2008年1月の観察日記

1月1日 年が明けた。元旦にふさわしく今年の目標及び課題を書いていこうと思う。
今年の目標はズバリ、クサアリモドキもしくはアメイロケアリ(アメイロケアリは採集できればだが)の(要するにケアリ系寄生種)飼育である。クサアリモドキは去年1コロニー、うまくいきかけたものをお釈迦にしてしまったので何とか今年は成功させたい。その場合の問題点だが、クサアリモドキの女王は問題ない。7月になれば枚岡で普通に採集できるから。
問題は寄主となるケアリである。
昨年枚岡神社の片隅に朽ちた竹が放置されていてその中に大量にケアリがいたので簡単に採集できた。しかし、あらかた割ってしまったので何とか新規開拓しなくてはならない。神社の人が間伐として竹を放置してくれたらいいのだが・・
次、アシナガアリの多雌実験を行いたい。去年、初めて新女王からの育成に挑戦して今のところ無事に過ごしている。しかし初期コロニーの働きアリの数が3,4匹とあまりにも少ない。
そこで多雌創設してその後単女王化するのでは?という仮説を立てた。今のところ私のセンサーにはアシナガアリが多雌であるという情報はないので基本は単女王だろうと思われる。しかし創設時、多雌で一気に働きアリを多めに養成して不安定な時期を乗り切るのでは?とも考えた。今年は女王数を変えて実験したい。
もう一つはアメイロアリの飼育である。今でも1コロニー、あるにはあるのだが、働きアリは1匹だけ、この前恒温機をのぞくとなぜか女王がひっくり返った状態で越冬していたので死ぬかもしれない。
この種類も5月の枚岡で晴れた日に少し歩きまわれば簡単に新女王が採集できるので今年こそ。という思いがある。働きアリや女王が若干小さくて観察や撮影が難しいきらいはあるが働きアリはとても美しいのでぜひ飼育に成功したい。
ひょっとしたら寒い間の時期にチクシトゲアリ採集に行くかもしれない。その際、採集できればこれも3度目の正直を果たしたい。どうも温度にシビアなようなので温度差の少ない恒温機内での飼育ができれば・・と考える。まぁ、こればかりは採集できたら、の話ではあるのだが・・
1月2日 昨日、予定通り恒温機の温度を13℃に設定した。越冬期間中は10℃設定だったのだが、最近は暖かい日が多かったうえ、私が帰ってくると部屋にハロゲンヒーターを入れて恒温機内温度が11℃にすぐなっていたので11℃と考えて13℃にしたのだ。
早速、昨日深夜だがすべてのコロニーに蜜餌を与えた。
おおむね順調で女王がひっくり返っていたアメイロアリもぶじだった。
しかし、イトウオオアリがどうも越冬期間中に死んだ個体がいるように見えた。特に羽をつけたままのメスアリにそういう個体が多かったように思う。
当面は蜜餌(卵餌ではなくメイプルの水割り)を与えて行く。温度は1週間に2℃を目安に上げていく予定で1月末には20℃くらいまでもっていって最高22℃まで上げたいと思う。
シワクシケアリが一番早く蜜餌を見つけ、たかっていた。
1月3日 一昨日、久々に全コロニーに蜜を与えた。
そうしてみたらすべてのコロニーで蜜を飲んでそれが行き渡ったようで腹部の大きくなったアリがそこかしこに見受けられた。
おもしろかったのは実はクロオオアリである。昨年採集したW3のコロニーの女王は腹部がそれなりに大きくなっていたが、一昨年採集のW30ほどの女王は腹部が小さいまま。働きアリは2,3匹が餌場をうろついているし、他の働きアリの腹部が大きかったので蜜に気がつかなっかとは考えられない。全てのコロニーで13℃という温度はやや低いらしくまだ恒温機のふたを開けて15℃前後に庫内がならないと動き回らないが、それでものそのそという感じでは動いている。15℃を超えたら活性が上がってくると思われる。
1月4日 ヤマクロヤマアリ(通称レマニ)は水分の殆どない餌場で越冬していたが、恒温機の温度を上げるとき、石膏の巣部屋に給水したら石膏の方にコロニーが移動した。
下は久々のヤマクロヤマアリの女王の写真。
この写真では分かりにくいが(数枚移したがこれ以外は全然だめだった)腹部が少し大きくなっている。さすがにボンレスとは言わないが・・

そんな中、久々のボンレスが。アシナガアリの新女王からの育成しているコロニーのうち1つ。
女王の腹部がボンレスだ。他のコロニーのはそうではないのだが、この女王だけは蜜をよく飲んだのかボンレスだ。

