2011年10月の観察日記

10月1日 10月に入った。そろそろ恒温機の温度を下げていくことを考えなくてはならない。
今のところ、産卵を続けている種類もあるが徐々に冷やしていけばいいと思う。
ただ、1種類だけ温度管理に悩む種類がある。
オオズアリだ。
昨年、10℃で管理したらかなりのダメージが出てしまった。
かといって温め続けても良い結果は出ないということは以前やったように思う。
うーん・・
10月2日 昨日は風が強かったが今日は風も止んだので枚岡。
しかし、全然飛行の気配がない。
曇天で気温も低かったためかもしれない。
かろうじてハリブトの有翅メスが1匹確認できただけだった。

この個体、どうも未交尾っぽい雰囲気がする・・

梅林を歩くと、クロナガアリが活発に動き回っていた。種を咥えているものもいて収穫の時期を感じさせた。
去年のようにキイシリ団子が見られるかと思ったが雰囲気的にどうも10日ほど前に飛んでしまったような感じを受けた。
トゲアリも探してみたが全く姿は見られなかった。
10月3日 恒温機の温度を2℃下げて21℃に設定。
しばらく様子を見ながら徐々に下げていき月末辺りには設定の最下限の10℃に持っていきたい。
とりあえず今産卵を続けている種類は産卵をストップしてもらおうという算段だ。

そんな産卵を続けているアリの一つ、夏に採集したケアリ。
今年はケアリ新女王の育成は割と順調で採集したものすべてが働きアリを羽化させコロニーとしてもある程度軌道に乗り始めている。 

女王の腹部はかなりボンレスだ。でもこの女王だけで他のコロニーの女王はそれほど大きくない。個体差なのだろうか?
10月4日 この前、枚岡で採集したウメマツオオアリの女王4コロニー。
採集して数日であっという間に多雌が崩壊して1匹しか女王が生き残っていない。
喧嘩の現場は1回しか見ていないがどうも同じような殺し合いがあったと推察された。
一般に単雌制のアリの場合、最初多雌でコロニー創設しても働きアリが誕生した後は闘争を経て単雌になる種類も多いと聞くがそういうのに入るのだろうか。
ともかく、少し残念な結果になったが1匹残った女王は元気だ。 
10月5日 ヒラズオオアリは石膏部分が乾いていたので給水した。
そうしたら・・鋭い方は予想できたかもしれないが石膏を掘って潜ってしまった。
今年中は産卵しないはずなので結局女王がいるかいないかは来年に持ち越しになった・・ 
10月6日 恒温機の温度を20℃に設定。当面は1℃ずつ下げていく方針にした。
今ある卵が孵化できつつ産卵を停止させるようにゆっくり下げていく方針にした。
まぁ、まだもう少しは平常活動を続けると思うけど。
とにかくそろそろ眠らせないとね・・
10月7日 キイロヒメアリは拡大鏡がないと本当に卵や幼虫は観察できないが見る限りは卵もあって順調だ。
脱走も全くない。
以前、長野でトフシアリの大コロニーを見たことがあったが(2006年ね)あれと同寸の大きさのアリに手を出そうとは思わなかった。
そして明日からの3連休は晴れという。
サクラ、トゲ、トフシ辺り採れないかなぁと思ったりする・・ 
10月8日  連休初日。
枚岡に出かけた。
しかし、お天気はよく温度もそこそこの割に何も見つからなかった。
かろうじて枝を折った時に出たウメマツオオアリの女王と卵だけの超初期コロニーが出ただけ。後は全くボーズだった。

カネタタキ。トイレの壁面にいた。カネタタキ自体あまり見たことがなかったので撮影した。オスのようだ。
10月9日 この連休に入る前、私は行きたい場所があった。
それは信貴山ふもとの水呑み地蔵周辺の散策だ。
今日は晴れて温度も高いということで出かけてみることにした。
近鉄服部川駅で下車。駅の構内の柵のところに雑草の集団が侵入していてそこに早速オオカマキリがいた。

この個体はオスで羽も結構乱れていた。 

駅を降りてしばらくは住宅街の中を歩く。田園風景が美しい。


稲刈りはまだ行われていないようで、黄金色の稲穂がたわわに実っていてとても美しい風景だった。

クズの茂みにいたツチイナゴ。

集落の道路わきにいたオオカマキリのメス。お腹が大きかったので産卵が近いのかもしれない。

サツマイモ畑のサツマイモの葉の上にいたオンブバッタ。

ようやく、登山道に入る。最初に出迎えたのはキイロスズメバチだった。
水呑み地蔵までは割と湿った感じの道だったがアシナガ辺りが普通にいそうだったがアリそのものがほとんどいなかった。
そして水呑み地蔵着。

