほうがいいのか正直悩む。

予告編:今年のアリ総括は大みそかに行います。2009年の目標は元旦に行います。
12月27日 クロナガアリに入れていた小鳥のえさのアワの実があるのだが、最近ようやくこれを食べだしたようで、巣内に少し運んでかじりつく姿が見られた。
成虫も必死に齧っているところを見たら、お腹がすいていたんだろうか?と思うのだが、このアワの実、もう入れて1週間近く経つんですよね。
その間、ほとんど見向きもしなかったのに、なぜに・・?熟成させた方がお好きなのかい?
12月28日 オオズアリとシワクシケアリのえさ場を交換した。
オオズアリは小さなケースに、シワクシケは大きな餌場になった。
前から交換したかったのだが、活動していたので果たせなかったのだ。
どちらもコオロギの残骸でかなり汚れがあった。
これで来期は餌換えの度にクシケアリが脱走して圧縮処理・・なんてこともしなくて済みそうだ。
12月30日 ウメマツオオアリは大半がチューブでの越冬を選んだようで、石膏の方には少数個体がいるだけで、大半の成虫はチューブにこもっている。
しかし、幼虫がそこそこいたはずなのだが、見当たらない。どうも石膏の下に運び込んだようだ。だからどの程度の幼虫がいるかは正直よくわからないが、このコロニーは冬場乾燥にさえ気をつけたらまた春以降増えてくれると信じてるのでそう心配していない。
この種類も結構黒光りして美しい種類だ。
12月31日 今日で、2008年が終わる。そこで今年は再掲写真も含めて今年のアリ飼育を振り返っていこうと思う。
まず、今年は元旦から恒温機を稼働させた。1週間で2℃あげるというパターンだったが、各種で産卵が見られたのは20℃を超えたあたりだった。
どうもアリたちにとって産卵開始温度は20℃前後ではないかということが示唆された。
1月は13日に河内長野にアリ採集に行った。ミカドオオアリ女王のいるコロニーが2つも出て満足だったが、あえて欲張ればサテライトで出た、チクシトゲアリ。これに女王がいれば・・


チクシのオスは初めてみた。メスアリがいないこと、去年単独女王を冬に拾ったことから、この種類はトゲアリのように秋から晩秋にかけて飛行するのではないかと思うのだが、いかがだろうか。
ヤマヨツボシオオアリは苦戦が目に見えていたが、枯れ枝から大きなコロニーが出た時は思わず採集してしまった。最初は順調だったが・・
また、トビシワとオオズアリを温めていたが、この2種、温めた割に効果がほとんどなかった。
トビシワに至っては幼虫が成長しないだけでなく夏ころまで産卵が少なく、壊滅かなぁと思った時期も正直あった。
春が来て、4月。今年も運良くクロナガアリの飛行に遭遇できた。中でも念願の交尾写真を撮影できたのが一番の収穫だった。しかしこの種類の一斉飛行の様子はすさまじかった。まさに無数に飛んでいたのだから。

クロナガアリの交尾。これが撮影したくて通い詰めたようなものだ。
5月。例によってオオアリの飛行の月だ。今年はヨツボシオオアリを拾いたかったが、有翅メスはたくさん見たが脱翅メスは一向に見当たらなかった。この種類はそれほど珍しくないのだが、新女王はなかなか見つからない。目を当てるポイントがずれてるのだろうか。
しかしいまだによくわからないのがこれ。

この腹部、いったい何が・・?そして死因は・・?謎ばかりが残ったが、例の寄生バエが生息している可能性を暗示する一幕であった。
6月。トゲアリの生息地を発見できた。以前、新女王がいたので、枚岡のどこかにコロニーがあるとは思っていたが、あんな場所に・・トゲアリってユニークですね。生態も形態も。ラーメンに集まったのには大笑いでした。

このころからクサアリモードにシフト。今年もクロクサアリはW30ほどまでは従えさせることができたもののそれ以降が失敗。クロクサアリは来年以降の課題にしたいと思う。
アシナガアリのコロニーのある場所も大体目星がついたのもこのころ。3コロニー、女王のいるものを採集したが、それ以降なぜか不調。何が悪いんだろう?
スラダケさんにアメイロケアリを送っていただいたが、時間がたちすぎたようで一向に寄生しようとしなかった。るぱんさんが仰っていたが寄生種には「鮮度」があるのでは?と思わされた体験であった。
7月。アメイロケアリ新女王を数年ぶりに採集!寄生もうまくいったが、長野に行ってる間に死んだ。どうも後述のクサアリモドキと共にケアリ寄生種は暑さに弱いのではないかと思った体験だったが、早朝に行けば採集の目はあると来年以降に希望がもてた。
そして伊那。乗鞍岳に登った。夏にあれだけの雪を見るとは思わなかった。まさに別世界。
そこで、念願のタカネクロヤマアリを見つけられたことは実にラッキーだったと思う。

