2020年8月の観察日記

8月1日 先週、引っ越しさせたクサアリモドキなのだが、よく見たらケアリの働きアリが少し脱走している。
本格的な脱走には至っていないが気が付いたらほんの数匹程度うろついている。
どうも他の働きアリたちはあまり気が付いていないようで脱走箇所に殺到するような現象は無い。
被害は少ないとはいえ、これはこれで容器の接着のどこが甘いのか見極めるのがややこしくなる。
容器と睨めっこして数時間、ようやく1匹の働きアリが容器の接着部の隙間から体をひねるように出てくるのを見つけた。
働きアリは回収、脱走原因になった箇所はすぐに塞いだ。
これ、休日だから出来たようなもので平日なら時間が無くてお手上げだった・・・
8月2日 近くの公園でクマゼミの死骸を拾った。
そこで、今一番個体数の多いハヤシクロヤマアリの餌場に放り込んでみた。

すぐにわらわらと集まった。
以前、ニイニイゼミの死骸を与えたことがあったがあれは大好評で体内を完全に食い尽くして外側の殻と羽しか残らなかった。
拾ったセミの死骸はメスだ。
オスより体内に肉が入っている。
アリたちにはごちそうになるだろう。
8月3日 先月採集したケアリ。

女王の腹部が大きいのはゼリーを給餌しているから。
繭も出来ているので羽化までもう少し。
体験的にケアリの女王は突然死のリスクが大きい気がする。
コロニーが立ち上がり、これから・・という時にお亡くなり。
だから、この状態でも少し不安。
8月4日 1日にクサアリモドキのケアリが脱走していたと書いた。
その時は小規模で済んだ。
しかし・・・昨夜、寝ようと思いふとクサアリモドキの容器を見ると脱走が見られた。
脱走箇所を特定して(これが大変だった)、塞いだ。
しかし、今朝出勤直前に見るとまだ少しうろついてる。
餌場を見るとケアリの働きアリが部屋にエアコンをつけていたのに暑さで死ぬ前のように走り回っていた。
取りあえず、アリの動きを抑えるために巣部屋の上に氷枕を置いて出勤した。
帰宅後、よーく眺めてみるとケアリの頭一つ分ほど接着が甘い部分があってそこから脱走していたようだ。
そこを塞いでようやく収まった・・・と思う。
休日ならじっくり眺められるが平日にこれがあると結構きつい・・・。 
8月5日 クロオオアリ。増え方はゆっくりだが着実。

一時期、巣内に放置されていたゴミは排出されて巣部屋内にごみは無くなった。
何があったのかと言うと先のクロヤマアリのごみの時と同じで巣部屋内をやや乾燥気味にした。
そうすることで生えかけていたカビが無くなり、ゴミが乾燥して働きアリが外に出しやすくなったと考えられた。
この辺り、巣部屋内にゴミをためがちなアシナガアリとは少し違う気がする。 
8月6日  大阪城のオオズアリにした。

これは、後に採集した女王でまだ産んだ子が幼虫のまま。
しかし、特に問題なさそうに推移しているので、今月末には働きアリが羽化しそうだ。
8月7日  6月に大阪城で採集した「小型」クロヤマアリ。
2匹女王を飼育しているが、1匹でようやく働きアリが生まれた。

羽化直後に撮影できなかったので、働きアリの色が濃くなっているが体は華奢そのもの。
しかし、「大型」女王は1か月もしないうちに数匹の働きアリを羽化させるのに、「小型」は2か月近く経ってようやく1匹。
・・・本当に同種なんだろうか? 
8月8日  昨日、職場近くでヤブキリと思われるキリギリス系の死骸を見つけて拾った。
そして餌場に放り込んだ。