展望台っぽい場所から見た大阪平野。

かろうじて見つけたアシナガアリ働きアリ。アリは他には殆ど見当たらなかった。

当初は水呑み地蔵より先には行かないつもりだったがあまりに消化不良だったのでこの先、十三峠付近に足を伸ばした。山道に入ってすぐにアサギマダラが飛んでいた。

アズマオオズがやけにいる場所があった。しかしいずれも女王は見つからなかった・・

別の石をひっくり返すと羽アリが出た。大きさからアメイロアリかと思ったが働きアリを見て、これがサクラアリだと分かった。少なくともここではまだ飛行していないようだ。

センチコガネ。

上とは別の場所のアズマオオズ。この辺はアズマオオズが多く出た。しかし女王は皆無だった・・

別の場所で芋虫っぽいものに群がっていた。最初は兵アリもいたがカメラを構えているうちにどこかに消えた。

嫌いな方が多いというカマドウマ。上の写真のすぐそばの茂みにいた。

坂を登りきると車の道に出た。信貴生駒スカイラインらしい。その辺りで今まであまり見掛けなかったクロヤマやクロナガが出てきた。写真は喧嘩しているクロナガ。

ススキの上にいたオオカマキリオス。

花に来ていたかなり大型のハエ。種類は分からないがオレンジでカラフルなハエだった。

これも葉っぱの上にいた。ツユムシの仲間?

アオマツムシ。こんな山の中で姿を見かけるとは・・

山道に入り、適当な石があったのでひっくり返すとアメイロアリがいた。

また、別の石をひっくり返すとアシナガアリがいた。そして驚いたのがこれだ。有翅メスだ。

そして、何とオスも1匹だけだがいた。飛行し損ねた個体なのかよく分からない不思議な出会いだった。

北へ、生駒のほうに向うにつれてだんだんアシナガやアメイロアリといった枚岡で見かけるアリ相に似てきた。これは珍しく女王が見られたアメイロアリ。

ようやく、鳴川峠の案内板。信貴山からここまで実はふもとに降りる道はなかった。

今まで歩いてきた道自体が県境らしく、案内板には奈良方向と大阪方向へ下りる道の案内があった。当然大阪方向への道を選択した。

降りる道はさほどたいして面白いものはなかった。ただ、ハラビロカマキリが見つかっただけ。写真の個体はオスで左前脚の先端がなかった。脱皮の時にそこが引っ掛かって脱落したかあるいは交尾を試みてメスに齧られたかどちらかだろう。

さて、結局今日は新女王という存在には全く出会わなかった。
天気がいいし、温度も高い。スカイラインの側溝とか割とみたが何もいなかった。
鳴川峠のほうも水がわいている個所が複数あって地面が湿っていた。そのためか枚岡よりもアリは少なかった。
景色的には面白かったが住宅街が思ったより山手まで伸びていて山を降り切る前から住宅街に入って見どころは少なかった・・
ざっと歩きづめ4時間だった。
10月10日 キイロヒメアリ。相変わらず元気。

女王。どうも写りがいまいちだ・・ 

ミールワーム切断面に集まる働きアリ。肉食は結構旺盛のようだ。
10月11日 今年新女王を採集したアシナガアリ。タッパーで飼育しているが今のところ順調。

女王。腹部は大きくはないが安定感がある。

上とは別のコロニー。こちらも至って順調だ。ただ、ケアリほど最初の働きアリは多くない。

働きアリ。本当にか弱そうな体つきだ。それでもちゃんと子育てや餌を集める仕事はきちんとできる。
10月12日 恒温機を19℃に設定。オオズアリ。今のところ問題はない。

兵アリと働きアリ。兵アリは腹部も大きい。

働きアリ。ちょこまかと動き回る。

働きアリと幼虫。幼虫は相変わらずいるが蛹と卵が減った。温度を下げてから見られるようになったように思うが・・
10月13日 クシケ。相変わらず、用意した新部屋には引っ越ししてくれない・・

幼虫は丸々と太って艶もある。越冬モードではまだないようだ。

前蛹。本当に透き通るような真っ白さだ。
10月14日 数か月紹介していなかったムネボソ。全く動きがない。卵幼虫蛹はいるのに、増えてこない。

幼虫は大きく育ったものも多く、もちろんこの範囲外にもそこそこの数がいる。

女王。これ以外にもまだ複数いる。これだけ女王がいたらわんさか増えそうだが卵の数自体それほど多くない。少数しか産卵しないのだろうか?
10月15日 恒温機を18℃に設定。それでも昼間は暖かいので表示温度は20℃くらいになっている。

たぶん今年最後の紹介になりそうなレマニ。結局今年もほとんど増えなかった。シーズン最初に肉餌をふんだんに与えられなかったことが敗因かと・・
10月16日 キイロヒメアリ。最初女王が4匹だっと思っていたが新しく羽化したのか見落としたのか、女王が9匹いることが分かった。