少しぼけているが腹部の節が伸びているのはお分かりいただけると思う。
さて、いつから肉餌を与え始めるべきか・・
1月5日 アメイロアリの女王が死んでいた。この女王は、温度を上げ始めてもひっくり返ったりしていて働きアリは1匹しかいないものの蜜さえ飲んで体力を回復してくれたら・・と思っていた矢先だった。冥福を祈る。
石膏巣にもどったヤマクロヤマアリだがまた餌場に出てきた。この種類はどうも石膏巣にいつかない。
1月6日 現在、恒温機組は13℃で維持しているが産卵など動きのある種類はない。
どうやら13℃という温度は産卵開始には少し低いのでは?と思っている。
8日には温度を15℃に上げる予定。この温度帯に入るとそろそろ産卵が開始される種類も出てくるのではないかと思っている。
イトウさんだが、そこそこの数が死んでいるようだ。しかし温度が低いのでふたを開けてしばらくしたら転がっている者が起き上がったりもするので正確な死者数は分からない。
女王と思われる個体は石膏を掘り抜いた部屋の中にいて働きアリに囲まれているが生死は不明。ただ、幼虫はどうやら壊滅したと思われる。
幼虫や成虫がなぜ死んでいたのかはよくわからない。
他のアリでも同じ条件で越冬させたし、恒温機内は湿度が100%近くあったはずだから(水受け皿にかなりの水分がたまっていた)乾燥とも考えにくいのだが・・
1月7日 トビイロシワアリなのだが、幼虫はほぼ終齢に達したようだ。
しかし、一向に成長が見られない。
本棚の「温室」は大体20℃前後あるのだが、一向に成長が見られない。
このまま壊滅・・なんてないよね・・?
1月8日 予定通り恒温機の温度を2℃上げて15℃に設定した。
15℃というと大阪近辺では3月中下旬の頃の温度だ。
はたして産卵が始まるか期待がもたれる。
温度を上げたのに伴い、2日に1匹のペースだがコオロギを与えることにした(キイロシリアゲアリは管理面からミールワーム)。肉餌を食べてタンパク質を蓄えたら産卵してくれるだろう。
1月9日 クロナガアリ3コロニーのうち、最も順調なコロニーでは働きアリが30匹ほどなのだが、大型のものが生産され始めた。
野外で見かける大型働きアリと遜色ない大きさで今日見つけた時は唸ってしまった。
もう1コロニーは中型働きアリばかりだが幼虫がたくさんいる。
もう1コロニーは幼虫が1匹だけ。しかし30ほどと思われる卵塊がある。
いずれにせよ、楽しみだ。どこまで増えてくれるのやら・・
1月10日 ぐふふ。いい感じになってきている。クロオオアリ2コロニーの女王の腹部の節が伸び始め、ヤマクロヤマアリ女王の腹部も大きくなっている。
これは産卵まで秒読みではなかろうか?
クロヤマアリ女王も確認したかったが、アリ玉の中にいるようで確認できなかったが、17℃に挙げたらたぶん産卵が始まるだろうと見ている。
1月11日 オオズアリにコオロギを毎日与えるようにしたら幼虫が少しだが増えてきた。しかし増え方から見てどうも本格的な増加には火力が足らないのだろうか、夏ほど活況ではない。
そんな中、やたらと兵アリの幼虫が目につく。
10匹ほどのうち、4匹ほど兵アリの幼虫だ。
兵アリの割合って自然界ではいかほどのものなんだろうか・・?
1月12日 アシナガアリの新女王からの育成コロニーのすべてで産卵が始まった。
一番少ないコロニーでも10個ほどの卵を確認している。
しかしそんな中でも先に写真であげた腹部ボンレスの女王コロニーは産卵数も20個ほどとケタ違いだ。このコロニーは働きアリが4匹いる。(他の2コロニーは2匹。)働きアリが多いとそれだけ女王の産卵数にも影響してそうな結果になっている。ちなみにどのコロニーも等しくえさを与えているのでボンレス女王のコロニーだけ特別に目をかけてるわけではない。
1月13日 大学の同期、馬鈴薯(のび)氏と滝畑に行った。
のび氏はアリには興味がなく、散策目的のようだった。
車を去年チクシトゲアリを採集したポイントに止めてもらい、斜面の上の方にあるイタドリを折り始めた。しかし・・まったくいない。かろうじてヒラズオオアリの女王と(働きアリが数匹の初期コロニーのようだったが昨日の雨で働きアリは溺死してるような感じだった)シリアゲアリの女王1匹、それと小さなムネボソアリの仲間と思われる小型種のコロニーが2つ出ただけであった。
イタドリは50は割ったと思うがチクシトゲアリはおろか、ミカドオオアリすら見かけなかった。
仕方なく岩湧山登山口へ移動。山を登ろうかとも考えたが予想以上に木が多く、鬱蒼としていて採集ポイントはないと判断、一昨年の関西オフの道を行くことにした。
山を歩いていたらイチゴが実をつけていた。食べられるのだろうか。