結構好評。
先週のクマゼミは意外と群がった後、体内に食い入ることなく放置されてしまった。
ニイニイゼミの時はあれほど好評だったのに・・・ 
8月9日 クサアリモドキに入れているケアリの脱走がどうも止まらない。
朝から接着が甘い部分を見つけては塞いだが、朝作業終了してお昼にふと見たら今までと同じくらい脱走している。
・・・どこから脱走しているのだろう。
以前、同じ容器でクサアリモドキを入れた時はこんな問題は全くなかった。
それが却ってこの問題をややこしくしている。 
8月10日 クサアリモドキのケアリの脱走がようやく収まったっぽい。
もし、このまま収まれば原因は「餌場のパウダーが薄くなってそこから散発的に脱走された」と言う物凄く初歩的なミスになってしまう。
巣内や餌場のアリの様子も凄く落ち着いた。
・・・何だかなぁ・・・と言う気持ちになった。 
8月11日 今年採集したケアリ。

繭が出来ている。この安定感、クロヤマアリも見習ってほしい・・・・

女王。給餌しているので腹部が大きい。
8月12日 アシナガアリは良い感じになってきた。

幼虫たち。例年通りで行くと、来月初めに働きアリが羽化してくれそうだ。

女王アリ。ゼリーを給餌し、温度が高くなり過ぎないように気を付けて飼育している。
8月13日 常温飼育のクロヤマアリ、ハヤシクロヤマアリでは産卵停止している模様。
これが暑さによるものか、秋を感じて産卵停止したのかが良く分からない。
恒温機で飼育している今年採集したクロヤマアリは卵があるが「小型」女王で食卵傾向があるので何とも言えない。
気温が少し下がれば産卵開始するのだろうか。
私の直観では今年は恐らくこのまま生産停止になってしまう気がする・・・
8月14日 8日にハヤシクロヤマアリの餌場に入れたキリギリス(恐らく正確にはヤブキリの一種)の死骸にアリがようやく興味を失ったようなので見てみた。
殻しか残っていなかった。
最初、ニイニイゼミの死骸もこんな風に食べつくしてくれたがクマゼミはダメだった。
何が気に食わなかったのだろうか。 
8月15日 気温が上がった。
昼前、クサアリモドキに入れているケアリが暑さによる狂走の様子を見せ始めたので部屋にエアコンを入れた。
他の常温組は特に異変は無かった。
初期の頃、この夏の暑さが原因の死亡があることが分からなかった。
しかし、今はそれを見たらすぐに氷枕かエアコンを入れたら良いことが分かった。
暑さ・・・侮れないのですよ。
8月16日  6月14日と21日に採集した寄生されたクロヤマアリの解剖を行った。
しかし、どれも見事に何もない。
幼虫の残骸とかそう言った物すらない。
寄生されてない個体の死骸を保存していたことになる。
腹部を割いたときに出てくる「ごろっ」という物には遭遇できなかった。
ストックはまだ別の日のものがもう少しあるが、何か出てくるだろうか。
そして、同日に採集してまだ生きているクロヤマアリもいる。
いずれ解剖することになるが、難儀だなぁ。 
8月17日 今年採集したケアリコロニーで初子が羽化した。

数匹、色の白い働きアリがいる。
私は新女王からここまでの過程が見ていて一番楽しいと思う。 
8月18日 大阪城で採集したオオズアリ。
後から採集したコロニーで、働きアリが羽化した。

この安定感、凄いと思う。
オオズアリの新女王は初めて飼育してみたが、都心で生き残る種だけあってタフだ。
8月19日 クサアリモドキに氷枕を置いて見ると、餌場にアリが殆ど出てこない。
ダメージが出ているのかと言うとそうでは無く、餌場が暑すぎて巣内に引き籠っているのだ。
夜、氷枕を取り除いてエアコンをつけているときに餌を摂っているのだろうか。
毎年、氷枕を置くとそれが不思議で仕方がない。
ちなみに、氷枕はアリたちには気持ちが良いようで氷枕を置いている壁面にアリたちが集まっている。
まぁ、私の部屋は真夏は気温が上がるから・・・ 
8月20日 「小型」クロヤマアリコロニーに給餌したら、女王陛下自らゼリーを舐めに来た。