コロニーの一部。この種類も女王は働きアリに対して割と大きい。割と何でもよく食べてくれる印象で、飼いやすい部類のなのかもしれない。脱走にさえ気をつければ、の話だが。
10月17日 そろそろ常温組も越冬モードに入って動きが少なくなってきた。
去年の秋に滝畑で採集したウメマツオオアリだがかなり増えた。
このコロニーは割と何でも肉餌を食べてくれたし、飼育しやすさは結構なものではないかと思ったりする。 
10月18日 先月末採集したチクシトゲアリ。
石膏部屋のほうに移ってくれた。
しかし、それならそれで動きがあるかというともう恒温機の温度を下げているのでただじっとしているだけ。
若干消化不良・・ 
10月19日 ケアリコロニーはいずれも初期コロニーにふさわしい数を生産したがそろそろ今年は店じまい。
温度が下がると卵塊の大きさが変化がなくなった。
今月末には下限の10℃に持っていきたいがオオズの温度が問題だ・・ 
10月20日  ヒラズオオアリは常温飼育だ。
女王がいるかどうか正直よく分からないうえ石膏の下に潜ってしまうという展開。
それでも、コオロギを与えると食べている。
うーん、いるのかな、女王様・・ 
10月21日 クサアリモドキはすっかり越冬態勢に入ってきた。ちなみに今は庫内温度は14℃だ。

すっかり「アリ玉」を作っている。それでもまだ真冬の時のように凝縮した形ではない。

女王も少しだが垣間見えた。

幼虫。大きさ比較のためにケアリワーカーと一緒に写っている。もうしばらくずっとこの大きさのまま。恒温機の温度を下げる前から秋を感じて越冬モードに移行したようだ。それでも肉餌は食べているようで体内に色が入っている。
10月22日 アメイロアリ。最近、少しコロニーの成長が鈍化した。夏に少し手をあまりかけなかった時期があってそれが原因かもしれない。

女王。周囲に卵も見える。恒温機設定は14℃だが、最近室温が高く、今日はずっと庫内温度は20℃前後だった(それでも中の温湿度計は14℃辺りを指しているが)。でも、そろそろ生産も終わりだろう。

羽化して間もないと思われる色の薄い働きアリ。蛹もまだ若干あるので羽化は続いているようだ。
10月23日 アメイロケアリ。まだ、育った幼虫が見られる。それでも幼若個体の総数はかなり少なくなった。

育った幼虫。色艶はいいが、内部温度を下げているのでどの辺まで育つか・・

働きアリのアップ・・のつもりだったが別の個体が上に乗っかっていなんだか変な感じになった。
10月24日 クロナガアリはまぁそれなりに順調である。

コロニーの様子。ただよく見たら卵がない。今はまだ暑いが寒くなったらまた加温しなきゃならないかも・・
こうなったら乾燥に特に気をつけなくては・・
10月25日 クサアリモドキのケアリの働きアリが少ないほう。 こちらもほぼ動きがなくなった。

女王を取り巻く働きアリ。いわゆる「アリ玉」。

時間がたつと女王を取り巻く働きアリの数が多くなるのは今まで紹介したとおりである。

幼虫。これまた数日前に紹介したケアリの働きアリが多いコロニーと大きさ、色においてほぼ同じ。数が少ないだけだ。
10月26日 恒温機の温度を12℃に。昨日の夕方から一気に温度が下がって今日帰宅したら設定温度通りの13℃だった。
このままでもうすぐ最下限の10℃に持っていきたい。
オオズは相変わらず放り込んでいるが様子を見ながらどうするか決めようかと思う・・
10月27日 クサアリモドキの女王を久々に撮影できた。

これはケアリワーカー数が少ないほうの女王だ。団子になっておらず、姿が見ることができた。 
10月28日 恒温機を11℃に設定。内部の表示温度は15℃くらいだが庫内に置いてある温湿度計を見たら11℃くらいになっていた。

そして、ある意味お約束のこのアリ玉。
クサアリやアメイロケで特によく見られるように思う。ちなみにこれはケアリワーカーが多いほうのもの。餌交換のために取り出しても団子はほぐれなかった。
10月29日 枚岡に行ってきた。しかし、結論から言うと全く何もなし。
トゲアリが飛行した形跡もなく、枯れ枝を折ってもかろうじて1本からキイロヒメの小さなコロニーが出ただけ。キイロヒメはもっと普通に見られたと思うが越冬場所はどこか別なんだろうか。

トゲナナフシ。この個体は腹部が大きかった。卵が入っていたのだろうか。
10月30日 クロナガアリでは面白い物が見られた。

クロナガアリではなく、カゼクサの種子(赤い種子)だ。この種子、今日入れたものではなく、10日ほど前に入れたものだ。粟玉奈良これくらい放置していたらかびてしまうのだがご覧の通り全く何ともなく保存されている。
しかも湿気の加減か色合いもとても鮮やかだ。
かつて多くの方がこの現象を報告されていたが私はこれまで遭遇することがなかった。
良い物が見られた。
ちなみに粟の実が写っているがこれは今日投入したものだ。 
10月31日 ヒラズオオアリは常温飼育だが、まだ餌を食べている。最近暖かい日が続いているからだろう。

コオロギは割とよく食べている。

兵アリと働きアリ。形態が違う。でも、結局女王がいるかは来年に持ち越しになった・・

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