2010年8月の観察日記

8月1日 シベリアカタアリの餌場を掃除した。水洗いした後、日光消毒した。防かび剤も吹きつけた。
しかし、アリのコロニーが弱ってくると、決まって黄色いカビが生える。
以前、クロヤマで大発生させたことがあってその時は生きてるアリにも生えたのでこのカビ、かなり有害だと思う。
でもいつもきまって黄色いカビということはこのカビの胞子はアリが体表に持ってるんじゃないかとも思う。
そして入り込むすきを狙ってるんじゃないだろうか。
少し前まで黄色いカビはそれほど気にしなかったが今ではこのカビは要注意なものになった。
8月2日 恒温機飼育のものはほぼ越冬モードに入ってしまった。
春先に採集したヨツボシやシベリアカタアリも殆ど幼若個体がいなくなり、団子状態でいることが多くなった。
何だかつまらない・・
8月3日 アメイロケ。一か月ほど前に大量に採集した繭からは大量のオスが生まれた。
一時は巣部屋がオスで充満したほどだ。
しかし寿命なのかオスは次々と死んで行き、残った繭からは働きアリが生まれるようになった。
このアメイロケは取り巻きがいないのでどうなるのか心配なのだが、今日何気なく様子を見たら新しく生まれた働きアリの一団の団子に潜っていた。
相変わらずグルーミングを嫌がるというダメ臭さが漂うが、死なないということは栄養交換は受けていると思われ、そこにこの新しい働きアリがどうかかわっていくか、興味がある。
8月4日 恒温機組は大半が越冬状態で攪乱してもそう動き回ったりしなくなったがそんな中、ちゃんと季節通りに幼虫の生産や餌を普通に食べてるものがいる。
ことしコロニー採集したアシナガだ。
写真を撮る機会を逸してしまったがこのコロニー、一時は20個体ほどのオスを生産した。
しかしそのままにしていたら徐々に減っていって数個体が残るだけだ。
働きアリが殺したのか、寿命なのかは良くわからない。

今日は餌場に出てきていた。餌皿と壁面との隙間に大量の幼虫を詰め込んでいた。

巣部屋の中にいた集団。
ところで、アシナガアリについては以前から少し気になってることがある。
それはこの種類が掃除がすごくへたくそなんじゃないかということだ。
思えばコロニー飼育していたらいつも巣部屋の中にかすがたまってくる。
居づらくなるのか巣部屋を引き払ったときに私が掃除していた記憶がある。
野外ではアシナガアリのコロニーはごみをどうやって処分してるんだろう。
8月5日 アリから話題がそれるが実に喜ばしいことが起こっていることを確認した。
5月にヤマトシロアリの雌雄を採集してペアーにして6つの容器に収容していた。
しかし、苦戦だった。
ティッシュを食べてるのは確認してるし、今も生きてるのだが、一向に卵やニンフを見ないのだ。
それでもティッシュに木片を置いたものをプリンカップに入れたものを見てみたら木片の内部を食べ進んでいるものがあって、そこに2ミリほどのニンフを確認した。
卵の塊は見つからなかったが木片を除けたら見つかると思う。
でも、そんなことをして撹乱したくないのでプリンカップの裏側からにんまりしている。
腹部も雌雄とも採集した時より大きくなっている。
でもニンフ誕生までこぎつけてるの、このペアーだけなんですよね・・
とりあえずまた木片を放り込んで少し増えてきたらタッパー飼育を考えている。
8月6日 アメイロケアリ。半分ダメかなぁとか思っていたら、今日見たら羽化した働きアリの団子の中深くに身を潜めていた。そう、かつてクサアリモドキで見たアリ玉に近い状態になっていたのだ。
昼間は恒温機を見ていないので詳しくは分からないが産卵してくれたら事態がある程度打開できそうなのだが・・もどかしい。

ヨツボシオオアリ。この種類も今年の生産は終了したようで繭が減ってきた。
ただ気になるのは幼虫の数がやけに少ないことだ。コオロギを入手できなくなっているのでミールワームを与えているが味が変わったのがいいのか案外好評。

