2007年12月の観察日記

12月2日 驚いた。クロナガアリに蛹が少数だができ始めた。さらに、前蛹と思われる幼虫も数匹見られている。卵も3コロニーとも10個前後産卵されているようでこれは加温が吉と出たか!?
蛹になったといってもほんの1,2匹なので多数派ではないのだがこれが単なる個体差なのか、コロニーの成長スイッチが入ったのか、注視していきたい。
12月3日 オオズアリコロニーでまた兵アリになると思われる大きな幼虫が育ってきている。
ただ幼虫の数がそれほど増えない。やはり20℃では低いのだろうか?そんなことないとは思うのだが・・
「原色生態アリの図鑑」によるとアズマオオズの場合だが(本文では古い名前である「アズマオオズアカアリ」と紹介されていたが)兵アリはかなり初期の段階でも発生するらしい。
兵アリの発生機構ってどうなってるんだろう?
12月4日 トビイロシワアリでは幼虫が育っているのだろうか?最近全然進展がない。
2ミリくらいの幼虫がごちゃまんと(50以上はいるだろう)いるのだが、成長がなかなか見られない。女王も腹部が大きい割に産卵しない。
しかし、コオロギを与えると石膏のかすをかぶせているので食べてはいるようだ。
うーん、今年採集したこのコロニーはターボがかかりませんなぁ。
12月5日 クロナガアリの卵塊が少しずつだが大きくなっている。目分量だが、10個程度はあるようだ。
しかし、これ、いつ孵化するんだろうか・・?
そして蛹はいつ羽化するんだろうか・・?
外気温が少し下がってきていて温室内も以前はコンスタントに20℃を維持できていたが、見てみたら18℃だった。ただ、ふたを開けて少ししてからだったのでその間に暖気が逃げた可能性もある。
ただ言えることはふたを発泡スチロールにして良かったということだ。熱が逃げない。
12月6日 オオズアリでは幼虫がほぼ前蛹になった。しかし、後続は卵のみ。
少し世代間がある。
逆算したら女王が産卵していないか、産卵した卵を食べたことになる。
一昨日、イエコオロギの若齢幼虫を入れて今日見てみたら殻というか輪郭が残っているだけ。
もう少し肉餌与えようかな・・?
12月8日 オオズアリはやはり肉餌が足りていないようだ。
今日、2日ぶりに見てみたら一昨日入れた5ミリほどのコオロギはほとんど跡形もなかった。
幼虫がいないのもこれと関連している公算が大きくなったというわけだ。
ということは、毎日ですか・・蜜餌は2日に1回としてコオロギ、毎日投入してみようか・・
12月10日 一応、恒温機の温度を上げ始めるのは年明けと決めている。
その時期を思案中。10日ころから2℃ずつ上げていこうかな?
今年のチクシトゲアリは1月20日頃に採集したが温めても問題なかったことを考えたら十分低温に対する要求量は達したとは思うのだが・・
こればかりはデリケートな問題っぽいので神経を使う。
12月11日 トビイロシワアリはやはり幼虫の成長も止まっているのか、蛹にならない。
産卵もない。この種類は春早くから活動を始めるので20℃もあれば十分だと思っていたのだが、何か不具合があるのだろうか?
こうなったら恒温機が20℃くらいになったらそっちに放り込んで一気にターボを・・
12月12日 クロナガアリ3コロニーはどうやら完全に越冬モードを脱した模様。
すべてのコロニーで産卵があり、幼虫が蛹になっている。
一番ヒーターに近いコロニーではすでに蛹が色づき始めているし、50ほどの卵もみられる。
これは面白くなってきた。
12月15日 クロナガアリがすこぶる順調。育っていた幼虫は3コロニーともほぼ蛹になった。
産卵も順調なうえ、餌のカナリアシードも気に入った物を巣に運び込んでいて一つのサイクルができつつある。
ヒーターに近接させているという環境上、乾燥が怖いのでえさ場に水を張った小皿を用意し、それで湿度を維持している。
石膏が乾いてもその水で一日は凌げるというもくろみだ。
クロナガアリはいつも初年度で失敗していたので未体験ゾーンに突入してることになる。
これからが楽しみだ。
12月16日 順調なクロナガアリのうち、1コロニーの写真。