観光客の奇異の目なんざ皆さん全く気にせず写真撮影しているのには「アリ魂」を感じた。皆さんのアリにかける想いを垣間見た瞬間でもあった。
アシナガアリの新女王も採集した。そして今年年頭に言っていた多雌実験を行った。どうもアシナガアリも割とだらだら飛行という印象を受けた。といってもその期間はおそらく1週間ほどの間に飛びつくすんだろうけど。
8月。今年も恒温機内は27℃まで上がった(設定温度は23℃)。今年は早くから温めた影響か次々と恒温機内のアリたちが越冬モードに入った。一番早かったのは例によってレマニ。6月にすべての生産を終了してしまった。
伊那で採集したモリシタケアリと枚岡で採集したクサアリモドキがそれぞれ1コロニー、寄生がうまくいき、産卵を始めた。中でもモリシタケアリの産卵量には度肝を抜かれた。この2種は今日撮影した写真があるのでまたあとでご登板願うとしよう。
アシナガアリ多雌実験は2コロニーで行ったが、1コロニーは共倒れ、もう1コロニーが成功という結果だった。成功といっても1個体は触角を一部欠損しているので完全な成功とはいえないかもしれない。来年は女王をたくさん集めて追加実験したいが、何度かアシナガアリの飛行に遭遇しているが一回も複数で巣を掘っているのを見たことがない。アシナガアリは果たして多雌なのか?そして季節はずれの女王はフタフシさんが仰っていたように複数でいた女王が仲たがいして追い出されたものなのか、今後の検証を要する。
9月。モリシタケアリの腹部膨張と産卵量にはひたすら驚かされていた。

しかし一向に孵化しない。クサアリモドキのほうが早く孵化した。そして9月後半になると恒温機内ではあるが、クサアリ2種が越冬モードに入り始め、産卵量が減少、腹部もそれに伴い縮んだ。
10月。モリシタケアリでようやく卵が孵化した。しかしこのころには女王の産卵はほぼ止まり、幼虫のまま越冬するだろうと思われた。クサアリモドキの幼虫も成長を停止。クサアリ系2種は越年が決まってしまった。
るぱんさんにトゲアリ女王を送っていただいたのもこの月。
ミカドオオアリに寄生実験を行ったが、女王に触れても意に介さず。飼育条件ではホストになりえるが、野外では疑問符のつく結果になった。まぁ1例だけなのでさらなる検証が必要だ。
11月。大半のアリが店じまいしたのに、トビイロシワアリだけ羽化が少数ながら続いた。幼虫もいまだに複数いる。野外ではどういう状態で越冬するのか、非常に興味を持った。
クロナガアリの温室に火を入れたのもこの月。温度はコンスタントに20℃前後を保つ。
12月。長期予報では12月は寒いといわれていたが、最初寒い日が数日あっただけで穏やかな気候が続いた。クロナガアリとトビシワくらいしか動きのある種類はいなくなり、少々退屈な月になった。
久々にクサアリモドキの写真を撮ってみた。いつもよりクリアで大きいのはふたを開けることができたからだ。活動が活発な時期は蓋越しなので、ここまで大きな写真は撮れない。

もう一つ、いまいちだがモリシタケアリ。女王を単独で写したのがこれ。

そして単独にしていたらすぐにケアリワーカーが集まってくる。

集合フェロモンかそれに類するものを出していることが示唆される。(肝心のモリシタケアリの女王にピントが合ってない・・ご容赦ください・・)
こうやって見たら、クサアリ2種の女王は腹部が縮んだとはいえ割と大きい。まぁ、やせ細っているのも問題だが、他のアリに比べると段違いに腹部が大きい。
栄養をため込んでいるのか、卵巣が発達していてこれが縮む限界なのかは正直よくわからないが、いいものが見られた。
そこで最後に1年の付き合い感謝の意味を込めて久々に全コロニーにゼリーを与えた。
恒温機組は食べるか正直よくわからないが、10℃くらいでも(写真撮影などで)ふたを開けてしばらく放置していたら庫内温度が15℃まで上がるので(ふたを閉めたらすぐに下がるけど)その間隙を縫って口にする個体がいるかも・・と思ったわけだ。

以上で、写真付きの今年、2008年のアリ総括を締めくくりたい。
皆さんのアリたちはいかがでしたか?
来年、2009年の抱負及び目標は明日、元旦に発表予定。
それでは皆さん、よいお年を!

戻る