コロニーの一部。餌場にはまだ働きアリが出てきているが、巣部屋の部分は塊になっていることが多い。

大型ワーカー。何だかほれぼれする美しさだ。
8月7日 ハヤシクロヤマアリの女王を求めて枚岡山。
登山道を登り始めてすぐに変化に気がついた。
それはハヤシクロヤマアリの活動がそれほど活発でなくなってるということだ。
先々週、あれほどいた働きアリは日射が弱かったためかあまり見られず、「祭りの後」という雰囲気を受けた。探し回ったが全く羽アリや脱翅個体はみられなかった。
そこで目的を変更。ハヤシクロヤマアリのコロニー採集に挑んだ。
ハヤシクロヤマの多い当たりで石をめくるとクロオオアリの繭部屋に当たった。

少ししか写っていないが、実際は繭を30ほど採集した。
山を降りつつ石をめくる作業をしていくと、こんなのが出た。

ムネボソだ。しかし、驚いたのは女王の数。とにかく多い。働きアリより多いんじゃないか?というほどで、吸えるだけ吸った。ちなみにコロニー規模はそれほど大きくなく、総数50ほどが石の隙間に身を寄せ合っていた。
隣の石の隙間にもこれと同じ種類と思われるものがいた。

働きアリのアップ。DBを見たら多女王であること、土中に巣を構えていたことからハリナガムネボソアリの線が浮かんできたがどうも同定作業は苦手。しかし胸部の突起物など特徴を見る限り、この線は有力ではないかと思う。

その付近で、やたらと美しいカメムシの幼虫がいた。色彩的にキンカメムシの仲間に似てなくもないが、枚岡山にこんなの、いたかな・・?

歩いて行くと、アシナガアリがやけにケバい毛虫を襲っていた。

椋ヶ根橋でアミメアリが大規模な引越しをしていた。

1枚目。

2枚目。延々と白い蛹や幼虫を咥えた働きアリが行列していた。

その付近で、以前ケアリの繭を採集した倒木の皮を剥ぐと幼虫が大量にいた。しかし繭は見つからなかったので、だめか・・と思いつつも剥いでみたら繭部屋に当たった。
数はそれほどでもなかったが時期的にオスの可能性が排除でき、ハチさえ生まれなければアメイロケの貴重な戦力になるので大体50ほどだと思うが吸えるだけ吸った。

最後は神社の大きな鳥居にとまっていたアブラゼミ。

結局、ハヤシクロヤマアリは見つからなかったが、ムネボソコロニー、クロオオ、ケアリの繭をゲット出来た。日射はそれほど強くなかったが盛夏の折、汗が凄まじい量出て、それに反応して蚊が顔のまわりを大量に飛ぶというある意味ホラーな状況で採集を行った。
8月8日 クロヤマアリ。今年の生産活動は完全に終了し、コロニーの中には幼若個体は全くいなくなった。

女王。少し白くボケてるのは飼育容器のふたが汚れていたからによる。

働きアリに囲まれた女王。

最近、ゼリーと蜜だけだったのでミールワームを与えたら食べていた。やっぱりクロヤマアリは肉食が少し強いように思う。
8月9日 ヤマクロヤマアリ。最近、壁面にじっとしてることが多くなり、ふたを開けても殆ど動かない。

女王と働きアリ。前方にボケてる繭が写っているがこれはヤマクロヤマアリの繭ではなく、以前採集したハヤシクロヤマアリの繭である。
この繭も羽化せずに放置されてしまった・・
8月10日 Q2のアシナガアリだが、昨日観察したら女王の1匹が死んでいた。死骸が原型を保っていたので喧嘩して死んだ可能性は低いと思われる。
このコロニー観察を通してアシナガアリは原則として単雌だが、何らかの条件が合えば多雌になる可能性も示してくれたように思う。

そのコロニーの働きアリ。このコロニー、餌も湿度も問題ないのに一向に個体数が増えない。
働きアリも写真のようなマイナーワーカーばかりだ。

幼虫。コンスタントにこれくらいの数はいるのだが、増えないのはなぜだろう?
8月11日 コロニー採集したハリブトシリアゲアリ。一向に個体数が増えてこない。

一時は幼虫や蛹も見られたが今は卵がたくさん。自然死したのか、殺したのかよくわからないが、たむろしてる周辺に働きアリの頭部や腹部の残骸がある。
ちなみに餌の食いは問題ない。

女王。やけに赤っぽい気がするが気のせいか・・?
8月12日 一昨年伊那で採集したQ3のミカド。すっかり越冬モードに入って動きがない。

女王のうち1匹。3匹の女王はいずれも元気で働きアリの死亡も殆どない。

幼虫。これは一部で実際は目分量で50以上の幼虫がいる。
ミカドには去年の春塗布したテフロンが恐ろしく効き目を発揮していて未だにふたを開けても逃走個体がほぼ皆無。
テフロンはフタフシのアリには効果が少なかったが、ヒトフシのアリには効果があるように思う。爪の構造が違うのか、何が違って効果に差が出るのか、まだよくわからない。
8月13日 キイロシリアゲ。一時期より卵は減り、蛹もないが活性は高いと思う。