働きアリと比較の意味で並んでいるところを撮影したが、上手く「小型」女王との大きさの違いが伝わっているだろうか・・
8月21日 以前、ケアリを常温で飼育していたが、今のクサアリモドキのケアリのような真夏の狂走は無かった。
そう言えば、今までケアリ寄生種を常温で飼育したことが無かった。
常に氷枕を乗せていた。
そういう意味ではケアリ飼育は温度面において大雑把だったのかもしれない。
しかし、不思議だ。
同じ種類と思われるケアリ。
一方は真夏の暑さを何ともなくやり過ごし、もう一方は冷やさないと暑がる。
・・・? 
8月22日  アシナガアリに蛹が出来ていた。

まだ、色が淡いがここまで来られた。
もう2週間もしたら羽化が見られるだろう。 
8月23日 クロオオアリの幼虫。

それほど増えなかったが安定している。
体内に色が入っているので肉餌は食べてくれているようだが、実は巣内で食べている様子はあまり見たことが無い。
8月24日 クロヤマアリ、ハヤシクロヤマアリは生産停止してしまったようだ。
ハヤシクロヤマアリは律儀に繭の殻を餌場に出していたが、それも無くなってしまった。
巣内を見ても、成虫ばかり。
野外でもこんな感じになっているのだろうか。
ちなみに餌の食いは良いので越冬と来年へのエネルギーをため込んでいると解釈している。
8月25日 今更だが、今年の蟻の肉餌はミールワームを併用しても良かったのかもしれない。
今の粉末+蜜の餌も食べてくれるのだが、1年通してみると併用してアリに好きな餌を食べさせる方が良かったのかもしれないと思うようになった。
今年はもうそろそろシーズンが終わってくる。
来年以降、どうしようか考えよう。 
8月26日 昨年採集したケアリにした。

産卵がまだ続いている。

女王アリ。このケアリは昨年箕面で採集したもので体色が赤っぽいのだ。
大阪市内や生駒で採集したものとは種が違うのかもしれない。
ケアリの同定技術は全く自信が無いのでケアリとだけ書いてお茶を濁しておく。
8月27日 クロヤマアリの餌場に置いたアルミホイル。

昨日、ここにメイプルシロップの水割りを垂らしておいた。
そうすると、ゴミを付着させてくれた。
ハヤシクロヤマアリはこんな感じで繭殻を取り除けた。
こうやってアリ自らゴミを出してくれると掃除する私にとっても非常にやりやすい。 
8月28日 例年なら、秋の空気を感じる時期だが今年は暑さのピークが後ろ倒しになっていて今でも日中は連日35℃を超える日が続いている。
しかし、アリたちは秋を感じているようでヤマアリ系では産卵が止まって他のアリたちも産卵のピークは越えた感じだ。
気温が高いが秋は近づいているのだなぁと感じた。 
8月29日  毎年思うことがある。
クサアリモドキには氷枕を使用している。
暑さにやられることを警戒したからだ。
しかし、よく考えたら以前飼育していたケアリコロニーは氷枕を使わずとも狂走しなかった。
ケアリは机の上に置いてクサアリはスペースの関係で床に直置き。
それが影響しているのだろうか。
今月初めに起こった脱走劇は痛かった。
時間と手間がかかり、採集してきた繭から羽化して脱走した幾ばくかも回収しきれたかどうか・・・
うーん・・・ 
8月30日 先月採集したヒラズオオアリ。

女王1匹だけ。
チューブに入ったり入らなかったりで産卵も見られないといういつもの症状。
ゼリーを給餌しているので栄養状態に問題は無いと思うが、一体どうしたら良いのだろうか。

もう1枚。
お腹が大きいのだが、これだけしか見せ場が無いと言うのはきつい。
8月31日 少し前の話だが、トフシアリが死んでしまった。
以前に飼育した時もそうだったが、春先は調子が良いのだが蛹以降が育たず、卵ばかりになってやがてそれも少なくなって女王が死んで終わると言うのがパターンだ。
昨日のヒラズオオアリと同様に何かがずれているのだ。

トフシアリはほぼ地中で暮らすという。
そのためか、飼育記録をあまり見かけない。
ましてや新女王からの育成となれば・・・誰かやったことあるのだろうか?
合掌。 

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