ご覧のとおり、色づいた蛹があるし、わかりにくいかもしれないが卵塊もある。
同じコロニーでもう1枚。今度は割と集合してる時に撮影できた。

これからどう推移していくか楽しみだ。とにかくうじゃうじゃを目指したい。
12月18日 はて、不思議だ。トビイロシワアリの幼虫が明らかに前数えた時より多い。
下手したら100ほどはいるのではないだろうか。
その割には全然成長していないらしく、前蛹も見られない。コオロギは・・食べてるは思うのだが、如何せん2日に1回の観察では不足気味だ。
1月に恒温機が稼働したらそっちに放り込もうと考えているのだが、なぜ成長しないのか、少々気がかりだ。産卵もないしね・・
12月21日 決めた。元旦から恒温機の温度を上げ始めよう。
何分クロナガアリくらいしか動きがなく、餌換えの手間が省けるのはいいが寂しいのだ。
そんなわけで冬眠期間は一ヶ月半くらいということになるのだが、大丈夫だよね・・
部屋を温めたら恒温機内がすぐ11℃になるので13℃くらいから始めて一カ月ほどで22℃まで上げて22℃で維持。
女王の死んだアシナガアリコロニーは幼虫が全て蛹になった時点で解体して今年採集した新女王のコロニーに徐々に導入していく予定。色づいたものから入れていけば問題ないだろう。
クロオオアリは今年採集したものは働きアリが3匹しかいないが去年は働きアリ1匹から増やせたことを考えたらまぁ、楽観していいかと。
トビイロシワアリも恒温機内に移して今ある幼虫を蛹にして一気にうじゃうじゃを目指す。
オオズアリとクロナガアリは容量の関係上今の恒温室で維持する。
イトウオオアリは巣部屋を一つ増設しようかな・・?かなりの数がいる。
クロヤマアリは巣部屋がもう増設できないので現状維持。たぶんある域値に達したら増えなくなりそうだが、仕方がない・・
キイロシリアゲアリとアメイロアリも恒温機内で「春」を迎えさせる。
この2つはいずれも正直ヤバいのだが、持ちこたえてくれるかな?
来年の目標はまた今年最後の観察日記にて述べたいと思う。
12月22日 クロナガアリの1コロニーで産卵されていた卵が孵化し始めた。

女王の陰に隠れていたのでもう1枚。

小さな幼虫がいるの、お分かりいただけるだろうか?
こうやって動きのあるコロニーというのは見ていて面白いがまさかクロナガアリがこのような成長を始めるとは思わなかった。
12月23日 オオズアリで再び幼虫が現れ始めた。
どうも餌の消費ペースから見て2日で3匹ほどコオロギを消費しているようだ。
蛹も淡く色づいたのが出始めてきた。
たぶんこのペースだとまた近いうちに幼虫がわんさか出るのではないだろうか。
その時にいかに肉餌を切らさないか、というところがカギになってきそうに思う。
しかし、夏ほどうじゃうじゃいないなぁ・・知らない間に死んで食われてるのかな?
12月26日 オオズアリの幼虫が10匹ほどだが、順調に成長している。
卵はあるのが、幼虫が少ない。要するに肉餌が不足してるんだろう。
飼育の怠慢と言われても仕方がないが、ほかの種類が2日に1回の世話で済んでるので、つい、サボってしまう。
そういえばえさ場もだいぶ汚れてきたなぁ。今度の休みにでも餌場と巣部屋をつなぐチューブを封鎖して餌場を洗おう。
12月30日 クロナガアリが順調。今日、羽化したばかりと思われる色の淡い個体を見つけた。
クロナガアリは巣の中に種子をため込むというが今のところ必要量しか運び込んでいないという印象だ。これが単純に有効な種子が少ないからなのか、我が家のはそういう特性のためなのか、よくわかっていない。