コロニーの様子。女王は3匹になったが、元気に暮らしている。

働きアリと卵をアップにしてみた。やっぱりキイロシリアゲって小さいね・・
8月14日 高野山に行ってきた。高野山はご存じのとおり、世界遺産の宗教都市とも言える場所なのだが、寺院が多く、その分アリが何か下界のものとは違うのがいるのではないか、と思った。
最初、奥の院を歩く。数え切れないほどの墓や廟。かなり独特の雰囲気を醸し出している場所だ。迂闊に写真は撮れないなぁと思っていたら、その一角で赤っぽいケアリの脱翅メスを見つけて採集した。

その後、奥の院の休憩所の壁にケアリの有翅メスがついていた。

奥の院のほか、全体的にムネアカが目についた。割と大型の働きアリがいて何を食べているのかよくわからないが、栄養状態は良さそうだ。

木の下には杉苔が茂り、なかなか美しかった。こんなに杉苔が茂る環境ってなかなかないんじゃないかなぁ。

金剛峯寺(こんごうぶじ)の方へ移動。そこで伽藍や塔の写真を写して一息ついた石垣で地面を見ると、やけに光るものがある。なんだろうと思ってみると・・

ケアリの有翅メスだった。
時間は午後3時頃だったが、そこかしこに出現していた。たまたまフィルムケースを持っていたのを思い出し、不審がられないようにさりげなく回収していった。

地上に降り立った羽アリを待っている運命は結構過酷なものだった。写真はケアリに襲われる有翅メス。ところで、このケアリだが、女王も襲ってる働きアリも胸部が赤いのだ。
近所で見るものとは明らかに色が違う。種類が違うのだろうか。

ボケてしまったが、クロオオアリに襲われる有翅メス。

同じ個体のその後。クロオオアリに八つ裂きにされていた・・

また別の個体。ケアリがどんどん集まってきていて押し倒されてしまった。

少し、周囲を歩くと、クサアリモドキの脱翅メスがいた。この時期にまさか見られるとは思っていなかったので驚いた。

金剛峯寺の伽藍のある周囲にはいろんな建物があり、適当に木や草が茂っている部分があって時折ヒグラシも鳴く、良い雰囲気の場所だった。
そんな建物の一角でこんなハチがいた。

甲虫の死骸をかじろうとしてるようだ。

そう、クロスズメバチだ。長野以外では初めて見た。それだけこのあたりの自然が豊かという証左でもある。

最初、ケアリが飛んでいた辺りでは中型のオオアリの飛行もあったようでオスとメスが少し見られた。脱翅メスと有翅メスを1個体ずつ採集した。
見たところ、どうもイトウさんの線が濃い。写真はボケて使い物にならなかったのでまた機会があれば。

まさか寺院を見に行ってアリ採集が出来るとは思わなかった。思わぬ収穫を手に山を降りたのだった。
8月15日 連休最終日。どこに行こうか散々迷ったが、結局近場の奈良にした。
若草山の芝生の場所で昼食べて変えるつもりだったが、芝の養生をしてるとかで入ることが出来なかった。
その前に春日大社でお参りをしつつ何かないかと探していた。

アブラゼミの死骸にたかるアミメアリ。

クダマキモドキ?の死骸にたかるアメイロアリ。
そこで、春日大社の奥にある春日山原生林に入ってみた。
この場所は6年前に大阪市の市民大学という講座で一度訪れていてその時ジムグリを見たことがある場所だ。
原生林と言うだけあってかなり鬱蒼とした森林が広がっている。
石を適当にひっくり返していく。

カエル。石の下にいるカエル・・?さっぱり分からなかった。

石の下にいたアズマオオズ。2コロニーが隣接した石から見つかったが、女王はいなかった。
その付近で、青黒い約1メートルほどのヘビがいるのに気が付いた。腹側に白い筋が見えた。
シマヘビなのか、何なのか、よくわからない。写真を写そうとマクロレンズを外してる間にどこかに消えてしまった。