山に向かって手を挙げる馬鈴薯(のび)氏。今回、イタドリを折るのに多大な努力を頂いた。

最初に出たのはヒメアリ。ごちゃっとは岩名ギア、そこそこ固まっていた。当然採集はしなかった。

ウメマツオオアリのサテライトが出た。何度目を凝らしてもやはり女王はいなかったのでリリース。
下は大分あるいてからイタドリを折って出たミカドオオアリ。この写真のはサテライトだったがすぐそばで女王が出た。予想していなかったのでびっくりした。

ミカドオオアリは直径約2センチの地面に転がってやや湿気たイタドリで比較的見られた。
その後少し歩くとイタドリの割れ目からアリの腹部が出ている。ウメマツオオアリかそのあたりだろうと思って入れ物にあけてびっくり、チクシトゲアリだった。

写真のようにオスも数匹残っていた。この種類はいつ飛行するんだろうか?
眼を皿のようにして女王を探したが見つからなかった。要するにサテライトだったのだ。
非常に残念で周囲を探してみたが女王はいなかった。やむなくリリース。
非常に寒く、風も強いうえに昼間は太陽が陰り、体感気温はたぶん5℃を切っていたのだろう、鼻水が止まらなかった。引き返す直前に細いイタドリから出て持ち帰ったのが下の写真のヤマヨツボシオオアリ。

女王は1匹だったがオスとメスの羽アリが2匹ずつ。4年目さんの日記によるとこの種は同巣内交尾するらしいが、して増えたらいいと思う反面、皆さん飼育に苦労されているのを知ってるので(増えないという意味ね)、複雑だ。しかし何だか可愛らしくファンになった。
最後の写真は前述の採集したミカドオオアリの女王。以前採集したムネアカオオアリのように動かないわけではなく、のそのそと動いていた。ミカドオオアリの方が低温に強いのだろうか?

最後に、登山道入り口近くでイタドリを割っていたのび氏がミカドを掘り当てた。しかし割った足が女王に当たり女王を弱らせてしまい、瀕死だったのでリリースしてきた。氏はまだまだ鍛錬が必要なようだ。
結局、今日見つけたのはヒメアリコロニー、ウメマツオオアリサテライト、ヒラズオオアリ女王、シリアゲアリ女王、チクシトゲアリサテライト、ミカドオオアリコロニーとサテライト、ヤマヨツボシオオアリ、後追加としてイタドリには結構越冬中のアシナガバチがいたことを付記しておく。
1月14日 ・・・まずい。冷やし虫家の容量をもってしてもアリが収まらなくなってきた・・
すでに昨日採集したミカドは恒温機に空きがないので常温飼育である。
ヤマヨツは体が小さく、飼育ケースも小さいので押し込んだ。
明日、温度をまた2℃上げる。ということは活性が上がるということでもし万一給水用の管が石膏の穴から外れてそこからアリが大脱走・・なんてことになったら・・
ああ、考えたくもない。もう我が家のアリは飽和状態という嬉しい悲鳴だ・・
1月15日 トビイロシワアリは一向に終齢幼虫以降に進もうとしない。
ここまで止まっていると恒温条件が良くないのではないか?とさえ思えてくる。
しかし、一昨年トビイロシワアリは真冬でも温めたらメスの羽アリを盛んに生産していた。
このふたつの事象の違いが、いったい何によるものなのか不思議で仕方がない。
1月16日 昨日、恒温機の温度を温度を2℃上げて17℃にした。これは大体大阪では桜の咲く季節頃の温度だ。そうして久々にクロヤマアリの入れ物をじっと眺めてみた。
女王の生存を確認。腹部は小さいままだが、この女王は腹部がそう大きくならずに産卵をどかどかしていたのでもうすぐ産卵を開始するだろう。
ヤマヨツボシオオアリ、恒温機に入ってもらった。しかしミカドオオアリは・・入らん・・
1月17日 ヤマヨツボシオオアリに蜜を与えたら大型働きアリを中心にどの個体も見事なボンレス。見ていて惚れ惚れするほどだ。
しかし問題が一つ。女王、どれだっけ・・?アリは集団にかたまっていてその中にいるとは思うがここまで腹部が大きな個体が多くなると胸部しか見分けがつかない。
そんな中卵らしき小さな白い物体を発見。まさか、恒温機に入れて2日、もう産卵を・・?
1月18日 この前採集してきたミカドオオアリは唯一常温で飼育している。だから私が部屋にいる間は15℃くらいまでは上がってると思うが、明け方などはたぶん一ケタ気温にまでなっていると思われる。
そのせいか、石膏の巣部屋に居つかず、どこにいるかというとえさ場と石膏巣をつなぐチューブのなかに詰まっている。
そういえばこの太さ、直径約1センチと採集したイタドリよりはやや細いが(いや、空洞部分の大きさはほぼ同じかな?)詰まっている方が居心地がいいのだろうか。加温したいがスペースがない・・
1月19日 ヤマヨツボシオオアリは、採集した時からウメマツオオアリかそのあたりと間違えているのではないかという疑念があった。というのも大型働きアリはあまり星が見受けられず、どちらかというと黒褐色なのだ。
今日、念願のマクロレンズを購入。そこで写してみた。
一枚目。大型働きアリ。横に中型働きアリがいるが星が見える。