オオズアリの餌場を掃除した。コオロギを与えたら出る食べ残しの茶色い粉がたくさんあったが水で一気に洗い流した。これですっきり。オオズアリもどうやら日に1匹、毎日コオロギを与えるというのがいいようだとわかってきた。少しわかるのが遅いように思うが・・
12月31日 今年も今日で終わる。そこで〆にふさわしく今年を振り返るとともに、来年への課題も浮き上がらせていきたい。
まず今年の先頭を切ってあった出来事は1月20日ごろに河内長野でチクシトゲアリを採集したことにはじまる。これが6月頃まですこぶる順調でその上チクシトゲアリは去年飼育に失敗していてぜひともリベンジしたかったのでとても嬉しかった。
3月にはトビイロシワアリ、クロヤマアリと去年ミスで壊滅させた2種が加わった。
さらに3月は鉢ヶ峰でイトウオオアリコロニーを採集。これが羽アリを誕生させるほど優秀な大コロニーで餌をよく食べるし、飼育冥利に尽きた。その上、脱走名人のイトウさんが逃げられない入れ物を日本橋のパーツショップでようやく見つけることができたので一昨年のように脱走に悩まされることもなかった。
4月はクロナガアリ。例年より飛行がやや遅かったが何とか飛行を観察することができ、女王も23匹も採集という快挙を成し遂げた。
5月はクロオオアリ、ムネアカオオアリを求めて枚岡。しかし今年は天候が不順で飛行がコロニーごとで不ぞろいで一斉飛行にならず、非常に採集に苦労した。また5月はアシナガアリコロニーを採集できた。4月に石をひっくり返したとき、地面が赤くなるほどの大コロニーだったのに女王が出なかったのでコロニー採集は無理かと思っていたので嬉しかった。キイロシリアゲアリのコロニーを採集したのもこのころ。1コロニーは石の下にあった初期コロニーで女王は最初から1匹だったようだ(越冬中に食べあった可能性はあるが)。6月は何と言っても伊那に尽きる。ウミユスリカさんとふじひろさんに初めてお会いできてその上念願のレマニ(ヤマクロヤマアリ)も自力で1コロニー採集できた。シワクシケアリは土生さんに譲っていただいたが、地味ながらこれも面白い種類だ。
7月。クサアリモドキを中心に回った月だった。導入方法がなかなか分からずに苦労した。会社が早く終わった日に枚岡に行って自動販売機などの明かりをめぐったのを思い出す。また、関西オフ会もこの月。アシナガアリ、ケアリの飛行日にうまく当たり、kuroyagiさんもトムエーズさんも満足いただいたかな?と思う。この頃になってようやくアリのコロニーがありそうな石やコンクリート片が分かるようになってきた。しかし返す返すもだが、うまくいきかけていたクサアリモドキが一日だけの油断でまさかのメラミン乾燥により全滅したのは痛すぎる。あんなケアリがわんさかいる竹、もう巡り会えないのではないか・・神社の人が冬の間に放置してくれることを願うのみだ。
8月。冷やし虫家をもってしても27℃まで上がるほど今年の夏も暑かった。
そんな中、アメイロアリがカビで続々死んだのが悔やまれる。来年は恒温機内で過ごさせよう。
9月になり、恒温機内が夏場27℃まで上がっていたのが原因だろうか、各種のアリが越冬モードに入ってきた。一番早かったのはレマニではなかっただろうか。シカシシワクシケは普通に散乱していたので種類ごとに体内の温度計とカレンダーが違うんだろう。
10月になり、7月に採集したケアリでようやく幼虫が出始めた。正直食卵してばかりで半分あきらめていたのだが、まさかの逆転だった。アシナガアリ新女王のコロニーでも羽化が始まったが、どのコロニーも初期の働きアリが3,4匹しかいなかった。これは多雌創設してその後単女王になるのではないか?と思うきっかけになった。
11月に入り、恒温機の温度を下げ、トビイロシワアリ、クロナガアリ、オオズアリ以外は越冬に入らせた。
12月には行って温めているクロナガアリで予想外に幼虫が育って蛹になり、産卵も始まった。月の後半には働きアリの羽化も確認。

以上、駆け足で今年のエッセンスを取り上げたつもりだ。来年の課題は明日発表するとして今年はここまで。観察日記を楽しみに読まれた方、ありがとうございました。また来年もよろしくお願いいたします。
最後に今年、年初に書いた「普通種(トビイロケアリ、トビイロシワアリ)、クロナガアリ、クサアリモドキを飼育、成功させたい」ということに関してはクサアリモドキ以外は達成なのでまぁよしとしよう。

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