若草山の頂上に向けて歩いて行くコースのようだ。アシナガばかりが目につくようになってきた。

カメムシの死骸を運ぶアシナガアリ。

石の下にあったオオハリアリと思われるハリアリの巣。繭が見られた。

アメイロアリのコロニー。このコロニー、女王がいた。しかし一瞬で土の隙間に潜ってしまった。

別の場所のコロニー。大きなコロニーで蛹がたくさん見られた。

しかし、一番良く見られたのは何と言ってもアシナガだ。大コロニーを3つほど当てた。
ちなみに女王がいたのは1コロニーだったが採集はしなかった。写真を写したときは気がつかなかったが、幼虫がハエか何かの死骸に食らいついてるのであった。
頂上までは1.2キロという表示があったが明日以降に疲れを残したくないので引き返す。
その途中でも行きにひっくり返さなかった石をひっくり返すとアシナガの新女王が小さな隙間にいた。卵も産んでいてこのままだとこの女王は死んでしまうことが確定的になってしまうのでこの女王だけは持ち帰ることにした。
登山道入り口から500メートルほど入ったところで靴ひもを結びなおそうとしゃがむと落ち葉の上を動くものがある。何だろうと思うと2匹の2センチくらいのヒルだった!
そういえば山中の生息動物の絵にヒルの絵があったが実際に見たのは初めてだ。写真を写し忘れたのが悔やまれる・・
8月16日 去年採集したクロオオアリ。この前、枚岡山で採集した繭を導入してどのコロニーも活気がある。
しかし、だ。一番働きアリも産卵も順調だったコロニーの「女王だけ」が虫の息・・
とりあえず羽化していない繭はほかのコロニーに移したがどうしてだろう。
ちなみにこのコロニーは春にこれまた順調だったのに、女王だけが死んだコロニーから幼虫を導入して勢いをつけたコロニーだ。
これで残っているクロオオアリのコロニーは2つ・・
なんだかなぁ。
8月17日 キイロケアリ。ヒトフシのアリでは恒温機で早くから温めていたのにその影響をほとんど受けずにきたがそろそろ今年の生産は終了の感じがしている。

卵塊。大分小さくなった。

幼虫を運ぶ働きアリ。働きアリの増加率は非常にゆっくりしている。
繭がなくなって大きな幼虫も成長を止めたっぽい。このまま越冬モードに移行していくのだろうか。それにしてもこのキイロケだけ、なぜ年中生産を続けたのか・・
8月18日 とてつもなく暑い日だった。37℃まで上がったそうだ。
帰宅してすぐ部屋にクーラーを入れても全然涼しくならない。こんなの久々。
お盆も過ぎたのに、これはどういうことだろうか・・

そこはかとなく、ダメ臭いアメイロケ。しかし、事情が少しだけではあるが変わってきている。

働きアリの団子に身をうずめようとしている女王。常にではないが時々、団子の中心にいることもあり、これはまさかの逆転復活・・?
ちなみにこのコロニーは繭を導入した。繭からは次々と働きアリが生まれ多分そういう個体が女王の周りにいるんだろう。
しかしグルーミングを嫌がるのは相変わらず。取り巻きも少ない。
毎日がはらはらである。
8月19日 今日は実に目出度いことが起こった。
昨日、アメイロケがダメ臭いと書いた。それは腹部も大きくならずにケアリワーカーの取り巻きも少ないからだ。
ところが、今日観察してびっくりした。なんと産卵していたのだ!

少しボケてるけど卵塊。見たところ10個から15個くらい、今日産んだようだ。
実は、最近アメイロケは餌を少し変えていた。
メイプルの水割りをやめて原液にしたのだ。
意外と水割りより良く集まっていたからだ。
もちろんゼリーとミールワームは与えていた。
このまま、順調にいけば来年には黄色い働きアリが生まれると思われる。
しかしアメイロケはケアリワーカーが突然反乱することもあるので最終的に黄色いアリだけになって初めて安心できるというもの。
長かった・・採集して45日ほど経ってる・・
8月20日 アメイロアリ。出遅れていたコロニーでも働きアリが羽化した。
しかし、本当に順調っぽいのは1つだけだ。
後は働きアリが生まれた後、足踏みしている。
でも別に不調なわけでもないようで個体差なのかな、と考えている。

羽をつけたまま産卵を始めた女王。とうとう働きアリが生まれても羽を落とさなかった。
有翅メスが働きアリを生産って何だか不思議な気がする。
8月21日 5月に猪名川で採集したQ1のクロナガコロニー。一時期、幼虫喰いに走り、だめっぽかったがカゼクサの種子を入れてやり、栄養補給させることで、何とか働きアリの羽化にこぎつけた。