もう一枚。小型働きアリの詰め合わせ。星が鮮明だ。

こうやってみたら、ヤマヨツボシオオアリの働きアリの中には胸部のオレンジがすごく鮮明な個体がいるなぁと思わされた。
1月20日 ヤマヨツボシオオアリにはオスとメスの羽アリが2匹ずついたのだが、そのうち1つがいが交尾したようだ。オスの腹部が割れて死んでいて、メスは羽を落とした。
下は不鮮明ながら死んだオスの写真。腹部が割れてるのが・・わかりますかね?

これで残る羽アリはオス1匹、メス1匹である。たぶんこのままいけば交尾するだろう。
これで増えやすい種類なら苦労しないんだけど・・
1月21日 アシナガアリはどのコロニーも越冬状態を抜けたようで幼虫の色つやがすごく良くなってきた。
下の写真は去年新女王から育成しているコロニーのうちの一つ。働きアリの数は2匹と少ないが、幼虫が少しいるので冬の終わりには新しく羽化するかもしれない。
1月22日 恒温機の温度を2℃上げて19℃にした。この温度なら間違いなくクロオオアリや産卵がまだ確認できていない他のアリたちも産卵をはじめるだろう。
ウメマツオオアリを久々に見てみた。
石膏をくりぬいて容器を逆さにしないとくりぬいた「巣」は見えないのだが、ぎっちぎちに詰まっていた。
若干ではあるが小さな幼虫と卵が確認できたので一安心。
しかしこの種類、働きアリが少ないせいか思ったより去年は増えなかった。
今年はぜひ増えてほしいものだ。
1月23日 ヤマヨツボシオオアリでは最後のメスの羽アリも羽を落とした。その割にはオスのおなかが割れていないようにも思うのだが・・
ともかくこれで女王3のコロニーになったわけだ。
さて・・冷やし虫家の恒温機能がどれくらい左右するかが見ものになるわけだ。
1月27日 久々につけるアリの日記。実は恒温機の温度を19℃に上げて5日たつが、産卵が見られるアリはいない。腹部はどの女王も大きくなってきているので準備は十分だと思うのだが、もう少し日にちがいるのかな?
1月28日 実はイトウオオアリがかなりヤバい。
生き残っている数がかなり少ない可能性が出てきたのだ。可能性というのは女王を含む側近のアリたちは石膏をくりぬいた地下都市にいてその地下都市が石膏のかすで汚れてよく見えないのだ。ただ今月初めに見た時は女王らしき(脱翅メスがかなりいるのでどらが女王かよくわからない状態だ)個体が働きアリに周囲を囲まれながらも動いていたのだ。
ほかのアリたちは越冬に成功したのに、なぜこのイトウさんだけ、こんなに壊滅に近いほどなんだろう・・?
1月29日 恒温機の温度をまた2℃上げて21℃に設定した。これで来週、1℃上げて22℃にしたら温度上げも終了となる。
しかし、アシナガアリを除いてどの種類も産卵がいまだに見られない。
幼虫がいる種類はいる。その種類は越冬状態を脱したようで色艶が良くなってきている。
しかし・・産卵しないのはなんともはや・・
1月31日 困った。加温しているのに、一向にアリたちに動きがないのだ。
女王の腹部はどの種類でも大きくなってるので卵巣は発達してるんだと思う。
しかし産卵しないのだ。
産卵しないと当然アリたちも動きが少なく、書くことがなくなってしまう。
まぁ、21℃にしてまだ2日、様子見、様子見・・と言いたいのだが、内心ハラハラドキドキだ。

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