羽化した働きアリ。1個体だけだが、体格もそれなり。

卵と幼虫。蛹が確かあと1個体いたはずだが、見当たらない。しかし働きアリが1匹でも羽化したということはかなり飼育しやすくなったとは言えると思う。

幼虫を拡大。良く見たらカゼクサの種子を齧っている。
8月22日 ヨツボシオオアリ。最近は産卵量も減って夏の終わりを感じさせる。

コロニーの様子。増えたのか増えていないのかよくわからない。春先にあった幼虫の数からしたらやや少ないような気もするが小さな働きアリが生まれているのでその結果アリ玉が大きくならずに現状維持に見えてるのかもしれない。

小さな幼虫の塊の世話をする働きアリ。
8月23日 アシナガアリの大コロニー。このアリ、掃除するという概念があるのか最近考えるようになった。以前、巣部屋にかすがたまったことがあった。そして働きアリが殆どいない間にかすを綺麗に取り去った。そうしたら翌日にはもうその部屋がメインに使われていたのだ。ちなみにかすとは幼虫の食べ残した昆虫のかすのことである。

そんな巣部屋の様子。100以上の幼虫がおり、産卵も多数。非常に勢いを感じさせてくれる。

卵塊。蛹も結構あるがその蛹はそれほど大きくない。アリが越冬モードに入ってから、コオロギをやめてミールワームにしているが、その影響なのだろうか。
8月24日 アメイロケアリ。日に日に卵塊が大きくなっている。大きくなり具合からみて、大体1日に10個前後産卵しているようだ。

卵塊。まだ小さいが、それでもケアリワーカー1匹の顎では運びきれないほどの大きさになった。

女王と卵塊。女王は普段はどうしてるか知らないが観察中はケアリワーカーに取り囲まれるわけでもなく、うろうろしている。腹部も見てのとおりそれほど大きくない。
一体産卵のスイッチは何なのか、とても気になる。
8月25日 この時期にしては日中気温が高い状態がずっと続いている。
恒温機の温度表示も毎日28℃だ。
それが影響を与えたのか、変化が少し起き始めたものがある。
それは、今日紹介するクサアリモドキと明日紹介予定のミカドオオアリである。

分かりづらい写真だが、幼虫と働きアリ。夏が来る前、これらの幼虫群は殆ど大きさも揃っていて色も黄色っぽくなっていた。
ところが、今では明らかに成長した終齢並みの大きさの幼虫が数匹おり、それらは体色も白く成長期のものと何ら変わりがない。
女王の産卵はされていないので、多分喰われてしまうとは思うが、まさか産卵再開・・なんてないですよね・・
8月26日 長野で採集したミカドオオアリ。
このコロニーも越冬モードに入っているが、連日の暑さが影響を与えたのか育ち始める幼虫が出てきた。

中型の幼虫と大きく育った幼虫。中型の方は体内に色が入っている。
成長した幼虫もいるが、どうも色つやがよくない。ミールワームは与えてるので肉餌が不足してるわけではない。

以前紹介した腹部がやや飴色がかった女王とは別の個体。この個体は腹部先端一節目が伸びている。
8月27日 最近、取り上げていなかったが、オオズアリはすごく順調である。
卵幼虫がとにかくたくさんいる。
しかし、巣部屋があふれるほど・・というわけでもなく、ある一定数のまま推移してるように思う。
オオズアリの飼育の難点は越冬対策だ。
このアリ、やけに寒さに弱いように思える。
かといって温めたらいつかのトビシワのように幼虫が一向に成長せずにコロニーも春が来ても半分寝てるような印象になってしまいそうで怖い。
とにかく、今は増やして越冬中に死者が出てもそれを補えるほどの数を維持したい。
8月28日 青山高原に出かけた。まぁ、「高原」と言っても、実際は近鉄の駅前の「四季のさと」という自然公園の探索だ。メインは今日はアリではなく、オオカマキリだった。
3年ぶりに訪れたが、目を疑った。前は子供連れの家族がそれなりにいたのに、誰もいない。
何だか、手入れが行き届いていないか放棄されてるのか?と思うほどだった。

まず、目に入ったのは毛虫を肉団子にしているアシナガバチだった。
初めてここに来た時はそれこそ腐るほどカマキリがいたが、目につくのはバッタばかり。それでもようやく草に下向きにとまってるメスがいた。

これくらい上にいてくれたら分かりやすいんですけどね・・

その近くにこんなものがあった。ツチイナゴでは何回か見たことがあるが、ショウリョウバッタでは初めてだ。バッタ特有のウイルス病で死んだものと思われる。

真っ赤なトンボがいた。意外と小さく3センチほどだったろうか。

ウスバキトンボもいた。

ツノトンボ。実際に生きてるのを見たのは初めてだ。こんなのいるってことはやっぱり自然が多いんですね。

そしてようやく待望のオオカマキリのオスを茂みの中で見つけた。

このあたりには枯れた竹や枝が伐採されて放置されていたが地面の湿度が高いせいかオオハリアリが圧倒的に多かった。写真は竹の中にいたコロニー。アリは写っていないがオオハリアリの幼虫だ。別の枝を持った時、そこにオオハリアリの一群がいたようで左薬指の根元を刺された。結構痛かったが割とすぐに収まった。

周囲はとにかくバッタが多く、イナゴ、ショウリョウバッタが多かった。ちなみにこれはオンブバッタの雌雄。

カマキリは見つけたのでアリ調査に移行。
そこで、かなり以前に周遊のハイキングコースがあったのを思い出してそこを踏破することにした。入口は非常に分かりづらく、標識も駅前に一つあるだけ。
近鉄が配ってるハイキングコースのチラシからは抹消されている。
とにかく入り口を見つけてはいるとオオハリアリがいなくなり、ハヤシクロヤマとムネアカが目についた。

ムネアカ。ハイキングコースでは割とよく見かけた。

アブラムシから甘露を貰っているケアリワーカー。結構この場面は多く見られた。
枝折り出来るようなイタドリや竹が産卵しているので割ってみるが、一つだけウメマツオオアリのサテライトが出ただけだった。

石の下にあったアメイロアリの大コロニー。オスもメスも羽アリが生産されていた。

しばらく歩くと視界が開け、山の斜面と反対側にススキが生えている部分に出た。

そこで見つけたもの。

その上には、これがいた。どうもこの個体、羽化したてのようで採集しようと手でつまむととても柔らかかった。
またこれから50メートルほど離れた場所でも同様に今度はメスを採集。2ペアゲット出来た。

この付近はカマキリが多いのか、もう一個体いてそれがこれ。褐色型の終齢幼虫。腹部先端を見たらオスだった。

アリに関するまとめ。
広場付近は木の茂ってる部分になるとオオハリアリが明らかに優占傾向にあった。乾燥している売店付近はクロヤマアリも見られたがトンボ池付近からは普通の乾燥した枝を折ってもオオハリが出てくる有様だった。
ハイキングコースの山の中ではハヤシクロヤマとムネアカが多かった。でもアリはそれほど多くなかったように思う。
今日歩いたハイキングコースは廃道になったのか、子供向けの看板も色あせたまま放置され、ジョロウグモが顔の当たりの高さに巣を張ってるので回避に苦労した(要するにしばらくは誰も通っていないということ)。
この道は自然が多く、歩くだけでも楽しめるのに放置するというのは園内の動植物減少(と看板にあった)と関係があるのだろうか。
あれほど賑やかだった場所が全く人がいなくなってさびれて崩壊していくというのは少し寂しい気持ちになった。
8月29日 アメイロケは産卵を続けている。少しずつだが卵塊が大きくなっている。

卵塊の様子。撮影準備中に少しばらされてしまった。少なくとも50以上はある。
これが一昨年のモリシタさんのように急激に産卵するのか、まだよくわからないが、当面は越冬幼虫を少しでも多く得ることが目標になってくる。
8月30日 クシケ。一時期の不調を取り返すごとく、産卵も幼虫の成長も蛹の数も問題なく増えてきている。

蛹。このほかにも色の濃い物がいくつもあって復調したといえるだろう。

卵の一部。この時は壁面にばらっと置かれていたので、写真だけでは少ないと思われるかもしれないが、実際は40〜50は常にあるという感じ。
8月31日 7月に採集したアシナガアリの新女王のところではいつの間にか大きな幼虫が出現していた。

密閉性の高い容器に入れているのでいつになく放ったらかしの感が強いがそれでもちゃんと子供を育てている。
むしろ見ない方がいいかもね。
恒温機は夕方見たら毎日28℃を示している。
ひとえに残暑が厳しすぎるからなのだが、この高温状態がアメイロケやアシナガなど比較的成長がゆっくりな種類の成長にどれくらい影響を与えるかちょっと気になるところだ。

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